[写真]=須田康暉

 登壇した27名の選手がマイクを持ち、それぞれがひと言ずつ、抱負を語る。

 選手の前には多くのテレビカメラが並び、前列にはカメラを手にしたフォトグラファーが陣取る。高橋慶帆に順番が回ると、より多くのフラッシュ音が響いたが、臆することなく21歳のオポジットは笑みを携えた柔らかな表情で「持ち前の高さを活かしてチームに貢献したい」と抱負を述べた。

 習志野高在学時から350センチを超える最高到達点の高さと、端正なルックスも相まって注目を集めた。法政大学に進学後も2023年には日本代表へ初選出され、アジア競技大会に出場。大学の活動だけに留まらず、日本バレーボール協会の強化指定選手として2023-24シーズンはジェイテクトSTINGS(現・ジェイテクトSTINGS愛知)へ、さらに2024-25シーズンはフランスリーグのパリ・バレーで経験を重ねた。

 日々トップ選手と練習や試合で渡り合う。吸収の速い時期にさまざまな経験を重ねる。選手として望むべき環境に恵まれた一方で、オフシーズンがあるか、といえばほぼない。

「休む時期がなかったのは確かなんですけど、若さゆえ、動けるのは動ける(笑)。もっとウェイトトレーニングに力を入れたり、食事も工夫して身体づくりをできればよかったんですけど、そこまで管理するのは難しかった、というのが正直な感想でもありました」

 かかった負荷の代償も身体に現れた。B代表での日本代表シーズンを終え、パリへ渡る直前の昨年9月、もともと痛みがあった腰の状態が悪化した。授業との兼ね合いもあり、一度パリへ渡ってからすぐ帰国し、2週間ほど日本で過ごした後再び渡欧する予定だったが、腰の状態を鑑みて渡欧を先延ばし、約1カ月はボールに触れないどころかほぼ運動もできず治療優先の日々を過ごす中、11月になってようやくリハビリへ移行、競技復帰と同時にフォーム改善にも着手した。

 高さが武器、という高橋のスパイクフォームは、高い打点でボールを捉えることができる一方で、スパイクヒットをしてから身体をそのまま折り曲げるようにフィニッシュするため、腰に負担がかかる。「同じフォームでやり続ければケガを再発してしまう」というリスクを回避するためにリハビリとフォーム改善に取り組み、12月にパリへ。言語や生活環境が異なる中でのリハビリは「大変なことも多かった」と振り返るが、徐々にウェイトトレーニングのメニューも増え、身体つきや身体の使い方の変化を実感。徐々にプレー時間も長くなり、最終節の2戦はスタメン出場も果たした。

 腰痛からのスタートで苦しい時間を過ごしながらも、欧州リーグで試合に出場する。それだけでも十分な成果ではあるが、高橋の自己評価は違う。

「やっぱり選手として一番は、試合に出て結果を残すこと。それが自分たちに求められていることであって、注目されるのも応援してもらえるのも結果が伴ってから。自分はまだそこまで行けていない、と実感しました」

 日本代表選手として初の大舞台となった、2023年のアジア競技大会。シーズン発足当初、岩手で行われたドイツとの親善試合では、オポジットの二番手という立ち位置にいた。だがその後の海外遠征で一気に化けた。共に試合、合宿を重ねてきたB代表の選手が「伸び方がすごい」「一気に成長した」と口を揃えたように、アジア競技大会を前に急成長を遂げた。

 当時を振り返り、高橋が口にするのは感謝の言葉だ。

「大学にいる時とは違う環境、素晴らしい選手がたくさんいる中で一緒にプレーや生活ができたこと。プレーのみならず価値観や、アスリートとしての生活の仕方、在り方を大学生のうちに間近で感じることができたのはすごく大きいことでした。そのおかげで自分がこれからどうなっていきたいのか。どんな理想を追うべきかというのが明確になった。周りの選手の方々はもちろん、スタッフの支えがあってこそ成長できたので、自分を代表に選んで、成長させて下さった皆さんにはすごく感謝しています。だからこそ成長しなきゃいけない、と責任を持ちながら取り組んできました」

 1人の選手として成長を遂げ、結果を残す。だがそれでも、先行するのは活躍ぶりよりもビジュアルやルックスの話題ばかり。高橋自身も「注目されることはありがたいこと」とはいえ、すべて本意だったかと言えば決してそうではなかったはずだ。

「メディアが押し上げて下さる力はもちろん大事なことで、バレーボールが人気のある、夢のあるスポーツになるためには必要なことだと思います。でも、自分のプレーが伴っていないと、自分自身としては正直、注目していただけたとしてもすべて飲み込むことはできない。プレッシャーもある中で自分のやるべきことを理解して、アスリートとして結果を求めて追及する。うまくいかない、コントロールするのが難しいこともありますけど、やるしかないと思うので。ほんとに、やるしかないですよね」

 二度、自らに言い聞かせるように“やるしかない”と繰り返す。そして今、大きなチャンスを迎えようとしている。

 日本代表にとってスタートを切るネーションズリーグ。コンディション調整や休養で中国、ブルガリアラウンドは昨年までとは大きく異なるメンバーで戦う可能性も高く、高橋に出場機会が巡ってくるチャンスも大いにあるはずだ。(10日に発表された中国ラウンドメンバーには高橋も入った)

 周囲からの期待は高まる。だが高橋自身は、ブレることなく自身の「やるべきこと」を貫く所存だ。

「西田(有志)選手が休むからチャンスがある、と考える人もいるかもしれないですけど、他の選手がどうだから自分がこうなる、という考えではなく、どんな状況でも自分がどう成長していくか。自分の理想像を追い求めていくのが第一だと思っているし、誰かと比較するのではなく、昨日の自分から今日の自分がどれだけ変われるか。もちろんチャンスがあればつかみにいきますし、限られた中で1日1日を大切にして、まずは目の前の今日、そして今日より明日。目の前のことにフォーカスを当てて、ステップアップすることを第一に考えて頑張っていきたいです」

 ただひたすら貪欲に、結果だけを追い求めていく。

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この記事を書いたのは

田中夕子

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