[写真]=大塚淳史

 今シーズンもSVリーグが男女共に開幕し、全国各地で熱戦が繰り広げられている。今季は特に女子のリーグ戦において、入場者数増を目的にクラブへのサポートや一部チームをモデルにしたプロジェクトを組んでいる。当然昨季の段階でも集客努力をしていた女子チームはあるのだが、今季はそれがさらに拡がっている。そんな中、選手たちの意識も大きく変わってきているんだなと思わされる場面に遭遇した。

大阪マーヴェラスのホームアリーナで響き渡った宮部の言葉

 10月10、11日と女子の開幕戦の大阪マーヴェラス対ヴィクトリーナ姫路を取材した時のこと。

 姫路が昨季女王をアウェーの地で2連勝を果たした10月11日の試合終了後、最も活躍した選手への表彰と場内インタビューがあった。この日の試合中盤から終盤に掛けて大活躍した日本代表の宮部藍梨選手が選ばれた。

10月11日の大阪マーヴェラス戦で活躍したヴィクトリーナ姫路の宮部藍梨(撮影:大塚淳史)

 筆者は正直なところ、アウェーの選手に対して場内に響き渡るインタビューを行うのはどうなんだろうとは以前から思っていて、選手側も無難なことしか言わない印象を持っていた。例えば、バスケBリーグでは基本的に勝っても負けてもホームチームが、大多数の自チームファンに向けてあいさつし、勝ったアウェーの選手は会場の端で配信向けのインタビューを受ける。

 そんなことを思いながら、宮部の場内インタビューのやり取りを聞いてた。試合の感想を話した宮部に、MCが「試合に訪れたファンの皆さんに一言、次節以降への意気込みをお願いします」と伝えた。MC側は台本に沿った通りに聞いただけではあろう。無難に「来週もよろしくお願いします」と宮部は言うぐらいかなと見ていた。

 すると、宮部は観客席を見渡しながら「まずは今日足を運んでくださった皆さん本当にありがとうございます。SVリーグ昨日始まったばかりですので、たくさんこれから試合があります、私たちの試合に限らず足を運んでいただきたいですし、どのチームの良いバレーをします。ぜひたくさんの試合を見に来てださい」と呼びかけた。

 宮部の言葉から、SVリーグ女子全体を盛り上げたいという思いがひしひしと伝わった。場内で聞いていた誰もが感じ取ったであろう。

試合後会見で約3分ノンストップで理由を説明

 試合後会見で、異例に思えたこともあり、宮部に次の点を伝えながら質問した。場内インタビューからSVリーグ女子の盛り上げについて思うところがあるのではないか、SVリーグはどうしても男子にフォーカスされがちというのもある。こう問うと、約3分にわたってノンストップで熱く答えてくれた。

「男子と女子をこう比べてしまうと、男子の方にフォーカスされてるなとは思います。男子にフォーカスされてるからフォーカスしている側が悪いとか良いとかというわけではなくて、もちろん(男子が)私たちよりも良いバレーしているし、悔しいですけど面白いことができているからフォーカスしてもらえている。リーグの見せ方というか、女子バレーももっと頑張ってる‥・・・、ちょっと考えていいですか」

 一瞬考え込んで再び言葉を紡ぎ出した。

「自分たちもSVリーグになって、会社のチームとしてではなくて、プロとして私たちは活動しています。自分たちが勝ちたいであったり、そういう部分も私たちがバレーをする理由の1つです。けど、バレーボールをもっと知ってもらいたいであったりとか、どんなスポーツであったりとか。女子バレーの人口も減ってきていると思う。そういった側面で私たちも発言してたくさんの人の目に触れる場所にいって発言して、地域貢献であったり、そういう部分で露出していくことが私たちのリーグに来てもらうきっかけになるかもしれない。バレーボールをやってみようと思うきっかけになるかもしれない」

 さらに止まることなく発言を続ける。

「もちろんリーグに来てもらう、集客であったりとかバレーボールを知ってもらうというのも、いちバレーボール選手としての私たちの責任だと思う。そこの部分でまず発言したかったというのと、女子は14チームありますけど、どこも面白いバレーをしている。女子と男子の違いでいうと、私たちはラリーが長くてボールが落ちないというのが女子バレーの見応えの1つ。スパイク力のダイナミックさが男子の良さであったとしたら、女子は『あ、つながった』とかレシーブ力、やっぱり拾うし続くよっていうのが面白い部分。それぞれのチームカラーがあって、それぞれの地域で面白い試合であったりとか企画をたくさん皆がしている。そういうところに足を運んでいただきたいなという気持ちがあって、そういう発言をさせて頂きました」

