大幅なジャンプアップと言っていいだろう。大同生命SV.LEAGUE WOMENを戦う群馬グリーンウイングスは昨季、チーム史上初のトップカテゴリー参戦初年度で開幕から35連敗と苦しんだ(最終成績は5勝39敗の14位)。そこから一転、今季は11月に最大7連勝を挙げるなど勝ち星を重ね、レギュラーシーズン前半戦を14勝8敗と勝ち越し(※2月12日時点で17勝13敗)、順位も上位8チームのチャンピオンシップ進出圏内につけている。
躍進の背景には、かつてFC東京やPFUブルーキャッツ(いずれも当時)を指揮して国内大会での好成績に導いてきた坂本将康氏が今季から監督に就任したこと、さらに現在リーグトップスコアラーをひたはしるポーランド代表アウトサイドヒッターのオリビア・ロジャンスキが高い得点力でチームを牽引していることが挙げられる。と同時に、前半戦で光ったのは移籍加入組の存在だ。セッターの山下遥香、オポジットの仁井田桃子、リベロの工藤真帆は皆、自身の成長とプレー機会を求めて群馬へやってきた。
なかでも山下は「環境を変えて、自分をさらに成長させるため」に移籍を選んだ。京都橘大学を卒業後、PFUで5シーズンを過ごし、昨季は大阪マーヴェラスの一員としてリーグ優勝を経験、今季は群馬で正セッターを務めると今年1月には「エムットpresents SV.LEAGUE ALL STAR GAMES 2025-26 KOBE」への出場を果たした。

「オールスターへの選出は嬉しかったですが、それ以上に驚きが大きかったです」と晴れ舞台を振り返った山下は、チームの前半戦を踏まえて言葉に力を込める。
「アタッカー陣が強力なので、そこに助けてもらっている部分がまだまだあると感じています。悪い言い方をすれば、アタッカー頼み、になってしまっている。ですから、相手ブロックとの駆け引きや攻撃の組み立てなどを通して、アタッカーが得点しやすい状況をセッターである私が作りたい。セッターが点数を取る、イメージです」
もっとも坂本監督にはPFU時代に指導をあおいでいた。かつての自分との違いは、ほかでもない本人が感じている。
「坂本監督からはPFUでトスの上げ方や戦術など新しいことをたくさん教わりましたし、そこから私も大阪MVでの1シーズンで学べたことがありました。今、再び同じチームになり、かつて坂本監督に言われてきたことを自分の中で消化できるようになっていると思う反面、まだまだ求められているレベルには達していないとも。ですから、坂本監督が求めるセッターとしての仕事ができるように、しっかりと成長してチームを勝たせられるようになりたいです」
その山下の言葉にあるように、新たな学びや考えを新天地で得た一人が仁井田だ。

下北沢成徳高校(東京)を卒業後、埼玉上尾メディックスで6シーズンをプレーした。
「チームとしてのスタイルがまるで違って、表現するなら埼玉上尾は『自由度の高さ』が良さで、一方の群馬は坂本監督が『基本に忠実』という具合です。私自身、フィーリングでプレーしていた部分があって、最初は怒られていました。けれども、そのスタイルだからこそ芽生えた新しい見え方や発見があって、今までと違った感覚でプレーできていることが面白いです」
埼玉上尾ではチームきってのムードーメーカーとして存在感を放つ一方、レシーブ力を備えたオポジットとしてコートに立つも、チーム内競争と向き合う日々が続いていた。自身初の国内移籍に不安がなかったわけではないが、それ以上に喜びがあったと明かす。
「この先はアウトサイドヒッターとして獲得されるかも…と想像していたんです。ですが群馬からのオファーはオポジットでの起用が前提だったので、それがとても嬉しかった。中学、高校とオポジットでプレーしてきましたし、埼玉上尾ではアウトサイドヒッターにトライもしましたが、やはり私はこのポジションが好きなんです」
かつての恩師も、新天地での挑戦を後押しした。仁井田は照れくさそうに言う。
「高校時代の小川良樹先生(現・細田学園高校〔埼玉〕コーチ)が『桃子はやっぱりオポジットだよな』って言ってくれるんです。それに『身長もあるし、日本代表も狙えるでしょ』とも。私はそんなことを思ってないんですけど(笑)、頑張ろう!!となりました」
山下のトスワークを引き出すためには、1本目のボールを触るレシーブの精度が不可欠。その点で、仁井田とともにサーブレシーブで大きな役割を担っているのが、工藤である。札幌山の手高校(北海道)を卒業後に入団したアランマーレ山形では2季目で守護神の座を射止めると、同年にはオールスターゲームにも抜擢された。

そうして移籍したのは、「たとえサイズはなくとも粘り強く拾って、パワフルに攻めてくる勢いがすごい」という印象を抱いていた群馬だった。
「今季はそこにルカさん(山下)やボビさん(仁井田)という安定感のある選手が加わり、決定力の高い外国籍選手もいて、がらりとチームの印象も変わったと感じています。そのなかでも私はサーブレシーブ担当のリベロとして広い範囲で相手サーブを捕ることで、他のアタッカー陣が攻撃に専念できるようにしたいですし、ルカさんが相手ブロックを揺さぶれるようにしっかり返球したいと考えています」
一方で、課題としているのはディグや相手ボールへの判断力。工藤自身、坂本監督から口酸っぱく指導を受けている。
「私は元々、とにかく動いてボールを拾うことで自分のリズムを作るタイプでした。けれども、それは無駄な動きが多かったという見方もできますし、実際にその分、疲労も溜まるし、判断力が鈍ってしまう。坂本監督からも『ここは今、無駄な動きだったぞ』と教えてもらっています。気持ちの面では動きたくて、少しばかりやりづらさを感じることもありますが、判断力が身につくことでさらにレベルアップできればと考えています。それが、私が移籍した理由ですから」
新天地で自身の成長を確かめながらシーズンを戦う彼女たち移籍組の存在は、前半戦にチームが見せた躍進の一因となった。「3人が移籍したことで、チーム全体のサイズが大きくなるなどよくなった部分はあります」とは坂本監督の言葉だ。しかし、現状維持を指揮官は良しとしない。今年2月7日、皇后杯女王の大阪MVをホームに迎えてストレート負けの完敗を喫したGAME1の試合後、記者会見で坂本監督はこのように語った。
「私が見ているかぎり、前半戦でうまくいっていた自分を振り返り“過ぎている”のではないかと思います。『このときはうまくいっていたのに』と成功した部分だけにフォーカスしていては、いつまでも成長しません。そのときに成功したとしても、そのシーンはすべて映像で対戦相手に見られているわけですから。成功の手応えを感じているうちに、次の一手を生み出していかなければ。
これは3人に限った話ではなく、チーム全体に言えることです。いずれ新しい選手も入ってくるわけで、これまでの成功体験に甘んじていると抜かされてしまうでしょう。ですから、抜かれたら抜き返してほしい。そこがここから彼女たちに期待する部分になります」
シーズン後半にかけて、いよいよ内定選手も合流するだろう。すでに在籍しているメンバーだって、メキメキと成長して新たに台頭するかもしれない。実際に翌日のGAME2では佐藤莉子や門田湖都らルーキーがフル出場し、大阪MVに勝利した。さらには、1年前の自分たちが選択したように群馬を新天地に定めて、力のある選手が加わることだってありえる。
チーム内外そして自分自身との戦いに身を投じる選手たちへの坂本監督の“期待”は厳しく、同時に、温かく聞こえた。
「本質的には、成長し続けて、チャレンジしてほしいということです」
それがチームとしても個としても、さらなるジャンプアップにつながるのだ。




