[写真]=山田高央

 頼もしい男が、一回り逞しくなって、コートに帰ってきたーー。

 西田有志(大阪ブルテオン)は日本代表のオポジットとして、2024年のパリオリンピックで活躍を見せた25歳。2025年夏の代表活動には参加しなかったが、その4カ月を「休養」でなく、SVリーグの2025-26シーズンと2026年以降の日本代表に向けた鍛錬の時間として活用していた。

「トレーナーとも守秘義務があるので」

 そう記者陣に釘を刺して個別メニューへの言及は避けたものの、表情と口ぶりからは充実したオフ期間の取り組みが伝わってきた。

「週のほぼ半分を、ひとりでキャンプしていました。気づいたら月の半分は休みなしでずっと動いていた夏でしたね。バレーの練習はバレーの練習で(大阪ブルテオンで)やれますけど、身体のトレーニングというか、身体がどうなっているのか、自分の中の構造がどうなっているのか、どう動いているのかを確認しながらでした」

 やや専門的な話だが、身体の動きには原則や順序がある。強いスパイクを打とうとするなら、もちろん筋肉は必要だ。ただがむしゃらに筋肉を増やせば、試合の中でいいプレーができるわけでもない。

「僕の中で知っているものは球を強く打ちたい、ウエイトしましょう。速く走りたい、走りましょう……みたいな理論でしかなかったですけど、バレーの動作はすべてがスプリントから始まっているわけじゃないですか。サーブ助走の二歩からも、スプリントと一緒で、重心の使い方を意識する。ジャンプを跳ぶときは、スプリントからのジャンプのつなぎ方がある。そういう観点です」

 西田は「1対2」の体制で夏の個人トレーニングに取り組んでいた。担当したトレーナーは陸上やラグビー、バレーボールではNECレッドロケッツの指導をしている里大輔さんと、女子プロゴルフの宮里藍さんの専属トレーナーだった山本邦子さん。里さんの存在は、妻・古賀紗理那さんが指導を受けていたことから知ったのだという。

 西田がトレーニングの効果として強調していたのは「疲れを感じなくなった」ことだ。

「やっていても自分の中で驚きというか……。いや、面白いですよ。今はいくら動いても全く疲れないですね。簡単に言えば、力を出そうと思って力を出したときに腰が張ったら、それが身体のストレスになるわけです。でもそれは使い方が間違っているんですよ。スピードとか、力を出そうと“していない”ときに力を出るのは合っているんです」

 男子日本代表が9月にフィリピンで開催された世界選手権を予選敗退で終えた理由の一つが、西田の不在かもしれない。ただ日本代表と西田がより高く跳ぶため、「しゃがむ」時間にも意味があった。

「この数カ月を過ごして、改めて自分が代表を一回離れる決断は間違ってなかったと思います。誰もが経験できるわけではないものを経験させてもらった夏で、そこは一つ良かった。代表に呼ばれる、呼ばれないが僕のゴールではなく、その方々(2人のトレーナー)とのプロセスではロサンゼルスまでを見ています。今はその1年目でしかなく、まだひよっ子のような能力でしか鍛えていません。それでもこれだけフィーリングが変わって、感覚が良くなってというところまで来ています」

 大阪ブルテオンはロラン・ティリ監督が日本代表に移り、トーマス・サムエルボ監督と交代した。セッターの永露元稀選手は広島サンダーズに移籍し、そこにフランス代表のアントワーヌ・ブリザールが加わった。シーズンごとに選手が入れ替わり、時間をかけてチームを作ること自体はどのチームも同じだ。とはいえ「監督とセッターの交代」はアジャストに時間がかかる。

 サントリーサンバーズ大阪との2025-26大同生命SV.LEAGUE MEN開幕戦は10 月24日(金)に組まれている。西田は大阪ブルテオンのキャプテンとして、こう語っていた。

「開幕戦で完成形をお見せすることは、まだ無理だろうなという僕は思います。でもこれはネガティブでなく、ポジティブなイメージです。ブリザールがやりやすいチームを作るのでなく、監督がやりたいバレースタイルにブリザールたちもハメていくのが僕の使命だと思っています。やることの正確さ、明確さをチーム全員に共通で持たせるのが僕の仕事ですね。全員がいいフォーカスをして、いいモチベーションで戦えているので、チームに対して僕は何の不安もないです」

 大きな成果を挙げるには、時間がかかる。西田の新しい取り組みが結果として実るのもこれからだ。ただ彼がいい狙い、いい野心を持って、未来に向けた「いい助走」をしていることは間違いない。

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この記事を書いたのは

大島和人

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