その小島と同じリベロとしてプレーするのがオースティン所属の井上。ただ、こちらは本人も「まさかサーブを打つなんて」と驚くように、リリーフサーバーで起用されるケースがシーズン序盤では多く見られた。それでもやってのけるのはベテランならではというところか。また、「LOVB Classic」では後衛で守備につく最中、バックアタックを繰り出す場面も。身長161㎝の、なおかつ本職はリベロの選手が空を舞った瞬間、観客は大きな歓声を上げた。

「前日に、オポジットの選手へ冗談で『上げてきてエエよ』とは言ってました(笑)。状況的にアタッカーがいなかったので、ここしかないな、とは思っていましたが、ほんとうに上がってきたのでおもしろかったですね。NECレッドロケッツでは自主練や遊びでトスを上げてもらうことはありましたけど…公式戦で打つのは中学生以来かもしれません」
この大胆プレーには、チームのマルコ・ボニッタ監督(※)も笑みをこぼしている。
「打っていましたね(笑)。必ず得点につながるわけではありませんが、彼女はいつだって素晴らしい仕事を果たしてくれます。二枚替えでのサーブに加えて、守備でもチームを助けてくれます。彼女の頑張りにとても満足していますよ」
女子イタリア代表なども指揮した経歴を持つボニッタ監督は続けて、このように語ってくれた。

「日本人選手はみな、あらゆるスキルにおいて高いレベルでプレーできるでしょう? とくにボールコントロールに関しては、どのポジションの選手もすぐれています。それは日本の素晴らしいバレーボール文化がもたらしているもの。ですから、彼女がバックアタックを打てるのも、いわば当然のことだと私は思いますよ」
女子プロリーグの新たな展開として始まった「LOVB」で、日本人選手たちはその存在感と価値を示している。最後に、ダニエルさんの言葉を。
「もっともっとたくさんの日本人選手に、このLOVBでプレーしてほしいと願っています。彼女たちが披露するワンダフルなパフォーマンスは、ほんとうに私たちを楽しませてくれますから!!」
(※)取材は「LOVB Classic」でのもので、大会直後にボニッタ監督は家庭の事情によりチームを退団。その後、オースティンの監督には2021-22シーズンにV.LEAGUEのウルフドッグス名古屋を指揮したクリス・マクガウン氏が就任した