ファン・地域と一体となって夢に向かってチャレンジしていく“ドリームコミュニティ”を掲げ、千葉ZELVAから新たに生まれ変わった千葉ドット。そのチームの運営を今シーズンより担うこととなった株式会社ドットラインの代表取締役 兼 グループCEO 垣本祐作氏に、千葉を本拠地とするバレーボールチームの意義や目指すチーム像を語ってもらった。

――はじめにバレーボールチームの運営に携わることになった経緯を教えてください。

垣本 弊社は医療、福祉の分野の事業を行っていて、千葉県での事業者数が多く、地域に根ざしている会社です。私自身、千葉愛が強く、「この地域いいよね」というまとまりをよりみんなが持てるようになるにはどうしたらいいのかということは以前から考えていました。

また、所属と自己肯定感は比例しているとも思っていて、自分の所属しているところ、千葉が好きという人が集まれば地域全体の幸福度も上がるのではないか、それは実際に私自身が訪問介護をしているときに経験したことでもあります。

その中でスポーツは多くの人を魅了するとも強く感じていて、その流れからバレーボールチームの千葉ZELVAさんを紹介していただきました。(当時チームの代表理事であった)吉川明さん(現在は相談役)とも意気投合し、私やドットラインの理念を形にしたチームであったことから約1年半はメインスポンサーとして携わらせていただきました。その期間でもやはりスポーツの力はとてつもないなと実感しましたし、Vリーグ、SVリーグは世界一のリーグを目指すと掲げていますので、それも私の夢である「日本がもう一度世界をリードする」こととリンクしていました。そうした経緯から今シーズンよりバレーボールチームの運営をするに至りました。ビジネスシナジーはもちろん見出しているのですが、どちらかというと私の想い先行でしたね。私は滅多にそういったことはないのですが。

――千葉ジェッツの創始者であり取締役COOに就任した梶原健氏も加わりました。

垣本 梶原さんとはともに目指しているところが近く、一緒にやりましょうということでスタートしました。それこそリブランディングに関しては、スポーツチームの経営が初めての年だったので今シーズンは難しいだろうと考えていました。でも、NECロケッツのリブランディングも行った梶原さんが来て、スピード感を持って進めることができた。大変ではありましたが、リブランディングに関しては予定より1年ほどぐっと早くなった状況です。

――改めてチーム名を『千葉ドット』にした思いを聞かせてください。

垣本 千葉ZELVAという名前もすごく良かったのですが、新たなスタートとしてチーム名の変更を考えました。千葉ドットという名前に関しては、いろいろと考えた結果で、ドットラインという社名からというよりは、大事にしていることが、『ドット』と『ライン』、『点』と『線』だったということです。まずは点を打って、そこから円にしていく。それに『DOT』には『Dream One Team』という考えも入っていて、千葉全体でワンチームとなってコミュニティを作っていこうということも含まれています。

――チームが目指す先はSVリーグ昇格ですか?

垣本 そうですね。梶原さんが記者会見で世界一という話をしましたし(笑)、そこは目指すところではあります。もちろん、段階的にやっていきたいとは思っています。まずはフロントスタッフが大事だと思っていて、組織をしっかり作ること。組織マネジメントに関しては、当社はかなりこだわりと信念を持っているので、そのマネジメントメソッドをしっかりチームに、そして選手に落としていくことができたらおのずと強くなる確信はあります。そのスピードとVリーグとSVリーグの成長スピードによってどのように動いていくかは状況に応じて変わると思うので、マーケットの動きを見ながらやっていきたいです。

リブランディングの記者会見でも発表させていただきましたが、例えチームがこの先どんなに強くなったとしても創設1年目でパートナーになっていただいた企業にはチームの公式HPに永続的に「立ち上げバートナー企業」として企業名を掲載させていただきます。これはまさに私たちの思いの象徴で、それこそ強くなればなるほど地域から離れていくといった現象があるとは聞きますが、私たちはそれはしたくない。それだけではない価値が千葉ドットにはあると考えています。

――バレーボールチームを持つことは医療、福祉の事業にどう生かせると感じていますか?

垣本 ビジネスシナジーはあると思っています。弊社では、ドットワーク(就労継続支援B型)をはじめとした障がい者の方の就労支援事業を運営しています。支援の一環として昨シーズンより試合運営を手伝っているのですが、多くの人が応援するチームに自分が携わっているということは、障がい者の方のやりがいや自立につながる。これはものすごく感じました。応援するチームがあるということは、生きがいにもなるし、もっと仕事をしたいという欲になる。これが一番のシナジーですね。ほかにも様々なところでシナジーは感じています。

同様に高齢者の分野に関しても、まだあまりアプローチはしていないのですが、スポーツチームを応援することは高齢者の生きがいや地域社会との交流にもなると思っています。スポーツ選手が訪問をすることもいいことだと考えているので、千葉県の他競技のチームとも連携して困っている人に対して勇気を与える地域活動をできたらいいなと考えています。

――リブランディングのステートメントの中に「バレーボールはあきらめの悪いスポーツだ」と書かれていました。

垣本 勝ちに貪欲だったり、諦めない姿勢だったりという精神的なマインドセットは大事ですよね。私がバレーボールの試合を見ていてすごく感じるのが、バレーボールの素晴らしさは、ボールを落とさないで追いかけるところではないかということ。アタックやブロックに日が当たりがちですが、バレーボールはあきらめの悪いプレースタイルが観客を湧かせるんだと感じました。だからこそもっとそこを表現していこうよと。あきらめない姿勢が見てくれている方たちに元気を与える。そういうことでチームのキャッチフレーズを「Receive Your Dream」にしました。

バレーボールのあきらめない姿勢はいわゆる人間のあきらめない姿勢。自分が何かチャレンジしていることに対してあきらめないというシンパシーが試合で生まれればいいなと思っています。私としては「あきらめの悪い男特集」をしたいぐらいですよ(笑)

――そうなると、選手はみなあきらめの悪い男たちだと。

垣本 観客に対して負けて悔しがるチーム、あきらめない姿勢を体現するチームでいたいですね、それがバレーボール、スポーツの素晴らしさだと思うので。熱量というか、だから綺麗で軽やかなチームではなく泥臭いプレースタイルのチームでありたいですね。

スポーツの分野だけでなく、今はテクニックでうまくやっている人がかっこいいとされがちな時代ですが、地道に努力している人間、泥臭くコツコツやる人間の方がかっこいいと私は感じるので、そこを表現していきたいです。

――ファンの方を含め様々な人が千葉ドットの新たなスタートに期待していると思います。

垣本 千葉県唯一のバレーボールチームとして先にも言ったように「Receive Your Dream」の姿勢を見ていただきたいし、あきらめない姿勢を共感できたらと思っています。

応援してもらうけれど、こちらもプレーで応援する。そうした相互応援もコンセプトにしていて、プレーを見た人が自分自身のチャレンジに対しての勇気や希望が湧くような試合をしたいです。その中で勝った方がよりよいのですが、勝っても負けてもそうした相互応援ができるように。もし、甘いプレーをしていたらぜひ叱咤激励してほしいですね。