いよいよ開幕するパリ五輪で、男子日本代表が現地7月27日にプール戦の初戦で対戦するのがドイツだ。
そのドイツは昨年のパリ五輪予選でブラジル、イタリア、キューバという実力国が集まったグループAを全勝。低かった前評判をくつがえし、見事3大会ぶりとなる五輪の切符をつかみとった。今回のパリ大会ではダークホースとして他国からも警戒される存在である。
日本は今年6月にネーションズリーグ予選ラウンド第2週福岡大会で対戦。お互いに五輪の出場権を手にしており、結果的に前哨戦となったわけだが、そこでドイツの地力の高さを味わうことになった。
というのも、この試合でドイツは主力を温存。パリ五輪予選突破の立役者となった39歳のベテランオポジット、ジェルジ・グロゼルはベンチに控え、イタリア・セリエAで高い評価を受けるリベロのユリアン・ツェンガーはそもそも来日せず。“飛車角落ち”であったわけだが、日本に対してフルセットの戦いを演じる。もっとも日本は石川祐希や髙橋藍がこのラウンドから合流したとあって、個々のパフォーマンスや選手同士の連係も含めて、まだまだここからという状態であったのは事実。それもチームとして磨いてきたサーブもときに鋭く、ときに緩急をつけて、狙いどおりに放っていた。
だが、ドイツは崩れなかった。サーブレシーブの失点数は日本が10本に対して、わずか3本。トビアス・ブランド、ルーベン・ショットのアウトサイドヒッター2人と20歳の若きリベロ、レオナー・グラベンが的確に返球する。その様子を目に驚きを隠せなかったのが、男子日本代表の伊藤健士コーチだ。
「もう少しドイツのレシーブが乱れると踏んでいました。こちらもレシーバーの間を狙って打てていたのですが、うまくさばいていましたので、そこはびっくりしたところです。逆に相手のサーブも思っていた以上に強かった。あれにまだグロゼルもいるし、アウトサイドヒッターも控えている。さすがイタリアやブラジルを予選で倒しただけあるなと肌で感じました」
日本からすれば想定していた以上に、ドイツのレシーブは強固だった。もちろん彼らは日頃からヨーロッパを中心に各国のリーグでプレーし、高いレベルを味わっている。そうであっても何ら不思議ではないが。日本戦の出来を踏まえて、ドイツのミハウ・ヴィニャルスキ監督は選手たちをこう称えた。
「日本はとてもいいサーバーを備えていますから。私たちとしても、サーブレシーブのいい2人を起用する必要がありました。とても素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれましたね」と同時に、かつて男子ポーランド代表のキャプテンとして2014年に世界選手権を制した実績を持つヴィニャルスキ監督は日本への賛辞を送った。「この4年間でかなり成長しましたよね。世界でもベストチームの一つと言えるでしょう」
この試合では日本に軍配が上がったが、それはドイツが日本と渡り合うほどの力を十分に備えていることを表していた。キャプテンのルーカス・カンパは言う。
「私が考えるに、日本との対戦では忍耐力が鍵になるんだ。サーブでダメージを与え、ネットからトスを離す、そうして正確にブロックを敷く。そうすることで僕たちも勝負ができる」
「とはいえ、彼らは技術的な解決策をたくさん持っているから、こちらとしては忍耐強く、かつ精神的にもタフに戦う必要がある。素晴らしいプレーが飛び出るほど、日本はそれをエネルギーに変えるんだ」
「ただ、このネーションズリーグで見せることができたように、僕たちも彼らを倒すチャンスはあるだろうね。おっと、これ以上は言えないな(笑)」
まさかこの2ヵ月後にパリ五輪で再び戦うことになるとは不思議なものだが、カンパは福岡を去る前に、そう笑顔で応えてくれた。
ドイツは今年のネーションズリーグを11位で終えたものの、それが正しい評価ではないことは明らか。パリ五輪での目標はメダル獲得であり、同時に「最高のバレーボールをすること」だとヴィニャルスキ監督は語った。
「重要なのは(昨年の)予選のように、ベストな戦いをすること。私たちがパリ五輪で優勝候補でないことを理解しています。ですが、より精度高くプレーし、チームとして戦うことをすべての試合でできれば、おのずと結果はついてくるでしょう」
そのバレーボールを実現するべく、セッターとしてコートに立つキャプテンのカンパも意気込む。
「純粋にメダルを獲りたいと願っているよ。ワールドクラスの12チームがそろうパリ五輪はほんとうに激しい戦いになると思うんだ。でも予選を突破したことで、パリでは頂点に向かう以外の道はないと確信した。プール戦を通過すれば、2つ勝てばメダルのチャンスはやってくる。そこに向けて全力を尽くすのみだね」
「ただ、それはどのチームも同じこと。ほとんどのチームが同じ目標を抱いている。だからこそ、そのなかで僕たちは声を大にして言うんだ。『自分たちならできる!!』とね」
出場権獲得のプロセスが変わり、例年以上にハードな戦いが繰り広げられると選手たちが口をそろえる今回のパリ五輪。日本とドイツの初戦から火花が散ることは間違いない。
試合は27日(土)、日本時間16時に開始予定。