どのスポーツ競技においても、選手だけが活躍をしているわけではない。選手以外にも、監督やコーチ、トレーナーやマネージャー、外国人選手やスタッフのために、通訳が所属していることも少なくはない。また最高な舞台を作る運営や、審判団の存在も必要不可欠だ。
バレーボールの場合、そのうちの1つに「アナリスト」というポジションがある。アナリストとは、試合中や練習中などの相手チームまたは自チームのデータを専用のソフトに収集し、プレーを数値化し分析を行う。それをもとにチームの作戦の立案を補助する重要な存在だ。
今回はそのアナリストに注目し、日本のトップリーグであるSVリーグのヴォレアス北海道でアナリストを務める黒澤一成さんと、Vリーグの北海道イエロースターズでアナリストを務める高本佳凜さんのお二人にお話を伺い、前編では二人がアナリストになるまでの道のりを紹介していく。
アナリストを知ったきっかけは二人とも『世界大会』
――お二人は別々のチームに所属していますが、ともにアナリストとして活動をしています。アナリストを知ったきっかけについて教えてください。
高本 大学1年生のころ、地元大阪でネーションズリーグが開催されました。パソコンを使い、カメラを並べてチームと共に戦っている人を見て、かっこいいなと思いました。
黒澤 学生の時にロンドンオリンピックで全日本女子チームが3位に。その時に渡辺啓太さんの本を読んで、アナリストという仕事があることを知りました。
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――では、実際にどのようにしてアナリストになったのでしょうか?
高本 私は大学2年生から選手兼任として、所属チームのアナリストになりました。本格的にアナリストになったのは大学3年生のころです。先生や先輩方にアナリストをしたい!と伝えて、たくさん協力していただきました。
黒澤 僕がアナリストを始めたのは少し遅くて、ヴォレアス北海道に所属して2年目の年でした。チーム内のスタッフ人事により、アナリストのポジションが空くことになりました。そのタイミングで『やってみないか』と。元々アカデミー事業のコーチとして採用されたのですが、所属1年目でコロナが重なり活動もできなくなりました。ゆくゆくはトップチームに関わりたいと思っていたので、その時はアナリストのスキルもなかったのですが、チームのために貢献できると思い、やってみることにしました。
――今はアナリストとして活躍するお二人ですが、アナリストになるまでやなってからの苦労はありますか?
高本 苦労はあります(笑)シーズン中は寝れないというところが一番きついです。1人でやっている分、責任も大きくなってくるので、そこはやっていてしんどいなって思います。始めたばかりの頃は一人でデータを打てるようになるまで、電車の行き帰りでコートの番号を書いて覚えたり、試合を見ながら番号を覚えるところから始めたのでそれだけで1ヵ月はかかりました。
黒澤 それこそ、やり始めたのが遅くなおかつすぐにできないといけないタイミングだったので、できない期間はとてもしんどかったです。公式戦まで2、3ヵ月しかなかったのですが、キーボードをまだ見ながら一生懸命練習試合で打ち込んでいた僕の横で、ブラインドタッチしながら試合を打ち込む大学生を見たら『まじかぁ』って(笑)あれは結構しんどかったです。
アナリストになる夢を諦めないために。
――そのような苦労もあったお二人ですが、アナリストになるまでの経緯を教えてください。
高本 JVA(日本バレーボール協会)のアナリスト講習会に参加して、その場でたくさんの方からアドバイスをもらいました。データバレー(バレーボールのデータ分析ソフト)の設定とか、もう何から何まで教わってやっと1人でもできるようになりました。約1年くらいは、データバレーのソフトについて知る期間でした。
黒澤 僕が入学した仙台大学では毎年アナリストを輩出しています。その頃は本格的にアナリストをしていた訳ではなかったのですが、知識はありました。なので実際にヴォレアス北海道にきてアナリストとして活動し始めて、2、3ヵ月くらいで1人でできるようになったと思います。チームにアナリストができる方はいるけれど、心強さもあればプレッシャーでもありました。僕になったとたんにクオリティを下げることもできなかったし、監督(エド・クラインHC)もアナリスト出身なので。データに求める要求がとても高い。最初はデータの見直しが多かったですし、評価や定義のすり合わせに多くの時間を費やしました。今となってはお互いのバレー哲学のすり合わせをするいい期間になったと思います。
――高本さんは大学生の頃からVリーグの世界に挑戦したい夢があったと思いますが、そのように思っていた理由と、叶えられた背景について教えてください。
高本 大学を卒業してからも上のレベルでやりたいと思いました。学生の頃はずっと女子チームに所属していたのですが、男子チームのアナリストになりたいとも思っていて。大学卒業後、最初は女子チームに所属することになって、途中辞めたいなとも思ったのですが、やっぱり男子チームのアナリストをしたいという夢が諦めきれなくて。いろんな人に片っ端から連絡をして、ご縁があって今、北海道イエロースターズにいます。
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今回は、選手ではなくアナリストの二人にインタビューを実施。「アナリスト」というポジションが、バレーボール競技において必須とされてきている現状、プロチームのみでなく、学生バレーや社会人チーム、またビーチバレーの世界でもアナリストは増えてきている。
SVリーグそして新Vリーグと戦う舞台も所属チームも違う二人だが、アナリストをまだ知らない方、興味のある方に後編もぜひ読んでいただきたい。