8月28日、滋賀県大津市で「みんなでつなげ。(夢を、元気を、笑顔を、未来をつなげ。)」が、大津市を本拠地とするSVリーグの東レアローズ滋賀の主催、SVリーグのタイトルパートナーである大同生命保険株式会社(以下大同生命という)の共催で行われた。
イベントには、地元中小企業・個人事業所の方が約80名参加。さらに、東レ滋賀でプレー経験もある元女子日本代表の大山加奈さんが司会として登場したほか、東レ滋賀から深澤つぐみ、青柳京古、中島未来も参加し会場を盛り上げた。
まず、イベントの前には大同生命と滋賀県との中小企業振興、スポーツ・文化の振興、健康増進等8分野で包括的連携協定を結ぶ締結式が行われ、イベントの冒頭では滋賀県の岸本織江副知事が挨拶。9月から10月にかけて開催される、わたSHIGA輝く国スポ・障スポにも触れ、「滋賀県のスポーツ振興に継続的に盛り上げていただくということも期待をしております」と呼びかけた。

そして、東レアローズ株式会社取締役の矢島久徳氏が登壇。「スポーツチームとの連携」と題し、東レ滋賀の現状とチームが掲げる「地域接着」への取り組みを説明した。昨シーズンのホームゲーム入場者数が前シーズン比約6.8倍に増加し、SVリーグ女子のチームの中で第3位を記録したことを報告しつつ、「本当にまだまだ」とさらなる向上を目指す姿勢を示した。
具体的な取り組みとして、各市町とのパートナーシップ協定締結を進め、「滋賀のチームとして地域全体でチームを作っていきたい」というビジョンを表明。プロモーション活動では、駅での広告やラッピングバス運行、地元情報誌への掲載を通じ、「滋賀県内どこにでもアローズがある」というコンセプトで認知度向上を図っているという。
また、2025-26シーズンからのホームゲーム試合開始時間を1時間遅らせる試みを紹介。14時5分から15時5分試合開始とすることで、「試合後に近隣の飲食店に入るとか、そういったところに繋がって地域にお金が落ちるようになればいい」と、地域経済への貢献を視野に入れた施策であることを説明した。
講演の終盤では、企業が直面する人材確保や認知度向上といった課題に対し、「スポーツチームとの連携が大きな課題を解決する可能性を秘めている」と提言。共創パートナーシップを通じて企業とチームが共に同じ地域で発展する相乗効果をもたらす関係構築を目指し、スポーツが地域活性化と子どもたちの夢を育む「みらいへの礎」となるビジョンを示して講演を締めくくった。

さらに、SVリーグの大河正明チェアマンも登壇し、「これからのコミュニティ」をテーマに、スポーツチームが地域コミュニティのハブとなる可能性を力説した。
大河氏は、海外サッカーにおける企業交流ラウンジや、埼玉・広島の「スポーツビジネスネットワーク」の事例を挙げ、スポーツチームが企業のビジネスマッチングや地域ネットワーク構築に貢献していることを紹介した。
特に強調したのは、東レ滋賀の「資産の解放」という提案。同じSVリーグ女子のSAGA久光スプリングスの「サロンパスアリーナ」の例を挙げ、「自分たちの練習だけではなく、地域の会社や、学校のレクレーション、運動会、コンサートや展示会など様々なイベントで利用が可能で、地域に開放している」と説明し、アリーナやトレーニングルーム、コミュニティルームを地域に開放することで、チーム施設が地域コミュニティ形成の中心となり得ると述べた。
講演の最後には、市民が自らの街や地域に対して抱く「シビックプライド」の醸成についても力説。「サロンパスアリーナ」の事例を通じて、「何よりも代えがたいことは県民が自信を持ったこと。子供たちが『佐賀最高』と盛り上がっている」と、経済効果を超えた地域の誇りの創出にスポーツが貢献することを強調した。