翌週アウェー戦後場内インタビューでも同様に

 宮部は翌週10月19日の東レアローズ滋賀のアウェー戦に勝利した際も、活躍したこともあり場内インタビューに選ばれて同様のことを言っている。

「まずは今日会場に足を運んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。私たちは今日アウェーチームとして戦ったのですが、こうやってたくさんの方が足を運んでくださって満員のコートでプレーできるというのは、すごくありがたいことですし、今日来てくださった皆さんにすごく感謝しています。チームとしても、今日は苦しい場面がすごくたくさんありましたし、私個人的にもうまくいかないことがすごくたくさんあったのですけど、チームのみんながすごく助けてくれました。すごくチーム力というのが今日で証明できたのかなというふうなゲームでした」

 試合の感想について問われたのだが、会場を埋めた来場者に感謝した。

 インタビュアーから続けて「最後に会場の皆さんにもし一言があれば」と言われると、前週同様にSVリーグ女子観戦を訴えかけた。

「SVリーク始まってもう4戦終わりましたが、まだまだたくさん試合があります。あと40試合はリーグ戦があるので、たくさん会場に足を運んでいただきたいですし、私たち姫路のホームにも時間があったら来ていただきたいと思います。今日は本当にありがとうございました。大事な時間ありがとうございました」

 ちょっとしたことかもしれないが、場内の観客はこういった姿勢や発言を間違いなく見ている。さらにアウェーでこういった呼びかけをした選手は異例中の異例。しかも2週連続ということもあり余計に印象が強くなった。

見応えのある試合、楽しめる場内の雰囲気

10月25日のヴィクトリーナ姫路のホームゲーム、アランマーレ山形戦では2101人の観客が訪れた(撮影:大塚淳史)

 筆者自身、昨季からそれまでの男子リーグ戦だけでなく、本格的に女子のリーグ戦の取材で各地を回るようになった。宮部の言葉通りであるが、付け加えると、女子の試合も男子に劣らず面白い試合が間違いなく多い。外国籍選手が増えたこともあるかもしれないが、そもそも試合レベル自体が昨季も既に上がっていた。

 今季はさらに試合の質が上がっていて、例えば監督のスタメンの選び方、采配のわずかな遅れで大きく試合の勝敗が変わる。男子以上に上位と下位の差が少なくなっている。

 もう一つ、昨季現地取材していて興味深かったのが客層だ。女子のリーグ戦に訪れる観客層が、男子と比べて老若男女満遍無くいる。バランスがいい。女子の試合だから観客層は男性が中心なのかと思っていたが、ファミリー層は多いし、思いのほかに20代、30代の女性客も見かける。さらに、女子の方が地方を拠点にするチームが多いせいか、地元ファンの熱い応援が多い。大半のチームで人数の規模は差はあれども応援団を見かける。

 入場者数の比較だけなら男子に分があるかもしれないが、試合会場の応援など雰囲気であれば、現状では女子の試合の方が味があって楽しめることが多い。

 ヴィクトリーナ姫路は11月1日、2日に、昨季の天皇杯決勝、リーグ戦チャンピオンシップ準々決勝であたったSAGA久光スプリングスをホームアリーナのヴィクトリーナ・ウインク体育館に迎え、2連敗したものの、両日2502人、2804人と会場のキャパ上限に近い集客を達成している。

 また、他の女子の試合会場でも、一部集客に苦しむチームは存在するものの、多くのチームで前年度を上回る集客をしている。

 リーグの支援もだが、チーム自身の努力、選手自身の意識改革は着実に進んでおり、SVリーグ女子も魅力的なコンテンツとしてフォーカスされていくはず。あとはそれを取材して伝えていく、我々メディア側の責任でもある。

ヴィクトリーナ姫路の宮部藍梨。10月25日のアランマーレ山形戦(撮影:大塚淳史)

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この記事を書いたのは

大塚淳史

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