身長205cmの大型アウトサイドヒッターが、この冬、世界を知った。専修大学1年(4月から2年)のマサジェディ翔蓮は、2025-26シーズン、日本代表の大塚達宣も所属するイタリア・セリエAのミラノにシーズン途中から加入し、試合出場も果たした。
父は元イラン代表選手で、2014〜16年に日本代表のコーチも務めたアーマツ・マサジェディ氏。翔蓮も昨年はU19日本代表のキャプテンを務めるなど順調にキャリアを重ねてきたが、まだシニアの日本代表やSVリーグでの経験のない選手が、セリエAにデビューするのは異例のこと。チャンスを掴み飛び込んだ世界最高峰の舞台で、19歳は何を感じたのか。ミラノでインタビューした。
――先発したトレンティーノ戦では、ブロックに捕まったり、イタリア代表のエースでもあるアレッサンドロ・ミキエレット選手のサーブに崩される場面もありましたが、世界のトップ選手たちと対峙してどんなことを感じましたか。
マサジェディ たぶん6本ぐらいシャットを食らいましたし、ミキエレット選手のサーブを受けて、エースは取られなかったものの、ダイレクトで返してしまったり、崩されたり。やっぱり一番「うわ!」となったのは、相手のサーブの威力と、ブロックの高さ、それとスパイクの打点の高さでした。特にライトの、バックアタックなのに、ブロックの上から打たれた時は、「え?今俺上から打たれた?」と、かなり衝撃を受けました。大学では、「俺は上から抜かれないから、俺の(ブロックの)後ろには入らなくていい」というふうに信頼されていたのに、イタリアでは、上から普通にバコバコ打たれて、結構ショックでした。
最初は「やってやるぞ!」という気持ちが強かったんですけど、試合が進むにつれ、サーブに崩されたり、スパイクが決まらなかったりして。ブロックを抜けても普通にディグを上げられて、気持ち的にガクンと下がってしまった。1セット目の終盤、後衛でレシーバーと交代してベンチに下がった時に、「うわぁ、俺って全然まだまだなんだ」って、試合中なのに考えてしまいました。
でも、そうしてモヤモヤして、試合に影響してしまったらどうしようもない。自分が入ろうが誰が入ろうが、負けたらミラノの負けになるじゃないですか。だから何がなんでも勝たなきゃいけないって、大塚さんも言ってくださったので、2セット目はなんだか吹っ切れて、逆に何も考えずにプレーしていたような気がします。
――タイムアウト中は大塚選手がずっと隣に寄り添っていましたね。
マサジェディ ずっと大塚さんがいてくれたので、「今なんて言いました?」と聞いたり、自分が水分補給中には「今監督がこう言ったから、次はこうしないといけないよ」と教えてくれたり、ずっとサポートしてくれていました。本当に、お兄ちゃんのような存在です(笑)。

――トレンティーノ戦で現時点での力の差を感じて以降、どんなものを身につけたいと考えながら過ごしていますか。
マサジェディ 今は怪我をしていた選手も戻ってきて、自分が試合でコートに入るのは難しくなっているんですけど、その中でも自分が出た時には、何かしら爪痕を残せるようなプレーをしたいと思っています。例えばサーブ1本なら、サービスエースを取るとか、相手を崩してブレイクを取って出ていくとか、そんな選手になれればと思って、今シーズンやっています。
――改めて、ご自身が武器にしていかなければいけないと感じたものは。
マサジェディ やっぱりスパイクで、パワーを活かしたプレーですかね。こちらでは結構ウエイトトレーニングをするので筋肉がついたこともあって、練習中もサーブでエースを取ったり、崩せたりするので、そういうサーブや攻撃面はもっと磨いていきたいと思います。
――言葉のほうは?
マサジェディ イタリア行きは急に決まったので、イタリア語は全然勉強せずに来てしまいましたし、英語に関しても、学校で習ったぐらいの日常会話程度しかできません。自分はペルシャ語なら話せるんですけど(苦笑)。今、絶賛イタリア語勉強中です。
――英語よりイタリア語なんですね。
マサジェディ 大塚さんに聞いたんですよ。日本に帰った後も含めて「どっちを勉強するべきですか?」って。そうしたら大塚さんは、「イタリア語を勧める」って。「なんでですか?」と聞いたら、「バレー界の第一言語はイタリア語じゃないかと思う」という話をされていました。日本代表の(ロラン・)ティリ監督ともイタリア語で話しているし、基本的にトップ選手はイタリア語を話せるから、最初は英語よりイタリア語がいいんじゃないか、と。
――大塚選手は非常に頼りになる存在だと思いますが、頼りすぎないように、という意識も?
マサジェディ もちろんあります。頼りすぎてしまったら、自分は、大塚さんがいるから勉強しなくていいや、というふうに、思っていないつもりでも、無意識にそうなってしまうかもしれないと懸念しているので。大塚さんとは一度この話をして、「なるべく頼らないように頑張ります」とボソッと言ったら、「わからなかった時は聞いてくれたら、それは全然問題ないし、まだ来たばかりなのでわからなくて当たり前だから」と言ってくれました。だから頼るところは頼りながら、自分で勉強しないといけないところ、話さなきゃいけないところは自分でやるようにしています。

――ミラノ・コルティナ五輪は観戦しましたか?
マサジェディ アイスホッケーを大塚さんと一緒に見にいかせてもらいました。非常に面白かったです。展開がすごく早くて、気づいたら、こっちにあったパックがもう敵陣のほうにあったり。バレーボールはラリーが終わったら次のサーブまでに間があるじゃないですか。1回深呼吸できるんですけど、アイスホッケーは永遠にラリーが続いているような感じでしたね。息をするのも忘れるぐらいに見入って、気づいたら第一ピリオドが終わっていました。
――ご自身もオリンピックに出場することを目指していますか。
マサジェディ はい、もちろん。ロス(ロサンゼルス五輪)を目指して頑張っているんですけど、まずはA代表の選考に入れるような力をつけていきたいですし、ロスでは、パリ五輪の時の(甲斐)優斗さんのようにサーブで貢献する形でも、12人に選ばれるような力をつけていけたらなと思っています。
ミラノ五輪を見てすごく刺激になりましたし、東京、パリと2度オリンピックに出ている大塚さんの話も聞かせてもらって、緊張感だったり、自分もそういう体験をしてみたいとより強く思うようになりました。
4月からはまた大学生活に戻っていくが、環境が変わっても、ミラノで得た収穫を継続的な成長に繋げ、周囲に還元していく。




