いよいよ26日に開幕を迎えるパリ2024オリンピック(パリ五輪)。FIVBランキング2位のバレーボール男子日本代表はポット1に入り、抽選の結果、アメリカ男子代表、アルゼンチン男子代表、ドイツ男子代表と同居するグループCに入った。
予選ラウンドでは、同グループの相手と1回総当たりで対戦し、各組の上位2カ国と3位の中から成績上位2カ国が決勝トーナメントに進出する。52年ぶりのオリンピックメダル獲得を目指す日本にとってはまず越えなければいけない壁だ。
その予選ラウンドの初戦で対戦するのがFIVBランキング11位のドイツ男子代表。今回はそのドイツについて解説していく。
ドイツはサーブとディフェンスが強みのチームだ。強烈でミスが少ないジャンプサーブで相手を崩し、強靭で高いブロックと粘り強いレシーブで繋ぎ、スパイカーとセッター共にハイレベルで万遍なく攻撃してくるのが特徴だ。
攻守共に隙が少ないチームで、FIVBランキングは11位ながら、間違いなくオリンピックのメダル候補の一国だ。
近年のドイツの成績を見ると、2023年のパリ五輪予選(OQT)では全勝でオリンピックの切符を掴んだ。全試合3-1以下に抑えて、同組のイタリア男子代表、ブラジル男子代表という強豪国を抑えての1位通過であり、その力は本物だ。
今年のネーションズリーグ(VNL)では、すでにオリンピックへの切符を手にしていたことを活かし、勝つことに拘らずチームのコンディションの調整に充てていた。
特に、オリンピックで対戦の可能性がある国に対しては、主力オポジット(OP)のジェルジ・グロゼルのデータを取られないように温存。福岡で行われた日本対ドイツの試合もグロゼルを起用せず、アウトサイドヒッター(OH)3人の態勢で挑んで来た。結果は3-2で日本が勝利したものの、万全とは言えないもののフルメンバーで臨んだ日本を、メンバーを落としたドイツがフルセットまで追い詰めた試合になった。
試合の内容は、ドイツのサーブが良く走っていて、世界トップクラスの守備力を誇る日本から10本のサービスエースを奪うことに。そのドイツのサーブについて、日本のリベロを務めた山本智大も試合後のフラッシュインタビューで「今までで受けてきた中で敵のサーブが1番良かった試合だった」とコメントするほど強力だった。
逆に、ドイツは日本の強烈なサーブを綺麗にコートにキープし続け、日本からの被サービスエースを3本に抑える結果に。ドイツの強みであるサーブと、ディフェンス力が存分に発揮された試合だった。
その後、ドイツはVNLファイナルラウンドにも出場せず、コンディションの調整を優先。オリンピック前最後の実戦機会となる親善試合では、ドイツは日本B代表、エジプト男子代表には勝利したが、スロベニア男子代表、ポーランド男子代表、ブラジル男子代表の強豪国にはいずれもフルセットで負けている。しかし、強豪国すべてをフルセットに追い詰めたということは、ドイツがメダル候補の一角である証明とも言えるだろう。
そんなドイツの注目選手は、やはりグロゼルだ。グロゼルを一言で表すなら右利きの王道OPであり、力と高さで全てをねじ伏せる圧倒的なプレースタイルからバレー界の「キング」の愛称で親しまれている。
グロゼルはドイツ代表だが出身はハンガリーで、東レアローズ(東レアローズ静岡)で活躍したパダル・クリスティアンと同郷だ。筆者は両選手のプレーを生観戦したことがあるのだが、筋骨隆々の体から繰り出される破壊力抜群のスパイクと、ボールを叩き潰さんばかりのジャンプサーブはそっくりだった。
実は、グロゼルは過去二度、ドイツ代表からの引退を発表しているのだが、去年のOQTで復帰を果たした。2023年のドイツはOQTの前に行われたVNLを3勝9敗の11位で終え、強豪国とは呼べない立ち位置にいたのだが、OQTでは復帰したグロゼルが1試合当たりの平均得点22得点の大活躍でドイツ代表は7戦全勝。ドイツを一気に強豪国に押し上げた。
今年のVNLでは、オリンピックに向けて対戦国にデータを取らせないためにほとんどの試合リベロ登録だったが、オリンピック前最後の実戦機会である親善試合には出場している。
親善試合最後のブラジルとの2戦は、グロゼル選手は2戦ともにチーム最多得点の活躍で調子を上げてきている。
オリンピックの開幕戦では、キングの攻撃力と日本の守備力がのどちらが勝るかも大きなポイントとなってくるだろう。
その日本対ドイツの試合は、現地時間の朝9時から行われる。両国共に早起きに慣れて、コンディションを整えられるかが1つのキーとなるだろう。
ビッグマッチと言っても過言ではないこのカード。全世界が注目するであろうオリンピック開幕戦は必見だ。