[写真]=須田康暉

 「2030年に世界最高峰のリーグになる」を掲げて、新たにスタートしたバレーボールの国内トップカテゴリー「SVリーグ」。その初年度となった2024-25シーズン、男子は前身のV.LEAGUE DIVISION1と同じ10チームによって争われたが、最大の違いは試合数にあった。この2024-25シーズンはレギュラーシーズンが1チームあたり44試合に設定され、その上位6チームがチャンピオンシップに進む形式が採用された。

 昨年10月11日にはバレーボールのメッカである東京体育館を舞台に「2024-25 大同生命SVリーグ」のオープニングゲームが実施され、前年度リーグ王者のサントリーサンバーズ大阪と、西田有志や山本智大らを擁する大阪ブルテオンが新リーグの幕開けを飾った。両チームはレギュラーシーズンを通して上位争いを繰り広げ、最終節までもつれたレギュラーシーズンの優勝争いはわずか1勝差で大阪Bに軍配が上がっている。レギュラーシーズンではその2チームに続いてウルフドッグス名古屋が大型連勝も含めて好調をキープし3位通過。そして超がつくほどの大型補強を敢行したジェイテクトSTINGS愛知が4位と続き、東京グレートベアーズが5位となりチーム発足3季目にして初となるチャンピオンシップ進出を達成。最後の1枠は広島サンダーズが6位でつかんでいる。

[写真]=金田慎平

 レギュラーシーズンの戦いぶりを紐解くと、外国籍選手のオンザコートルール拡充によって世界各国からトッププレーヤーが来日した結果、アタック決定率とサーブ効果率の高さがチームの順位にも直結。またアタック決定率においては、これまでだとミドルブロッカーが上位に名を連ねることが多かったが、この2024-25シーズンは外国籍を中心にサイドアタッカーが軒並み上位を占める、そうした新しい傾向が生まれた。

 そのなかでもシーズンのハイライトともいえる存在だったのが、WD名古屋のニミル・アブデルアジズだ。レギュラーシーズン全44試合・全171セットに出場し、積み上げた総得点は1181。またサーブ効果率、アタック決定率でも1位に輝き、技術統計において個人三冠を達成。文句なしのレギュラーシーズンMVP受賞となった。

[写真]=WOLFDOGS NAGOYA

 そのニミルとチームメートの水町泰杜もルーキーながらレギュラーに定着し、攻守で高いパフォーマンスを披露する。インドアとビーチの二刀流挑戦で沸かせる男が、最優秀新人賞に選ばれた。

 また個人技術統計ではトップブロッカーに西本圭吾(東レアローズ静岡/現・広島サンダーズ)が、トップサーブレシーバーに森愛樹(日本製鉄堺ブレイザーズ)が輝く。2人はいずれも初受賞で、名実ともにリーグトッププレーヤーの仲間入りを果たした。

 もちろん個人タイトルホルダーだけでなく、日本代表の面々や国内リーグの実力者たちがしのぎをけずりあった2024-25シーズンは、チャンピオンシップに入ってからも激闘の連続。それはサントリーとSTINGS愛知によるファイナルも同じで、有明アリーナで行われたGAME1は3時間半におよぶ、まさに死闘と呼ぶにふさわしい試合だった。そこで先勝を収めたサントリーが、舞台をLaLa arena TOKYO-BAYに移したGAME2も制して頂点にたどり着く。チャンピオンシップのMVPには今季新加入のエースアタッカー、髙橋藍が選ばれた。

[写真]=須田康暉

 サントリーがSVリーグ初代王者に輝き、2024-25 大同生命SVリーグは閉幕。けれども各チームはさっそく次の2025-26シーズンにむけて動き出している。王者のサントリーにはSTINGS愛知からセッターの関田誠大とリベロの小川智大が加入、と同時にセッターの大宅真樹が日鉄堺BZへ移ることに。その日鉄堺BZはWD名古屋から高梨健太を迎え入れたが、その一方で現在44歳のリビングレジェンド、松本慶彦が退団しVC長野トライデンツへと移籍した。

 また新外国籍選手として、フランス代表で五輪金メダリストのセッターであるアントワーヌ・ブリザールが大阪Bに、イタリアのセリエAでも十分な実績持つスロベニア代表ミドルブロッカーのヤン・コザメルニクが東京GBに、とビッグネームたちの足音がすでに聞こえてきている。彼らの存在はリーグの競争力を高め、またチームメートの日本人選手たちにとっても刺激となるに違いない。

 2024-25シーズンでは最終的に4チームがチャンピオンシップ進出に至らなかったとはいえ、前年度最下位から一つ順位を上げたVC長野はSTINGS愛知やWD名古屋からの勝ち星も。また今季は8勝で最下位に沈んだヴォレアス北海道もレギュラーシーズンの最終節では日鉄堺BZに2日連続でフルセットを制し、白星でシーズンを締めくくっている。VC長野にヴォレアスそして同8位の東レ静岡、同7位の日鉄堺BZは積極的な補強やこのオフシーズンのトレーニングを経て逆襲を誓う。

 さらにハイレベルな戦いが、きたる2025-26シーズンで繰り広げられることだろう。

この記事を書いたのは

坂口功将

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