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 東京グレートベアーズが、毎年着実に塗り替えてきたチームの歴史に大きな一歩を刻んだ。

 今季はSVリーグのレギュラーシーズンを5位で終え、チーム発足3季目にして初めてチャンピオンシップ(プレーオフ)進出を果たした。

 チャンピオンシップ準々決勝の相手は、レギュラーシーズン4位のジェイテクトSTINGS愛知。

 2戦先勝方式で行われた準々決勝の第1戦、第1セットは、初めてプレーオフを経験する選手が多い東京GBに硬さが出た。一方のSTINGS愛知は、ミハウ・ゴゴール監督が「ようやく、ようやく全員揃った」と語ったように、レギュラーシーズンでケガが相次いだ選手たちが回復。日本代表の関田誠大、髙橋健太郎、宮浦健人、小川智大、村山豪に、アメリカ代表トリー・デファルコ、ブラジル代表リカルド・ルカレッリ・ソウザというそうそうたるメンバーが結集し、圧倒した。

 第2セットは東京GBも立て直し、大竹壱青、伊藤吏玖のミドルブロッカー2人のサーブを起点に一時はリードを奪うが、終盤逆転され、デュースの末に競り負けた。第3セットはクイックで攻撃のリズムを作り、後藤陸翔のスパイクでブレイクのチャンスをものにしてセットを奪ったが、第4セットは終盤競り負け、セットカウント1-3で敗れた。

 入団2年目のセッター今橋祐希は「チームが若い分、僕もそうですけど、焦った時に地に足がついていない部分があった」と立ち上がりを悔やんだ。

 主将の古賀は「チャンピオンシップということで、いろんなことが起きるスタートだと思ったんですけど、やはりジェイテクトさんは場数を踏んでいる分、いいスタートを切って、会場の雰囲気も盛り上がっていたので、僕らとしては1セット目、何もできずに終わった。でもそこからはいつもの調子に戻って、サーブを起点に自分たちらしいバレーを展開できたので、明日また違った展開に持っていけると思う。今日の負けを明日にしっかり繋げたい」とプラス材料を見出し前を向いた。

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 その言葉通り、第2戦の第1セットは、リードされながらも食らいつき、終盤、粘り強い守備やオポジットのマチェイ・ムザイの得点でデュースに持ち込む。27-26の場面でリリーフサーバーとして起用された深津旭弘が放った鋭いサーブは、相手コートの角へ伸び、ライン上ギリギリにノータッチで突き刺さり28-26。前日の課題だった終盤の競り合いを、ベテランの一刺しで制した。

 絶好のスタートを切ったが、今のSTINGS愛知は揺らがなかった。セッターの関田がこの日はクイックも多用し、5人のスパイカーの力をバランスよく引き出し主導権を握る。相手の流れを跳ね返そうと、第3セットは東京GBの大竹がブロック、クイック、連続サービスエースで得点を重ねてリードを奪う。

 この2戦好調で、2試合で5本のサービスエースとブロックポイントを奪い、第2戦では90%というアタック決定率を残したミドルブロッカーの大竹は、パナソニック(現・大阪ブルテオン)時代にプレーオフを経験していたことが活きたと語る。

「その時はオポジットでしたけど経験していて、プレーオフはレギュラーシーズンとは違うと僕はわかっていたので、何か少しでもチームに勢いをつけるため、勝つために、今自分が持っている持ち味をどう爆発させるかというのを考えながらこの2週間練習してきました。コンディションの整え方も、気持ちの入れ方も。サーブだったら、どうしたらスピードが出て強く打てるかを考えて、トスを高く上げて溜めて打つ、というのをやってきた。それらがうまく出せたんじゃないかと思います」

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 だが、東京GBはサイドアウトが行き詰まり、終盤に逆転を許す。3セットを連取され、第2戦も1-3で敗戦。準々決勝敗退が決まった。

 ルーキーながら主力としてシーズンを戦い抜いたアウトサイドの後藤は、試合後、泣き崩れた。拭っても拭っても涙があふれ出てくる。

 試合後の言葉からは自身への怒りがうかがえた。

「このメンバーで戦えるのは今シーズンだけですし、引退を決めている選手もいた。その選手が最後出られない中、その選手のためにも勝ちたかったですし、自分を信じてトスを上げてくれる、繋いでくれる選手のためにももっとポイントに繋げたり、うまくできたところは何本もあったはず」

 この日はアタック決定率を26.3%に抑えられ、計7得点に終わっていた。

「もちろん相手に対策はされるので、それに対してもっと試合中に冷静になれればよかったんですが。自分では言いたくないんですけど、経験の少なさというか……。もっといろんな選択肢を持って、冷静な判断でやれた部分があったので、そこが一番、悔しい」

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 本来、攻撃の選択肢の多さは後藤の強みだが、「自分にとって初めてのチャンピオンシップで、何がなんでも勝ちたいという気持ちが、ちょっと裏目に出たんじゃないかなと感じています。ブロックが2、3枚ついて、いつもならリバウンドをもらっているようなボールでも、焦って点を取りに行っちゃって、相手にいいワンタッチを取られて、よくない展開を何度も作ってしまった」と悔やむ。

「そこは一発勝負の試合で自分が学ぶべきところだし、ジェイテクトさんのほうが、そういうことをわかっている選手が多かった。自分もそういった選手になって、こういうチャンピオンシップの舞台にもう一回戻ってきて、チームを勝たせられる選手になりたい」

 背中から湯気が出そうなほどの悔しさが伝わってきたが、そんな中でも自分の思いを明瞭に言葉にする姿が、さらなる飛躍を予感させる。

 一方、主将の古賀は清々しい表情だった。

「すべて出し切ったので、悔いはないです。ジェイテクトさんのほうが力が上だった。結果がすべてですけど、僕たちが出せるすべてを出した。最後の最後に、本当にいいチームになったなというのを感じながら試合できたのが僕としては嬉しかった。バレーボールなので流れがいい時、悪い時があるんですけど、その悪い時にも、チームが同じ方向を向いて戦うことをやめていなかった。いい時は得点が勝手に入ってくるんですけど、悪い時にこそチームの強さというのが出る。最後、どんな難しい時もチーム一丸となって、コート内だけじゃなくコート外も含めて戦っていたので、いいチームで最後戦えたなと思います。ファンの皆様にもそれが伝わってくれたら、シーズンを通していろんなことがありましたけど、チーム全員で戦い抜いた意味があります」

 ただもちろん満足しているわけではない。

「グレートベアーズというクラブは、もっとこれからデカくなっていきますので、このチームが作った今シーズンの記録をベースに、また来シーズン、新しい形で積み上げていきたいなと思います」

 今季は目標に掲げていたホームゲーム来場者数10万人を突破した。チャンピオンシップはアウェイでの開催だったが、STINGS愛知のホーム・岡崎中央総合公園武道館には、ピンクのユニフォームを身に纏ったファンが大勢駆けつけ声援を送った。

 多くのファンに愛され、なおかつ強いチームに。その理想への挑戦はこれからも続く。