デンソーエアリービーズは9勝9敗の五分で皇后杯前の中断期間に入っていた。12月7日に宝来屋ボンズアリーナで開催された大阪マーヴェラス戦はセットカウント1-2から第4セット、第5セットを連取する劇的な展開で、ホームのファンも沸き立つ逆転勝利だった。
練習でもやっていなかったという大胆なオプションが成功した。辻健志監督は試合をこう振り返る。
「相手にデータもあり、対策を取られている中で後手の展開となり、3セット目は11点で失ってしまいました。ロザマリアと山下(晴奈)のポジションを変更して大胆にトライしました。レフト側の決定力をなかなか出せていなかったのが、ロザマリアが入ってレフトからも決まるし、スイッチをできるのでライトからも決まる。バリエーションが増えて、相手も非常に混乱したのではないのかなと思います」
ロザマリア・モンチベレルはブラジル代表で、SVリーグの女子では屈指の実力を誇るオポジット。パワフルなスパイクはもちろんだが、様々な位置から相手を見極めて打ち分ける器用さがある。守備もブロックだけではなくティグの読み、正確性を持っている。そんな万能性、対応力も彼女の強みと言える。
その存在はデンソーの生命線だ。辻監督は言う。
「彼女はメダリストでもありますし、国際試合の経験も豊富です。また若いときに苦労しながらも、やっと代表のレギュラーをつかんだ選手です。そういったことをチームにも還元してくれます。リーダーシップも持ったグッドプレーヤーです。アタックにフォーカスされがちですけど、戦術の理解度も高いですし、今日はブロックも良かった。DFもああやってポジションを変えて、バックミドルに入ってもしっかりこなしてくれます」

ロザマリア自身は、7日の逆転勝利をこう振り返っていた。
「結果は本当に良かったと思います。だけど、まだチームとしてアップダウンが多いので、もっと安定したバレー、チームとして勝つ方法を、もっと探していかないといけません」
第4セットの大胆なローテーション変更についてはこう説明する。
「自分たちも本当に慣れていないローテーションでしたけど、スタッフの発想でした。パスもそうだし、セッターとのコンビとかもなかなか合わず苦しいときに、ああいう変化はチームとして非常に良かった。第5セットはお客さんも一緒に応援して、本当に違った、いい雰囲気ができていました」
ロザマリアのコメントや態度から伝わってきたのは「プロフェッショナル」な姿勢。一勝で一喜一憂せず、課題はしっかり受け止めてより上を目指そうとする。取材中にはチームとチームメイトに対する要求も口にしていたが、自分の責任は十二分に果たしているからこその言葉だ。
SVリーグがスタートして、デンソーが福島に移転して、今季がそれぞれ2シーズン目。まずSVリーグは外国籍選手の起用が2名に(アジア枠も含めれば3名に)増えている。デンソーは昨シーズンからホームアリーナを福島県郡山市に移し、地域に根ざした活動を開始している。7日の試合には2257名のファンが集まっていたが、来場者数は昨季から大きく伸びている。

ロザマリアはそんな変化をこう言葉にする。
「外国籍選手が増えていく中で、本当にレベルも高くなっています。私たちも福島に来て、ファンがかなり増えて、チームの力になっています。自分もこれだけファンの方から温かく迎えていただいて感謝しています。これだけバレーボールでみんなが喜んでくれる国で、自分のいい印象を残していきたいなと思います」
ロザマリアは2026年1月31日(土)・2月1日(日)にGLION ARENA KOBE(兵庫県神戸市)で開催されるオールスターゲームにも、ファン投票で選出されている。女子のオポジットでは最多の28,103票を集め、外国籍選手の中ではダントツの得票数だった。
「誰でも選ばれる場ではないと思いますが、昨年に続いて選ばれて、本当に光栄です。あれだけ皆さんに投票していただいて嬉しく思います」
チームメイトはロザマリアとプレーすることで、結果以外にも得るものがあるだろう。ファンも彼女のプレーや振る舞いを見れば、何か「感じ取れる」ものがあるだろう。ロザマリア・モンチベレルとは、そういう存在だ。




