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 2024―25シーズンの大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)が11日からいよいよ開幕する。新たなスタートを切る国内バレーボールリーグ。新シーズンの幕開けに先駆け、SVリーグ男女全24チームをピックアップし、ここではヴィクトリーナ姫路を紹介していく。

クラブヒストリー:2016年設立の若いチーム

 新リーグスタートとともに、仕切り直しを図るシーズンだ。

 まだ設立から10年も経たないが、歩みの過程はなかなかににぎやかだ。まずは2016年のスタートから、他チームとは一線を画す。企業チームがほとんどであるのに対して、姫路は独立採算制のプロクラブとして運営されている。クラブのホームページにも「プロバレーボール選手を目指す若者たちが、この姫路の地で技術を身につけ、トップレベルの選手として五輪を目指してもらえる体制を創ること」がミッションであると記されており、プロとしてホームタウンの兵庫県姫路市で歩んでいく決意を強くにじませている。竹下佳江を監督に迎え、眞鍋政義が運営に加わるなど、陣容も派手だった。

 2017年には、チーム譲渡を受ける形での参戦が叶わず、V.LEAGUE挑戦は1年持ち越しとなった。だが、2018-19シーズンにV2リーグに参戦すると、あっさりと優勝を達成。1枠空きのあったV1リーグへの昇格をつかみ取った。

 V1リーグに昇格してからは、初年度を最下位で終えるなど2ケタ順位を抜け出せなかった。昇格からの4シーズンで3度の入れ替え戦を経験し、3度目となった2022―23シーズンにはついに降格。V.LEAGUE最後のシーズンは2部で迎えることになった。

 それでも昨季を2部リーグ優勝という形で終えると、大同生命SV.LEAGUEへの参入が決定。リーグとともに、リスタートを切ることになった。

このオフの動き:日本代表の宮部を含む既存戦力がカギに

 11人が退団した昨季に続き、このオフにも引退する2人を含む6人がチームを離れた。一方の入団者は、トライアウト参加希望者が募集されるなど難航している様子もあったが、7月に入りブラジル人のアウトサイドヒッター、アナ・ルイーザ・フヂゲルと、セルビア出身で身長192センチのミドルブロッカー、ミンニャ・オスマジックを獲得。代表歴などはないが、ともに21歳と若く、新天地でのブレイクの可能性を秘めている。

 昨季は2部リーグで対戦していたブレス浜松から、期限付き移籍でセッターの森木かれんも加わった。未知数の外国人選手と、昨季の対戦で可能性を見出した選手と、限られた予算でやり繰りする強化部の腕の見せどころとなるか。

 そうなると、ベースとなるのは昨季を戦い抜いた既存戦力ということになる。フランスでのプレーも経験した柴田真果は加入2年目となる今シーズン、キャプテンを任されることになった。同じくフランス帰りで加入2年目の井上愛里沙は、パリ五輪にも出場した日本代表アタッカーだ。柴田は30歳、井上は29歳とベテランの域に入っていく年齢だが、チームには20歳代後半の選手も多く、そうした選手たちの成長を引き出すような姿を見せることも求められている。

注目選手:宮部藍梨

 そうした陣容の中でも期待が懸かるのが、宮部藍梨だ。パリ・オリンピックにも出場した、現役日本代表のミドルブロッカーだ。

 高校2年生で日本代表デビューを飾るなど将来を嘱望されたが、卒業後はアメリカへと留学。国内の第一線から離れる格好となったが、帰国して姫路に入って競技を続けたことは、バレーへの愛情を証明する。26歳とプレーヤーとして脂の乗る時期に入っていくところで、年齢構成的にもまさにチームの中心となって、けん引していくことが求められている。

 身長181センチのアウトサイドヒッターながら、高い身体能力を活かしてここ数年でミドルブロッカーもこなすようになるなど、プレーの幅を広げている。2役をこなすことは宮部の中での相乗効果を呼んで、さらなる成長を後押しするはずだ。

 チームを率いるのは、オランダ代表として五輪に2度出場し、日本での指導歴も長いアヴィタル・セリンジャー監督。オランダ代表の任から戻り、昨季すぐにチームを2部優勝へ導いた。経験豊富な指揮官には、久光をヘッドコーチとして優勝へと導いた2001-02シーズンのような采配が期待される。

 チーム名は、英語のVictoryを基にした造語。新リーグであろうとも、重い伝統や歴史に縛られることもなく、挑戦者の姿勢をそのままに勝利を求めていくだけだ。