SVリーグ、そして新Vリーグと違うカテゴリーで「アナリスト」として活躍をされる二人にインタビュー。前編では、アナリストになるまでの道のりを話してもらった。後編では、二人のアナリストとしての、強い意志と心得をお届けしたい。
チームのためになるデータを求めて。試合に向けて100%の『準備』
――前編ではアナリストをやる上での苦労についてお聞きしましたが、苦労以上に喜びやモチベーションはありますか?
高本 苦労はもちろんあるのですが、それでも勝ったときとか、データがハマったときとか、本当にもうガッツポーズが出るくらい嬉しいので。それがあるので今でもやめられないですし、ずっと続けている部分ではあるのかなっていう風に感じています。
黒澤 僕らは今勝てていないので…。僕自身は勝ち負けにモチベーションを大きく持ちすぎないようにしています。1つ1つの試合に対してベストな準備ができたかどうか。そこにやりがいを持つようにしています。それ以上のことはアナリストの僕には出来ないし、結果もコントロールできないので、試合に向けて100%の準備が出来ればと思っています。最大限の準備をして結果が出なかったとしても、選手個人やチームとしての成長は十分に僕のモチベーションになります。
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――アナリストという立場で、選手との関わり方やデータに対しての工夫など、意識していることはありますか?
高本 データの正確性といち早くデータを監督やコーチ、選手に共有できるか。選手は試合が終わるとケアをしたり、リラックスしたいなどあると思うので、迅速さと丁寧さというのは自分の中で大切にしていて、常に意識するようにしています。
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黒澤 僕も正確性は常に心がけていて、アナリストの必須スキルだと思っています。少しのズレが積み重なると大きなズレになってしまうので。また、『この選手、本当はもう少し高い数字なのに、低く評価されている。』など、間違ったデータを出してしまうと、基本はデータをもとに試合の戦術を組み立てるので、その選手の出場機会も奪うことになります。プロの世界であれば給料や契約にも影響してしまう部分になってしまうので、細心の注意が必要です。
――アナリストとしての今の想いや、頑張りたいと思える理由を教えてください。
黒澤 新卒1年目からヴォレアス北海道にいて、V2リーグから入替戦に勝利しV1昇格できた部分も共に経験してきているので、このチームへの想いは強いです。色々なタイミングで移籍とかを考えることもありますが、結局このチームに残り続けている理由はこのチームがイケているチームだから。ホームゲームであったり、チームブランディングであったり、その辺りが革新的で面白いし、かっこいいと思っています。また、エド・クラインという監督がいて、三上(岳)という通訳兼アナリストがいる。この2人と共にこの仕事をするということに、やりがいや価値を感じています。なのでこのチームと一緒に働けるこのメンバーに思い入れはかなりあると思います。
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高本 私この後に言うの本当に嫌なんですけど….(笑)北海道イエロースターズに来て1年目は、本当に苦しかった時もあったのですが、V2リーグ優勝という結果を残せた部分もありますし、2年目に入って、自分もチームにやっと馴染めてきたかなと思う部分もありますし、新入団選手も入ってきて、昨シーズンとまたガラッとチームも変わって。イエスタの注目度も非常に高くなってきているなと肌で感じるので。プレッシャーというのはすごくあるのですが、絶対にこのチームで結果は残したいし、常に上を目指していきたいと思っているので、まだまだ頑張りたいと思っています。
それぞれの目指す夢。行動力次第で可能性は広がる。
――そんなお二人のこれからの夢や目標を教えてください。
高本 近い目標でいうと、新Vリーグ優勝。チームとしても個人としても変わらない目標です。そこは絶対に果たしたいと思います。あとはこんな私が発言しても良いのかわからないのですが、カテゴリーに関わらず世界で戦ってみたいし、今よりも上のレベルで関わる機会があるのであれば、挑戦したいと思っています。
黒澤 高本さんすごいですね…僕は考えたこともないです。本当にざっくりしますけど、一勝でも多く勝ちたいです。みんな頑張ってるじゃないですか。日々のトレーニングだったり、練習だったり。なんかこんなに頑張っている人たちが、報われないのはちょっと悲しすぎるので、一勝でも多く勝って、地元の人たちや応援してくださっている人たちと盛り上がりたいなって思います。
けれど1つやりたいことがあって。普段からオリンピックや他の国のリーグも分析したりしていて。戦い方とか重要だと思えることをピックアップしたりするのですが、それを今はチームの中で共有していることを、ゆくゆくは一般向けに、例えば学校の先生とかクラブチームの監督とか、広い視野でたくさんの人に届けたいという想いはあります。
――最後に、アナリストを目指す人に向けてメッセージをお願いします!
黒澤 最初の入り口として僕はアナリストに対しての思いは特別強いわけではなかったと思います。けれど、5年前を振り返ったときに、その時キャリアも何もなかった人間が、今ここまで来ている訳なので。バレーボールの世界に入るきっかけとして、『アナリスト』というポジションは、僕のように実績や特殊な能力も何も持っていなくてもこの世界に入ることができる一番の近道だと思います。特にキャリアがなくても、スキルさえ習得してしまえばチャンスは絶対にあると思うので、この世界に入りたいと思っている人は、アナリストの勉強をしてみるのはチャンスが広がるのではないかなと思います。
それと行動力はとても大切。興味を持ったことには自分から動いたほうがいいと思うので、あれこれ考える前にやってみる。飛び込んでみたら意外とできるみたいなことは結構あると思います。
高本 アナリストをずっとやっていて感じることは、アナリスト1本では難しいということ。私もそうなのですが、ボール出しをしたり、アナリストとプラスアルファで何かできることがあればチームにも必要とされる機会は増えて、いいと思います。また先ほど黒澤さんも仰っていたのですが、自分が想い続ければチャンスはあるというか、どういう道からでも話があれば挑戦できる道だと思うので。少しでも興味があれば、アナリスト講習会に参加してみるとか、そういうことをしても面白いのかなと思います。
そして、人脈を広げてください!私は「教えてもらいたい!夢を叶えたい!」という気持ちが強かったので、大学生のときもとにかく先輩後輩関わらず全チームに声をかけに行きました。そこでたくさんのことを学べたり、教わったりしましたし、ご縁にも繋がってくると思うので。人脈は絶対に大事だと思いますし、皆さんも片っ端から声をかけていって欲しいなと思います。
それぞれが想う「アナリスト」の存在価値。より深く、アナリストという存在が広まることで、バレーボールの新しい見方が生まれるのかもしれない。
アナリストを目指す人・また知らなかった人にも、試合をするうえで「コートに立つことはできない、スタッフの力も存在すること」を少しでも知っていただきたい。