「2024-25 大同生命SVリーグ男子」において開幕節こそ連敗スタートとなったものの、第2節からは5連勝。そのなかには前年度リーグ王者のサントリーサンバーズ大阪から挙げた金星も含まれる。今季いよいよリーグの上位へ名乗り出る東京グレートベアーズに加わった武器の一つが、大竹壱青のサーブだ。
3本、3本、4本、2本。
ずばりこれは大竹が開幕戦からの4試合で叩き出した、サービスエースの数である。第2節を終えて一試合平均3本。翌第3節からは1本にとどまる試合も増えたが、最終的にはなんと7試合連続で大竹はサービスエースを奪っていた。
途切れたのは、11月4日(月・振)のサントリー大阪戦。前日に金星を上げて歓喜し、対照的にこの日はストレートで敗れたとあって、悔しさを浮かべつつも「今日の相手のようにパス(サーブレシーブ)がいいチームに対して、攻めたサーブを打っても返されると僕もフラストレーションがたまってくるので。そこは難しくもありますが、どんな相手に対してもサーブで攻めきることができれば、チームとしても戦い方が楽になるかなと思います」という言葉は頼もしかった。
それにしても実に効果的なサーブを放っている。相手レシーバーを崩し、エースとならなくても、攻撃の起点をつくらせない。第4節を終えて(11/4終了時点)、エースすなわち“得点”となったサーブは17本、さらに“効果”を記録した71本はいずれもリーグトップの数字である。
大竹といえば韓国でプレーしていた昨季に続いて今季もポジションはミドルブロッカーだが、長らくはオポジットを務めていた。売りはダイナミックなアタックとサーブ。すさまじい打球が相手コートに放たれることがあったが、その一方で、いかんせんミスも多かった。ときには、放ったサーブの打球がそり上がるような弧を描き、正面つまり逆サイドのエンドライン後方の客席に“スタンドイン”したこともあった。
それが今や、どうだ。放たれた打球は、ネットを越えるとフロアに向かって鋭く落ちていく。その落差と、打球速度も相まって、相手レシーバーを苦しめる。
10月12日のシーズン開幕戦、大竹は3本のサービスエースを奪ってみせた。試合後、ふと会場で出くわすと、思わず言葉が出た。
サーブ、いい感じやね。
そう投げかけると、大竹は嬉しげに、それでいてどこか照れくさそうな表情を浮かべた。
「トスに対して、自分自身でうまくカバーというか、コントロールできるようになったんですよ」
いいサーブを打つためには、ボールをあげるトスの正確さが必要不可欠。それが難しくもあるのだが、たとえトスが多少乱れようとも、自分なりにうまくボールを捉えることができるようになったというのだ。
加えて、フォームやマインドの変化も要因にある。
「(昨季の)韓国でプレーしていたときに、チームの監督からずっと『肘を上げるんだ』と言われていたんです。それで肘を上げて打つようになってから、うまくサーブが入るようになりました。そのときは特に攻めたサーブを打っていたわけではないのですが、日本に帰ってきてからも引き続き“高い打点から打つ”ことを意識していたら、自然といい感覚をつかめたんです」
取材する側としては、どうしてよくなったかの原因や背景を探りたくなるものだが、大竹自身は「これ、言いたくないんですよ。恥ずかしいので」と笑う。それは過去の自分からの違いを、ほかでもない自分がいちばんに感じているからでもあるだろう。
「僕のことを以前から見てくれていた方々やファンは、『大竹壱青=ミスの多い選手』という印象だと思うので(笑)。そのイメージは変えることができているのではないかと思いますね」
もっとも、大竹の“イメチェン”はチームメートたちにもいい影響を与えている。リーグきってのサーバーである柳田将洋はこのように語る。
「ミドルブロッカーとして彼は今、サーブでもチームを手助けしてくれる存在になっています。それ自体は決して簡単なことではないと思いますし、彼がほんとうに日頃から、チームの全体練習を終えたあとも個別でサーブに取り組んでいる姿を見てきました。彼もキャリアを重ねて、いい年齢(28歳)になってきているとはいえ、それでも素直な気持ちでいろんな人に教わって成長しているところは、僕も見習わなければ」
振り返れば、シーズン前の記者会見で大竹は「ミドルブロッカーとして、まだまだブロックやクイックが強みだ、なんて言えないので(笑)。オポジットの頃とやるべきことは変わりませんが、その中でもサーブは僕の中で武器ではないかと。自信を持っています」とどうやら手応えを匂わせていた。
確かに、11月4日のサントリー大阪戦。試合は第3セット、相手のマッチポイントで大竹にサーブ順が回ってきて、結果はボールアウトでゲームセットに。ただし以前とは違う期待感を、エンドラインに立った大竹に抱いた。ブレイクしてもおかしくないな、と。当の本人の胸中は。
「きたかぁ、と思いましたけどね。感触は悪くなかったのですが、少し強くボールを押してしまったな、というのはありました。ああいう場面での練習も足りていないですし、あそこで決め切ることも大事なので。結果はダメでしたけれど、正確性を上げていきたいと考えています」
サーブの“効果”の本数でいえば、自身のキャリアハイである2018-19シーズンの118本(32試合を通して)を軽々と上回るペースだ。“得点”の数だって、更新まったなし。
大竹のサーブに安定感と勝負強さが増すことで、東京GBの躍進はさらに加速しそうである。