ちょうど1年前の2月のことだった。イタリアで開催されたユース世代の国際大会「Nations Winter Cup」で全国中学生選抜男子が男子U17イタリア代表と対戦。その試合後、イタリアチームのベンチでコーチをしていた年配の男性が、取材をしていた筆者に話しかけてきた。
「次のシーズンは息子が日本のトウレ・アローズでプレーするんだ。よろしくね」
男性が差し示したスマートフォンの画面上には、英語で「TORAY ARROWS」と「FRANCESCO RECINE」の文字が映っている。フランチェスコ・レチネといえば、身長183㎝と決して高くはないものの、イタリア代表では周りに200㎝前後の選手がごろごろと並ぶ中、堂々とアウトサイドヒッターで勝負している“小さな巨人”だ。今季からSVリーグ男子の東レアローズ静岡に加入した。
その彼を息子に持つ男性は、見るからにバレーボール経験者だと想像できる長身にきれいな白髪が目を引く。名前はステファノ・レチネ。現役時代は、1980年代から90年代にかけて国際大会での高い地位を確立した男子イタリア代表の一員に名前を連ねたプレーヤーだった。

この時はイタリアチームのコーチを務めていたが、実際の仕事は代理人やマネージメント業に勤しんでいるという。そのステファノ氏が昨年末に来日し、令和6年度天皇杯 全日本バレーボール選手権大会を会場で観戦していた。再会の記念に、日本でプレーする息子の姿やその経歴について話を聞いた。