9月16日、福島県郡山市で「かなえる ちから」が、郡山市を本拠地とするSVリーグのデンソーエアリービーズ主催、SVリーグのタイトルパートナーである大同生命保険株式会社(以下大同生命という)の共催で行われた。
本イベントは中小企業・個人事業所の方々を対象に開催され、地域住民、企業、自治体がつながり、共に未来を描く仲間として、郡山市および福島県の持続的な発展、そして企業の成長を支えることを目的にしている。
講演会に先立ち、共催者を代表して大同生命の大枝恭子執行役員が「私たちは『想う力とつながる力で 中小企業とともに 未来を創る』というミッションのもと、中小企業の方々に、提携団体である法人会様や税理士の先生方と連携しながら企業向けの保障やサービスをお届けしています。福島県内には100名を超える従業員が従事しており、地元の皆さまに支えられ、共に歩んできたからこそ、地域が元気になってほしいという思いもいっそう強いです」と冒頭に挨拶。「今日は、スポーツを通じて人と人とをつなぐことで地域づくりに活かすという私たちの使命が実現した機会になります。スポーツの持つ『かなえる力』、そして『つながる力』を体感していただきたい」と喜びの言葉を口にした。
講演会にはデンソーエアリービーズの杉岡憲部長をはじめ、サッカー・Jリーグの福島ユナイテッドFCから関塚隆テクニカルダイレクター、公益社団法人SVリーグの大河正明チェアマンが講演者として登壇。まずデンソーの杉岡部長による「ホームタウン移転と、福島の皆さんとかなえたいこと」というテーマからスタートした。
デンソーは1972年に創部され、社内に6つあるスポーツ強化部の一つとして愛知県西尾市の工場内に体育館を構え、西尾市をホームタウンに半世紀以上の活動に励んできた。そうして杉岡部長が2023年に着任し、地域密着型の運営に着手するなか、2024年に福島県郡山市への移転を決定した。もとより西尾市のほか、郡山市と北海道札幌市をサブホームタウンに制定し、リーグ期間中にはホームゲームを開催してきた経緯があるが、今回の決定に伴い、活動拠点そのものを移すことに。現在は郡山市で2027年7月に完成予定の体育館を建設中だ。
ホームタウン移転の背景には、2024-25シーズンから始まった大同生命SVリーグがあった。杉岡部長は話す。

「新たにSVリーグが立ち上がり、従来のクラブライセンスが改定され、条件を満たしてライセンスを交付されたチームが参加できるようになりました。ライセンスの考え方の一つには、ホームタウンとの共生連携に重点を置くことがあります。と同時にホームゲームの試合数増加に伴い必然的に運営費も増えるわけでして、その点でリーグからの撤退も含めて検討していました。ですがSVリーグが掲げる理念に共感しまして、参入を決定することにしたわけです。
そこではホームタウンもゼロベースで検討しまして、最終的に株式会社デンソー福島を立ち上げるときから研修などを通して地域とつながりがあったこと、またそうした背景から東日本大震災の復興支援を展開していたことから、福島県に寄り添っていくことを決めました。
またバレーボールのクラブチームが愛知、大阪という大都市に集中していることから、全国でバレーボールを活性化させるにあたり、東北に進出していくべきではないかと考えたことが理由にあります」
拠点を置いていた西尾市はマザータウンに制定して引き続き活動し、今後もリーグ戦において複数の試合を開催することになる(札幌市からは撤退)。その一方で、ホームタウンの移転と体育館建設を発表した際には「13の取材社に来ていただき、またホームゲームの前後には福島県内のメディアで大々的に取り上げていただきました」と杉岡部長は振り返り、「大きな反響と期待を頂戴しておりますので、それに応えていかなければという思いを持っています」と言葉に力を込めた。
デンソーはこれまでも西尾市においても長らく、小中学生を対象にしたバレーボール教室やアカデミーの展開、さらに地元イベントへの参加など積極的に地域貢献活動を手掛けてきており、それは郡山市でも変わらない。2024-25シーズンもリーグ戦と並行して、試合後には会津若松市や田村市など県内の各地域でバレーボール教室を実施し、さらに地元の祭りや行事へ参加してきた。
それらの活動を振り返りながら杉岡部長は「昨シーズンは福島の皆さんに勇気づけられ、チームを育てていただき、クラブが抱く『頂(てっぺん)』という夢をかなえるための力をいただきました。これからもクラブの活動を通して、地域の皆さんの夢をかなえられる存在になりたい。ともに発展させていきたいと願っています」と感謝の意と熱き思いを伝えて、自身の講演を締めた。
続いて登壇したのは福島ユナイテッドFCの関塚テクニカルダイレクターで、Jリーグでは強豪の鹿島アントラーズを指揮したほか、当時J2(2部)だった川崎フロンターレをJ1(1部)に昇格した実績を持つ。さらには2012年ロンドン五輪で男子サッカー日本代表をベスト4に導いた人物である。

