[写真]=坂口功将

 一般社団法人SVリーグは10月1日付けで、元女子日本代表の大林素子さんを「SVリーグPRアンバサダー」に任命したことを発表した。これまでもバレーボールの現場で、競技の魅力を発信してきた大林さん。いよいよ開幕がせまる「2024-25 大同生命SVリーグ」での、PRアンバサダーとしての思いを語ってもらった。

――SVリーグPRアンバサダーへの就任おめでとうございます。

大林さん ありがとうございます。これまでは(一社)SVリーグの理事を務めていましたが、9月30日の理事会で体制が変わりまして、それに伴って今回のPRアンバサダー就任が決まったかたちになります。新しい役職に就いたことで、今後もバレーボールを盛り上げていきたい思いでいます。それに私自身は元々、メディアの仕事がメインでしたので、SVリーグ全チームそれに個人的にはVリーグも含めて発信することで盛り上げたいです。

――10月11日のオープニングマッチは即完売、地上波ゴールデンタイム生中継も決まりました。その盛り上がりをどう感じていますか?

大林さん 嬉しい思いと同時に、ほっとしています。リーグとしてもそれだけ仕掛けたいと考えて実行に移して、それに結果が伴ったわけですから。また、ここ数年は日本代表が力をつけていき、バレーボールの人気が高まりました。それなのにリーグ開幕戦が盛り上がらなかったらどうしよう、と不安もありましたので、その点で安心していますね。

 同時に、まだまだこれからだ、という思いは正直持っています。やるべきことはたくさんある。ようやくスタートラインに立てたという具合です。

――SVリーグという国内リーグが装い新たにスタートします

大林さん 実はVリーグの前身である「日本リーグ」(全日本バレーボール選抜男女リーグ)と私は同い年なんです(1967年)。その後、現役選手として日本リーグを経験させていただき、1994/95シーズンにプロ化を掲げて第1回Vリーグが始まりました。世界一のプロリーグを目指してスタートしたわけですが、なかなかうまく運ぶことができなかった。私自身、日本人初のプロ選手としてセリエAにいきましたが、ずっと「日本でトップのリーグ、トップのチームを作り上げてほしい」という思いを抱いていました。

 これまで計画はあって、選手や関係者の思いはあっても、なかなか実現するまでの力がなかったわけですが、今回、これまでの思いと、大河正明チェアマンという新しい風が入ってこられたことによって、踏み出すことができました。イタリアやアメリカなどトップレベルのリーグはありますが、“日本のSVリーグが世界でいちばん”という境地にまで辿り着いてほしい。と期待しています。

――いざSVリーグで選手たちに期待することは何でしょう?

大林さん おそらくリーグの中には、温度差があるチームや選手もいると想像しています。例えば日本代表クラスの選手はSVリーグになって「自分がチームを引っ張っていこう」と感じているでしょうし、一方で「自分のことで精いっぱい」という選手もいるでしょう。また、環境面で以前からそれほど変化していないチームもやはりいると思います。

 ですが、シーズンを通してホーム&アウェイでお互いのことを知っていくうちに、チームや選手たちの中で「やっていこう」という熱や「このままではいけない」という危機感が芽生えるはず。結果を出さなければいけない、自分がやらなければ、と問われる部分がSVリーグにおいてはとても大きい要素ですから。

 バレーボールそのものへの楽しさややりがいと同時に、「やらなければ」という思いが選手たちにとって頑張りにつながることでしょう。これまでにそれがなかったとは決して思いませんし、抱いていたものが1ランク、1ステップ高いレベルで求められる。ですので、選手たち自身も気づくことは多いのではと思います。

――SVリーグを通してバレーボールをまったく知らない方々や子供たちが競技に興味関心を持つきっかけにもなりそうです

大林さん 会場に足を運んでもらいたいですね。やはりテレビで見るのと、生で見るのとでは迫力がまるで違いますから。選手がとんでもなくジャンプする、すごいスパイクを打つのはもちろん、チーム全員でボールを追って一生懸命にプレーする姿は、見る人によってたくさんの感情や思いが呼び起こされると思います。それに、そうしたバレーボールの魅力を見せられる力を今の選手たちは持っています。

 以前と比較することはできませんし、比較するものではありませんが、こうして世界のトップレベルで通用する選手たちがここ数年たくさん出てきて成長したことは、日本のバレーボール自体がより高いレベルになった証しだと感じています。そこに加えて、海外のトップ選手が来日するので、これまで以上に「世界レベルのプレーヤーがそろうリーグが日本で開催される」ことが、SVリーグの魅力。その点を含めて、憧れを抱いてもらえたらベストですね。

――大林さんが現役時代にSVリーグが誕生していたら、喜んでプレーしていましたか?

大林さん めっ…ちゃ、やりたいですね!! もう張り切って参加していたと思います。私自身はプロ選手として活動したいとチームに持ちかけて、第1回Vリーグの記者会見に登壇した翌日に解職処分(解雇)を受けるという経験をしてきましたから。ですが、それもあって海外リーグにも挑戦しましたし、そうした流れやルールの改正も含めて今につながる前例をつくることができた自負はあります。

 また、今は選手たち自身の発信が一つの魅力やコンテンツになっています。私の現役時代は、メディアに出ることや自分を表現することがよしとされない風潮でしたからね。「テレビに出演するくらいなら練習するんだ」「負けた試合のあとにコメントしている場合じゃないだろう」と。そんな時代背景を当事者として経験している私としては、選手たちが自由に発信できる今がとてもうらやましいですし、「いいぞ、どんどんやっていって!!」という思いなんです。

 バレーボールそのものも、昔の6人制と今とではまるで違うスポーツになりました。私自身はほんとうに“別の競技”として捉えて、リポーターなどで伝えることをしてきましたから、今の選手たちへのリスペクトがいちばん先にくるんです。今回はSVリーグのPRアンバサダーになったわけですが、同じバレーボール界に関わる仲間として、同時に“いちばん身近な親戚のおばちゃん”として、ね(笑)。関われることがとてもうれしいです。

――冒頭でSVリーグと併せて、新Vリーグへの思いも口にされました

大林さん SVリーグが華々しく開幕記者会見を実施して、メディア露出もされて、皆さんの目にはSVリーグが大きく映っていることでしょう。それに対して新Vリーグはまだまだ一つずつ発信していく必要があります。そこで私自身はSVリーグのPRアンバサダーという肩書きとはいえ、両リーグのアンバサダー的立場として、ファンの方々とリーグをつなぐ仕事をしていきたいと考えています。

 例えば、新VリーグからSVリーグに移籍する選手もいますし、その逆もいます。今後はカテゴリーを超えた国内移籍も活発化すると思いますし、両リーグをつなげていくための発信はどんどんしていきたい。各チームや各メディアなどあらゆる場所で色々と提案させてもらえたらと思います。