イベントの最後にはモデレーターに大山さんを迎えて東レ滋賀の3選手とのトークセッションが行われ、地元滋賀への愛とチームへの熱い思いが語られた。
選手たちはまず、滋賀での生活について楽しげに紹介。中島は「私は滋賀10年目。お酒が大好きで石山商店街近くに飲みに行くことが多いんですけど、お店の方だったり、そこにいるファンの方とお酒を一緒に飲みながら過ごすことがあってすごく楽しい」と、地元でのアットホームな交流エピソードを披露。これには大山さんも「石山駅周辺の居酒屋さんに行けば、中島選手とお酒が飲めるっていうことですか」と笑顔で問いかけ、会場を沸かせた。青柳は「琵琶湖テラスのシーズン券を持ってます」とまさかの告白で休日の過ごし方を明かすと、大山さんも驚きつつ「何があるんですか」と興味津々。深澤は「琵琶湖周辺を散歩したり、インスタグラムで調べて美味しそうだなと思ったお店に行ったりとか」と、等身大の楽しみ方を語っていた。
さらに愛されるチームになるための今後の展望については、深澤が「滋賀県の、例えば大津市民の方を対象にした公開練習で、試合以外の姿を見せることでより身近に感じてもらい、試合観戦へのハードルを下げたい」と提案した。青柳は「石山商店街や大津の町で食べ歩きロケみたいなことをしたい」と、地元飲食店との連携を通じた地域活性化を提案し、中島は「石山を東レアローズ一色にしたい」「アロッチ(東レのマスコット)バスをもっと走らせたい」と、ユニークなアイデアで地域との一体感をさらに深めたいという思いを語った。
最後に選手たちは、「結果で表現する」(深澤)「地元を盛り上げようとしてくれている方々と同じ方向を向く」(青柳)「感謝の気持ちを持ち続ける」(中島)と決意を表明。今シーズン「逆襲の滋賀」をテーマに強い東レ滋賀を取り戻すことを誓い、会場での応援を呼びかけていた。

結びに、大同生命の北原睦朗社長が登壇。イベント参加者や日頃の協力者への感謝を述べ、講演を通じて「もっともっといろんな意味でお役に立てるところがあれば」と、東レ滋賀への強いサポート意欲を示しつつ、特にトークセッションで出た選手からの要望にも応えたいと意気込んだ。
さらに、大同生命と滋賀県、そして東レ(旧ユニチカ)との歴史的な縁に触れ、NHK朝ドラ「あさが来た」の主人公のモデル(大同生命創業者の一人・広岡浅子)の縁者が滋賀県に本社を置く近江兄弟社を創業したウィリアム・メレル・ヴォーリズであること、そして広岡浅子の夫である広岡信五郎が東レ滋賀の前身であるユニチカの初代社長だったことにも触れ、「ご縁があるなと改めて思った」と振り返った。
最後に、SVリーグ2シーズン目に向けて、「我々としてできることをしっかりサポートさせていただきますし、東レアローズさんの発展を心から祈念いたします」と、タイトルパートナーとしての揺るぎない支援を表明し、本イベントが参加者にとって「新たな応援したい気持ちが増す機会」となることを期待して閉会の言葉とした。

東レ滋賀を代表して参加した3選手にイベントの感想を聞くと、充実した時間を過ごせたことが伝わってきた。
深澤つぐみ
普段私たちはバレーボールをメインで仕事させていただいているんですけど、こうして直接関わっていくことが、私たちにも滋賀県の皆さんにもお互いにとって相乗効果でプラスになると思うので、こういう機会があったことはすごくうれしいです。
青柳京古
よくドラマで見る、スポーツと企業が繋がってスタートする1ページ目みたいな、そんな1日になった感じがしました。鳥肌が立つような気持ちです。企業の方々も地域を盛り上げようと頑張っているし、スポーツと一緒になってお互いがどんどん大きくなっていくのに必要な会だったかなと思います。
中島未来
実際に企業の方と直接対面して、シンプルにこんなにもたくさんの方が支えてくれているんだなというのを改めて感じたので、もっと頑張ろうと思いました。
矢島取締役、大河チェアマン、選手たちが語ったビジョン、そして北原社長が表明した深い連携とサポートの決意は、まさに「みんなでつなげ。」というイベントテーマを体現するもの。スポーツチームが地域経済、教育、社会課題の解決、そして地域住民の誇りの醸成に貢献する「ハブ」となる可能性。東レ滋賀と大同生命はこのビジョンの実現に向け、共創パートナーと共に歩みを進めていく。