6月、女子プロバレーボールチームのアルテミス北海道(Vリーグ所属)が株式会社Wizをオーナー企業に迎え入れることが発表された。
株式会社Wizは、すでに男子プロバスケットボールチームの鹿児島レブナイズ(B2リーグ所属)のオーナー企業でもあるため、これによりBリーグとVリーグの2つのプロチームを保有するオーナー企業となった。
今回は両チームの代表取締役CEOを務め、Wizの代表取締役社長である山﨑俊氏にオーナー企業就任の経緯やスポーツチームへの思いを聞いた。
ーー始めに、バスケットとバレーのプロチームを運営するに至った経緯を教えてください。
弊社はもともとBリーグのレバンガ北海道のスポンサーをしていましたが、チーム運営に関わりたいと考え、様々なつながりからオーナーチェンジを考えていた(当時B3の)鹿児島レブナイズを紹介していただきました。そしてオーナーとなって4シーズン目となった昨シーズン、ちょうどオーナーチェンジを考えていた女子バレーボールのアルテミス北海道をバスケット関係の方から紹介していただき、そこから話が進んで今年の6月にオーナー企業になることを発表しました。
ーー異なる競技の2チームの運営になります。
私自身、地域におけるプロスポーツチームの存在は大きいと感じていて、「鹿児島ならレブナイズだね」というように地域のみなさまが一致団結する上で重要なコンテンツになる、地域のセンターピンになる可能性があると考えています。地域によってはバスケットだけでなく野球やサッカー、バレー、ハンドボールもある。その中で個人的には室内競技は天候に左右されず、交通の便も良いところにアリーナがあることが多いので、老若男女が楽しめる空間を作りやすいと考えています。
加えて、アルテミスでいうと女性のチーム。北海道は男子チームなら野球、サッカー、そしてバスケットと応援するプロチームがいくつかありますが、女子チームというとそこまではないので、「女子はアルテミスだよね」というファンコミュニティ、ファンベースが作られていくのではないのかと思っています。レブナイズとアルテミスは、競技は違えど同じグループ内の組織として情報交換や共有をしていて、それもまたプラスの効果を生んでいると思います。

ーー女性スポーツについてですが、スポーツビジネスの中で女性の存在は世界的にも大きくなっています。そうしたポテンシャルは感じますか?
すごくあると思います。弊社は2012年創業で、今年で14年目になりますが、従業員が900名強で男女比率は女性が54%。管理職の比率も46%が女性で、女性のみなさまの活躍によって今の会社があると言っても過言ではないほどです。日本も女性活躍への期待はこの5〜10年ですごく言われてきたところですよね。そうしたことから女性にスポットライトがより浴びていく社会になりつつあって、それはスポーツの分野で同じだと思います。なおかつバレーは女性の競技人口も多く、ママさんバレーも盛ん。女子バレーのプロチームは高い可能性を秘めていると考えています。
ーーアルテミスはVリーグ所属ですが目指すところはSVリーグ昇格ですか?
チームを持つ以上はどの時間軸かは置いといて、ナンバーワンになることは掲げるべきだと思っています。ただ、地域のスポーツチームとして大事なのは熱量を作っていく、地域を盛り上げていくことだと考えているので、盛り上げるためにどういうポジションにどのタイミングでいるべきか。これは私だけが決めることではなく、もっと大きな範囲で決めていけたらと思っています。現状はいつSVリーグに上がるか、いつSVリーグ優勝を目指すかの明確な目標はないですが、どこかの時間軸で目指すべきだとは思っています。
では目下、この一年間は何をするのかというと会場を満員にすること。札幌市の北ガスアリーナ札幌46をメインアリーナとして使わせていただくのですが、無料招待を活用しながら2500名収容のアリーナを満員にする。ここが一つのチャレンジです。Bリーグはもとより、プロ野球、Jリーグともシーズンがかぶる時期はあるので、その中でどこまでできるかはまだ分からないですが、目標は集客人数と熱量。そして1年やってみて、SVリーグに上がるか否かを決めていきたいと思っています。
ーーまずは地域貢献、地域活性化だと。
そうです。地域貢献、地域活性化という言葉だと少し分かりづらいので、今考えていることをお伝えすると、先ほど話をしたように、スポーツチームは地域のセンターピンになりましょうというのがまずあります。でも、アルテミスが北海道のセンターピンになるというのは少しおこがましいので、どちらかというと女性活躍のセンターピンやシンボルになり、北海道の女性が頑張る活力になっていくことを目指すというのが方向性です。
スポーツチームは神輿のようだと私は思っていて、全員で担ぎ上げることのできる存在。地域のスポーツチームだと特にそうだと思います。担がれる存在になることが地域活性化につながると思っているので、『みんなに担いでもらえるアルテミス』になっていきたいと思っています。

ーー次にレブナイズについて伺いますが、運営して4シーズンが終了。改めてこれまでの施策を教えてください。
「B.LEAGUE ONE」(26-27シーズンより始動)のライセンスの条件の一つが、1試合平均2,400名の集客でしたので、そこを集中して追い掛け、2シーズン連続でクリアすることができました。
2023-24シーズンに続き2024-25シーズンも「KAGOSHIMA SHOWTIME」をスローガンに掲げましたが、いいショータイムは選手とコーチ、スタッフで実現できるようになった。会場に来てくれればレブナイズのファンになってくれる、応援される存在にはなれたと思うので、小さかった炎がどんどんと大きくなっていっていくのを鹿児島では感じています。これは運営スタッフの頑張りも大きいです。
新シーズンはさらにいい形で進むと思っていますし、その準備もしています。より大きなファンコミュニティ、ファンベースができていく印象はありますね。
ただ、これが持続可能なのかどうかは、まだ明確には分からない。より持続可能にしていくにはさらに行政とも連携しながら取り組んでいければと思っています。
ーー先シーズンはB2のクォーターファイナル進出。チームの強化にも手応えは感じているのではないですか?
アルテミスと同じようにもちろん優勝は目指します。ただ、優勝は何のためにするのといったら鹿児島を盛り上げるためなので、優勝しても盛り上がらないのだったら意味はない。「KAGOSHIMA SHOWTIME」のスローガンにのっとり、ショータイムを作り上げていく、鹿児島のエンターテイメントとして秀でた存在になっていくことが大切で、結果、もし優勝できなかったとしたとしても、それはチャレンジした結果だと捉えています。

ーーご自身のことをお伺いしますが、もともとスポーツビジネスには興味あったのですか?
チームを作ることに興味がありました。1年1年どういう年を過ごしていくかを考えたとき、私だけでなく社員みんながバレーとバスケットを応援し、推しているチームがどう成長していくかを見届けながら年を重ねる。これは非常に幸せなことです。特に団体競技は『チーム』を感じます。人が頑張る原動力は、人から求められる、期待されることだと思うのですが、チームにはそれがありますよね。
会社がチームから学ぶ。そういう点ではレブナイズはそうなってくれました。B3からB2に上がった2年前やB2西地区2位でプレーオフまで進んだ昨シーズン。「チームとは」「信じる力」といったものを教えてくれました。
私自身、スポーツチームビジネスをしているというより、地域活性化ビジネスをしているという感覚が強いです。2チームの運営を通してチームも会社も挑戦を続けていきたいと考えています。