[写真]=古川剛伊

 5月22日に2025年度のキックオフ会見を開いた女子日本代表。ここに始まった新たなオリンピックサイクルへ思いを強くする者、予選ラウンド敗退に終わった昨年のパリ五輪の雪辱を期す者、そして初めて日の丸のユニフォームに袖を通した者…様々な顔ぶれが壇上に並んだ。その中で、SAGA久光スプリングスのミドルブロッカー、荒木彩花は日本代表における自身の立ち位置の変化を実感していた。

 こうした記者会見には「いやいや、まったく慣れないです」と困った表情を浮かべる荒木だが、今の日本バレーボール界においては指折りのミドルブロッカーである。昨年は自身初の五輪出場を果たしたが、「なおさら自分の技術がまだまだ世界レベルではないことを痛感しましたし、国内で通用しても意味がないとあらためて感じた大会でした。五輪という4年に1度の大会で成績を残してこそ、トップという自覚が生まれてくると思いますから。経験したとはいえ、自分はまだまだです」と野心をたぎらせる。

 そうして自身2度目の五輪へ一歩を踏み出したわけだが、そこでは新たな挑戦が待っていた。

「監督も新しく替わって、メンバーも半分以上が変わりました。そのなかで自分よりも年下の選手が増えたと実感しますね。以前だと、各大会の最終メンバーでいえば私が最年少としてやらせてもらっていました。そこではいつも先輩たちに頼ってプレーしていましたから…」

「その点において今年はある意味、頼ってもらえるような存在にならなければと。最終的にはチームのためにいちばん動けるような選手になることを目指して、いろんなことに挑戦していきたいと思っています」

 荒木自身、「年下の子との接し方がそれほど得意ではないんですけど」と明かすが、初選出の秋本美空や河俣心海(ともにヴィクトリーナ姫路)、またチームメートの北窓絢音や深澤めぐみといったフレッシュな面々が緊張を隠せずにいると、動かずにはいられない。

「常に緊張している状態だと思いますから。そこで、少しふざけた感じで声をかけたり。初選出の選手はどこか天然っぽい感じの子が多いので、ツッコミをいれたりするなど、ボケをボケのまま流さないようにする、という具合です。それで、あの子たちが和んでいるかは分からないですけどね(笑)」

 振り返れば自身が初めてシニアの代表に加わったときもそうだった。試合ではとことん緊張する性分であり、併せて「コミュニケーションが苦手なタイプ」とは自覚するところ。そこではアンダーエイジカテゴリー日本代表の頃から接点のあった林琴奈(大阪マーヴェラス)や石川真佑(ノヴァーラ〔イタリア〕)がそばにいてくれたことで精神的に救われた経験があった。

 キャリアを重ねるごとに、必然的に年齢も上がるわけだが、“大人の階段”を上っているのはプレーに関してもそう。今年度の代表合宿に参加し、荒木はふと自身の成長を感じたという。

「去年と比べて、冷静さが身についたと思います。例えばブロックに関して言えば、これまでの私のプレースタイルとアクバシュ監督の求めるスタイルが真逆でもあるのですが、おそらく以前だったら『うわ、やばい』という思考になっていたはず。ですが、今はそうした違いを受け止めて、『自分の引き出しが増える』とポジティブに考えられるようになっています。何事にもトライしようという気持ちになれているので、去年以上に成長しながら取り組めています。

「できることが少しずつでも増えてきているので、まずはネーションズリーグで最終週までメンバーに残れたら、それこそ今年の代表活動が終わる4ヵ月後でも、自分の中で大きな変化があると思います。そうすれば、例えば自分のチームに戻ってセッターとコンビを合わせた際にも、攻撃バリエーションも増やせるのかなと。それがとても楽しみな部分ですね」

 自分はまだまだ。そう思い知らされて始まった2028年への旅路は、成長できる喜びとともに、ここから次なる軌跡を描いていく。