26日に開幕したパリ2024オリンピック(パリ五輪)で、アメリカ男子代表、アルゼンチン男子代表、ドイツ男子代表と同居するグループCに入ったバレーボール男子日本代表。初戦となったドイツ戦はいきなりフルセットの激闘となるが接戦の末に落とし、黒星スタートとなった。
決勝トーナメント進出に向けてより負けられない試合となったのが次戦のアルゼンチン戦となるが、今回はそのアルゼンチンについて解説していく。
アルゼンチンは一言で言うと守備型のチームだ。世界トップレベルのブロックで敵の攻撃を阻み、そこから世界トップセッターの1人デチェッコのトスで多彩な攻撃を仕掛ける。今年のネーションズリーグ(VNL)の決勝のカードである日本とフランスと似たタイプのチームで、高さやパワーよりもテクニックで勝負するのが特徴だ。
アルゼンチンのFIVBランキングは8位で、前回の東京五輪では銅メダルを獲得した強豪国だが、東京五輪以降の国際大会ではベスト8の壁を越えられず、タイトルは1つも無い。メダルを争えるポテンシャルはあるが、レセプションが安定せず苦しんでいる印象だ。
一方、アルゼンチン最大の武器はミドルブロッカー(MB)の得点力だ。世界一MBが得点するチームと言っても過言ではなく、パリ五輪初戦のアメリカ戦でもMBアグスティン・ロセルがチーム最多タイの8得点を記録した。
MBの得点力が高い最大の要因はやはりセッターのルチアーノ・デチェッコだ。デチェッコはトスの精度が非常に高いのが特徴で、そのコントロール力を活かし文字通りどこからでもクイックを使ってくる。
たとえレシーブが乱れてコート外からのトスになったり、オーバーハンドが使えずアンダーハンドでのトスになっても、当然のようにクイックをねじ込んでくる。日本代表としては最後までクイックに対応しきれなかったドイツ戦を踏まえると、どこからでもクイックを使うデチェッコは相性が悪いセッターかもしれない。
しかし、今年のVNLで対戦した際には、石川祐希と髙橋藍を欠いたメンバーで、フルメンバーのアルゼンチンに3-1で快勝している。その試合では山内晶大のブロックが冴え、西田有志のサーブが走り相手のレシーブを大きく崩したことでアルゼンチンMBの打数を減らせたのが勝因だった。アルゼンチン相手にはサーブとブロックでMBの得点をいかに減らせるかがカギとなる。
また、日本戦2試合で最多得点をマークしているアウトサイドヒッター(OH)ルチアーノ・パロンスキーのブロックアウトにも警戒が必要だ。
日本とアルゼンチンの一戦はグループ初戦を敗北した国同士の対戦となり、どちらにとっても2連敗は避けたいために非常に重要な一戦となる。同じ守備を武器とするチーム同士の対決となるだけに、どちらのディフェンスクオリティが上回るかに要注目だ。
そんなアルゼンチンの注目選手にはデチェッコも上げたいところだが、今回はMBのロセルに注目したい。
ロセルは総合力世界No.1MBと言っても過言ではなく、MBに必要なクイック、ブロック、サーブが世界トップクラスの実力があるのに加え、レシーブもOH並に出来る新世代のMBだ。
クイックについては、ロセルは身長197cmとMBでは小柄だが、チーム最多得点をマークする程の得点力がある。アルゼンチンMB伝統の速さと横に流れるジャンプで敵ブロックのタイミングをずらして打つクイックが特徴的だ。
また、ブロックは2年連続でVNL最多ブロック本数を記録する実力を誇る。読み合いが上手く、敵スパイカーの甘えたスパイクを確実に叩き落としてくる。ドイツ戦で打ち急ぎ、18本の被ブロックを記録した日本にとってもロセルのブロックは大きな脅威だ。
さらに、サーブについてはアルゼンチン随一のビッグサーバーで、強烈なジャンプサーブとコントロール自在のフローターサーブを同じフォームで使い分ける。ミスが少なくブレイク率も高いため要注意だ。
レシーブについては、セリエAで同じチームの石川と並んでレセプションに入り、ブラジル代表のパワーOHレアルのジャンプサーブを完璧に返球して自らクイックを叩き込むシーンもあり、MBとしては非常に高いレベルのものを持っている。
従来のMBに不可欠なスパイク、ブロック、サーブが世界トップレベルの実力があるのに加え、レセプションが出来る新世代のMBロセルの活躍に注目だ。