5日、第77回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高バレー)が開幕する。
この舞台で活躍し、その後代表へと羽ばたく選手も多い春高。今大会の男子の注目選手たちを紹介していく。
※カッコ内は所属、ポジション、身長、最高到達点
川野琢磨(駿台学園/OH/197cm/343cm)
組織の中の圧倒的な個
川野は197cmの高さを生かしたプレーが世代No.1のスパイカーだ。高い打点から速いトスを打ち切る姿は日本代表のバレーボールを彷彿とさせる。
さらに最高到達点343cmの高い打点に加えて速さも兼ね備えている。川野は速いトスが得意で、さらにスパイクフォームもコンパクトでボールの打ち出しが速い、身長が高いのでジャンプの時間も少なく最高到達点に達するまでも速い。
パスが返れば前衛では時間差と高速平行、後衛では高速バックアタックが飛んでくるので手が付けられず、パスを乱しても世界レベルの高さを活かして2段トスを的確にコースを打ち分けてくるので全く止まらない。
そんな川野を擁する駿台学園は昨年度の春高バレーから負けなしの常勝軍団だ。
昨年度は守備が得意な選手達で守って勝つ組織のバレーだったが、今年は組織の中で圧倒的な個の力を示した川野を中心とした攻撃的なバレーへ。伝統のデータを使ったプロ顔負けの守備力で敵のスパイクを全く落とさず、4枚の高速攻撃を可能としたセッター三宅綜大が敵のマークを散らし、2段トスは川野が打ち込む。
守備力は健在のまま攻撃力が増した絶対王者の連覇を阻止する高校は現れるのだろうか。
中上烈(洛南/OH/190cm/345cm)
世代No.1のパワー
中上は分かっていても止められないパワーと高さを誇るザ・エース。そのパワーは間違いなく世代No.1だ。海外選手のようなドゴッという鈍い打球音から放つスパイクでブロック、レシーバー全てを吹き飛ばす。
さらに最高到達点345cmはワールドクラス。バックアタックで敵ブロックの上から打つことがあるほど打点が高い。2段トスを打ち抜くのも巧い選手で、レシーブが乱れてトスが悪くなった時でも、体重を乗せて得意のストレートに叩き込むことができる。
後衛での存在感も高く、ライト、センター、レフトとどこからでもバックアタックを打ちこんでくる。ミスも少なく、安定して高さとパワーを発揮してくれる頼れるエースだ。
中上擁する洛南はさくらバレー準優勝、インターハイベスト4、国民スポーツ大会(国スポ)5位と常に好成績を残してきた。
今年の洛南は攻撃力の高さが特徴だ。1年時からレギュラーセッターだった樋口卓朗を中心としたコンビバレーで全選手の得点力が高い。パスが返ったらコンビで翻弄し、パスが乱れても中上が打ち切る。この圧倒的な攻撃力で今年の春高バレーに挑む。
前回大会、洛南は京都府予選で優勝候補の東山高校を破り春高に進出したが2回戦敗退。今年のレギュラー8人中7人がその悔しさを知っている3年生だ。去年の経験を糧に今年は優勝を目指す。
安田成希(高川学園/OH/184cm/330cm)
世代No.1のテクニックの持ち主
安田は世代No.1の テクニックをもつスパイカー。レセプションとテクニカルなスパイクを強みとしている。
レセプションについては極小のモーションが特徴的で、ほとんど棒立ちのようなフォームからピタッとセッターにボールを返球する。普通の選手であれば姿勢を低くしたり、ルーティンを入れたり工夫をするが、安田にはそれが一切無い。レセプションの核心を掴んでいないとできない無駄がない美しいフォームに是非注目してほしい。
スパイクについては、どこにでも打てるコースの幅に加えて、視野が広くて軟打が巧い選手だ。例えば長いラリー中に良いトスが上がってきたら、熱くなって「俺が決めてやる」とついついフルスイングしてしまうものだが、安田は冷静にコートの穴を見極めてポトリと軟打を落としてくる。
「本当に高校生?」と思わず疑ってしまう安田のスマートなプレーに是非注目して欲しい。
安田が所属する高川学園は、去年の国スポから駿台学園以外には負けなし。今年はリベロの濵﨑孝志朗、去年まで正リベロを務めていたOHの山田羽純、安田の3人の鉄壁のレセプションから繰り出される伝統のコンビバレーで打倒駿台学園を掲げる。
山本快(福井工業大学附属福井/OP/188cm/330cm)
シリフカを彷彿とさせるサウスポー
山本は総合力No.1のサウスポースパイカーで、攻守兼任のオールラウンダーなOPだ。
攻撃面では世代トップクラスの破壊力を誇るサーブが強み。左利きの回転を存分に生かしたジャンプサーバーで、ミスが少ないうえに入ってしまえばほぼ確実にレシーブを崩す威力を誇る。日本代表の宮浦健人を思い出すようなビッグサーブだ。
スパイクでは、前衛ではコーナーを狙ったクロスとキレがあるストレート、後衛ではダイナミックなフォームで飛び込んでくるバックアタックに注目だ。
守備面については、レセプションの範囲を広く任されていて、軽いタッチで質の良いボールをセッターに返球しそのまま流れるように助走に入っていく。攻守共にチームの中心選手でOPというより3人目のOHといえるかもしれない。
その福井工大福井は前回大会で準優勝。去年は卒業した堤凰惺と山本の二枚看板だったが、今年は山本に匹敵する決定力をもつOH森本泰地と能美偉時を加えた3人エースで大会に挑むことに。総合力の高さで昨年惜しくも届かなかった優勝を目指す。
柏崎祐毅(星城/OH/184cm/346cm)
最強の2年生エース
最高到達点346cmと今大会No.1の高さを持つ2年生エースの柏崎。身長184cmで346cmの打点を誇るハイジャンパーだ。その高さは圧倒的で、3枚ブロックが来ても軽々と上からスパイクを叩きつける。
柏崎は驚くことにAパスが返っても平行トスでは無くオープントスを打つ。春高バレー愛知県予選の決勝では、敵ブロッカーがクイックに跳んでからもう一度飛びなおして、さらに3枚ブロックが間に合うほどに高いトスが上がることもあった。定石ではAパスが返ったら速いトスで敵ブロックを減らすものだが、3枚ブロックの上から打てる柏崎に速いトスは必要ないのかもしれない。
春高バレーでも柏崎の空を飛ぶようなジャンプからブロックの上から見下ろすようなスパイクに期待だ。
その柏崎を含め、星城はスパイカーが全員2年生なのが特徴。ダイナミックなプレーをする2年生を3年生リベロの岩田龍樹とセッターの松尾祐弥が支える。
2年生主体のチームだけに、久々の全国大会を楽しむマインドで力を十分に発揮出来れば今大会のダークホースになる可能性は高いだろう。