川崎フロンターレといえば、かつては“プロスポーツクラブ不毛の地”であった川崎市において、積極的に地域密着型の運営を展開。今や市を代表するサッカークラブとなっている。関塚氏自身は当時こそ監督としてチームの強化に何より主眼を置いていたが、クラブを運営する事業部側とも手を取り合い、オフザピッチの活動にも理解を示すように。それが今、自身が身を置く福島ユナイテッドFCでの活動に活かされているそうだ。
今回の講演会では「福島ユナイテッドFC新プロジェクト『スポーツ経済都市構想』」をテーマに、チームが地域で手がける様々な事例を紹介。最後に「郡山市でデンソーエアリービーズさんがしっかりと地域に根付いたクラブになり、地域を盛り上げていただくことで、福島という地を全国そして世界へ発信できるようになってもらいたい。スポーツを中心に市や県が活性化していくよう、ともに力を合わせていきたい」とエールを送った。
そうして講演会の最後には大河チェアマンが登壇した。自身はJリーグの理事を務めた際に、J3(国内3部)を立ち上げた経歴を持ち、そのステージを戦う福島ユナイテッドFCや、その後はバスケットボールのBリーグで福島ファイヤーボンズが誕生、SVリーグのデンソーが福島へ本拠地を移転させたことに感慨深げ。1993年にJリーグが誕生して以降、サッカー界はリーグが地域と向き合い、また選手や人材の育成にも着手し発展してきたことを踏まえて、「SVリーグでも雇用が創出されていくスポーツヒューマンキャプチャーをやっていきたい」と考えを述べた。
日本のバレーボールリーグはJリーグに続く形で、1994年から「プロ化」を掲げてVリーグがスタート。その後も、運用形式を変えながら展開されてきたが、純然なるプロ化へは踏み出せずに長年が経過していた。そこで大河チェアマンがリーグの運営に参加し、新リーグ構想のもとで2024-25シーズンから大同生命SVリーグが始まった。そうして2026-27シーズンからは男女ともに完全プロ化したうえでのリーグ運用が決定している。
その決定について大河チェアマンは「ファン、地域、パートナーそして株主などのステークホルダーのために勝利と利益を追求することを実現させていく。そのためには『情熱と覚悟を持った経営ができるか』が鍵になります。(現状の)プロアマ混在では成功はありませんので、退路を経って2026-27シーズンからの完全プロ化に踏み切ります」と言葉に力を込めた。

今回、デンソーがホームタウンを移転したことについても「いずれ練習拠点も移したあかつきには、地域(郡山市)におけるチームや選手の露出も増えるでしょうし、ますますホームタウンでの活動に参加する機会も出てくると想像されます。Jリーグではクラブ運営において、社会連携活動を“使い尽くせ”と言っていますが、デンソーも郡山市や福島県において実施し尽くしてほしい」とコメント。
2025-26 大同生命SVリーグ女子は10月10日に開幕し、デンソーは翌11日からホームアリーナの「宝来屋 ボンズアリーナ」での東レアローズ滋賀戦でレギュラーシーズンをスタートさせた。大河チェアマンは「福島とともに世界最高峰を目指すデンソーエアリービーズには『郡山の星』『福島の希望』になってもらいたいと願っています」と期待を寄せた。
講演会のあとには、大同生命SVリーグ開幕戦に向けた壮行会が実施され、そこではデンソーの選手も出席し、新ユニフォームがお披露目された。最後に、昨季に続いてキャプテンを務める川畑遥奈がマイクを手に、「てっぺんを目指して頑張ります!!」と高らかに宣言。温かい拍手が贈られて、この日のイベントは幕を閉じた。

「強く、広く、社会とつながる」を掲げて2年目を迎える大同生命SVリーグ。イベントを共催した大同生命はその理念に深く共感し、初年度の2024-25シーズンからSVリーグのタイトルパートナーを務める。そこには「大同生命は地域の皆さまと手を携えながら、持続可能な社会の実現へ貢献してまいります」(大枝執行役員)という思いがある。
この日は、プロスポーツクラブが地域に根ざし、地域とともに発展していく未来を描く貴重な機会になり、まさに本イベント名に込められた「かなえる ちから」を体感する場となった。デンソーエアリービーズと大同生命は、絶えず笑顔と元気があふれる福島県の実現をかなえる“共創パートナー”として、これからも手を取り合い、ともに力強く歩んでいく。
