[写真]=Volleyball World

 目指すは金色のメダル、道阻む者あらば倒して勝ち上がるのみ。五輪の頂点へ突き進むイタリアと日本は、パリ南アリーナでの準々決勝で激突する。

 欧州きってのバレー大国イタリアは、予選プールBを3戦3勝(失セット数2)、全体1位で決勝トーナメント進出を果たした。フィジカルとメンタル、ともに充実のトップコンデイションにあり、現時点で有力な優勝候補といえるチームだ。

「予選3試合を通じてチームは仕上がった。試合で苦境に陥っても、挽回し反撃できる能力がある。これは重要なことだよ。日本との準々決勝でも必ずや苦しい場面がある。だからこそ、今、チームが上々の状態で準々決勝へ臨めることが吉兆だと考えている」

 予選プール終了後、イタリア代表を率いるフェルディナンド・デ・ジョルジ監督は、母国メディアに決勝トーナメントへの意気込みを語った。

 3年前の東京五輪後、アッズーリ(イタリア語で“青色”を意味する代表チームの愛称)指揮官に就任した彼には、世代交代と来たる国際大会での覇権奪回が託された。21年欧州選手権と翌22年世界選手権を制しつつ、22歳の現エースOH(アウトサイドヒッター)アレッサンドロ・ミキエレットら若手を抜擢し、バレー大国の華麗なタイトル歴に唯一欠ける五輪の金メダルを獲りにきた。

 チームの平均年齢25.08歳は大会参加12カ国中最年少。27.66歳で次点の日本すら凌ぐ非常に若いチームだが、3度目の五輪となる世界屈指の名セッター、シモーネ・ジャンネッリを中心にモチベーションは高い。

 準々決勝で日本が特に警戒すべきは、予選3試合で通算54ポイントを上げたOP(オポジット)ユーリ・ロマノーだろう。

警戒すべき選手の1人であるユーリ・ロマノー [写真]=Volleyball World

「イタリアは勝機をきちんと活かすことができる。技術と高さに加えて、戦術やゲームコントロールのバランスが強みだ。予選プールを通してそれを確認することができたのが大きい」

 予選最終戦のポーランド戦はプール全体1位がかかっていただけでなく、相手が近年のメジャー大会決勝で勝敗を分け合うライバル国であることや互いの選手たちが所属するイタリア1部リーグ、セリエAで手の内を知り尽くしていることなどから、ハイレベルでインテンシティの高いゲームとなった。

 イタリア代表はブロックワークを軸にした守備戦術を徹底し、ワイドに高い攻撃展開を心がけながら、実直にサイドアウトを重ねる安定感で強豪国との勝負を制した。

「最初に2セット取った後、第3セットで苦しむのは想定内だった。第4セットで高い打点でのプレーを維持できることを確認できたことが収穫だった」

 読み通りだった、と指揮官デ・ジョルジは五輪でのゲームプランの組み立てにも手応えを得た。やはりメダルの有力候補であるポーランド相手の快勝は、イタリアのテクニカル・コンディションと士気を一気に高める効果をもたらしたのだ。

ポーランドに快勝したイタリア [写真]=Volleyball World

 日本との対戦が確定するや、五輪を中継放送する『Eurosports』やイタリア現地メディアはこぞって組み合わせを歓迎する意向を見せた。与し易しと見る勝負勘定と“日本とならきっと見応え抜群で正々堂々としたスペクタクル・ゲームになる”という期待によるものだ。

 日本代表がトップコンディションにある時、コートの中の6人を一つの生き物のように連係させ、超機動とでも呼ぶべきスペクタクル・バレーを可能にすることは、世界中のバレー関係者で知らない者はいない。

「日本戦はハイレベルのタフなゲームになるだろう」

 MB(ミドルブロッカー)ロベルト・ルッソは、日伊決戦前日にいかに日本を警戒しているかについて、弁舌を振るっている。

「高い守備力に加え、スパイクもサーブも威力のある日本はかなり強いチームだ。彼らの並外れたジャンプ力からわかるように身体能力も高い。日本はここ数年でかなり強くなった。今や世界中のチームが彼らとの対戦を恐れている。だが、我々も準々決勝で歩みを止めるわけにはいかない。ここから先はあらゆるミスが命取りになりかねない、真に厳しい道のりが始まる」

日本を警戒するロベルト・ルッソ [写真]=Volleyball World

 セリエA王者ペルージャで主軸を担うルッソと司令塔ジャンネッリは、昨季のリーグプレーオフ準決勝で当時ミラノのエース格だった石川祐希を封じ込め、決勝では高橋藍(現サントリーサンバーズ大阪)のモンツァを破った。 パリ南アリーナの準々決勝では、アッズーリのMBジャンルカ・ガラッシ(現ピアチェンツァ)がモンツァ時代の元チームメイト、高橋藍をブロックしようと大きく両椀を掲げるだろう。

 両国の直近カードである5月下旬のVNLブラジルラウンドでは、イタリアが3-1で白星を上げたが、日本はその後発奮し大会準優勝。イタリアにとって日本は最大限に警戒すべき国であることは間違いない。イタリアのバレーファンの間でも、いずれかが準々決勝で散るには勿体ない好カードとの声がしきりだ。

 前回の東京五輪では、日本もイタリアも準々決勝で夢を断たれた。鬼門を乗り越えれば、一気に準決勝以降への機運高まること必至だ。

 世界の注目を集める日伊決戦、心して刮目したい。