バレーボールのイタリア・セリエA男子、2025/26シーズンは現地10月20日から幕を開ける。スーペルリーガ(1部)では石川祐希(ペルージャ)、大塚達宣(ミラノ)、垂水優芽(チステルナ)と3人の日本人選手が、世界最高峰と称される舞台でしのぎを削る。
****
今夏、ドイツは首都ベルリンで「FISUワールドユニバーシティゲームズ(2025/ライン-ルール)」、いわゆる“大学生世代のオリンピック”が開催されていた。その大会に連覇を目指して乗り込んできたのが男子U23イタリア代表である。
キャプテンでリベロのダミアノ・カタニアを筆頭に、セッターのマッティア・ボニンファンテ、アウトサイドヒッターのフリオ・マガリニやオポジットのトマッソ・グッツォ…。20歳を過ぎたばかりでありながら、すでにセリエAの各クラブでレギュラーを張るような選手たちばかり。まさに「ヤングオールスター」といえる顔ぶれだった。
だが現地7月17日の大会初戦、予選グループ戦は韓国にストレート勝ちを収めたものの、思いのほかサーブレシーブに苦しんだ。試合後、苦い顔を浮かべたのはリベロのカタニア。自身もサービスエースを許していた。
「まず韓国はサーブレシーブがよかったですね。と同時に、とても速く、低い弾道のサーブを打ってきました。それはボールがミカサではなかったことも影響しました」
実は、この大会で採用されていたボールはモルテン製。日本では学生世代からトップカテゴリーにおいてもミカサとモルテンが併用されることから馴染みはあるが、彼らの主戦場であるセリエA、それにFIVB(国際バレーボール連盟)の国際大会ではミカサ製が採用されている。

「まるで違うスポーツを戦っている感覚でした」とは偽らざる胸の内であり、そのうえで「大会を終えるときに、チームが最高潮であるようにトライしていきます」とカタニア。果たしてイタリアは準決勝でブラジルにフルセットで敗れたものの、3位決定戦では日本を3-1で下して銅メダルに輝いた。
そのイタリアの戦いぶりを見ていると、やはり光ったのはカタニアの存在感。リベロが「コート上の監督」と呼ばれるように、常に味方への声掛けを欠かすことなく。サーブレシーブに苦しんだ韓国戦しかり、仲間たちを励ます姿はどの時間帯であってもコートにあった。
今年、世界選手権で見事に連覇を果たしたイタリアにおいては、29歳のファビオ・バラーゾが守護神に定着して久しいが、24歳のカタニアとて10代の頃からアンダーエイジカテゴリー代表で名を馳せてきたリベロ。自身も「夢はオリンピックに出ること。まずはシニアの代表の一員になって、次はスタメンに、そうしてオリンピックの舞台へ立ちたい」と目を輝かせる。

選手としてのキャリアはカステッラーナ・グロッテの育成チームからスタートし、2016/17シーズンには当時15歳ながらセリエA2(2部)を戦い、21/22シーズンからピアチェンツァでトップカテゴリーへ。翌年のチステルナでポジションを確立すると、23/24シーズンからはミラノで守護神を担い、リーグの上位を争うようになった。
その23/24シーズンは石川と、翌24/25シーズンは大塚とチームメートになっている。いわば、カタニアは日本人アウトサイドヒッターを最も知る人物の一人というわけだ。身近で接しているからこそ感じる、2人の違いを聞いてみると――。
「まるで異なります。まずユウキ(石川)は、ものすごいオーラをまとっているんです。彼は真のプロフェッショナルプレーヤーですね。
一方のタツ(大塚)は比較的若くて、それに面白い人間です。エネルギーにあふれていますし…それはユウキも同じですね。私は2人とも素晴らしい選手だと思いますし、人間性も含めて2人のことが大好きなんです。一緒にプレーできることが嬉しいですし、多くのことを学んでいます」
カタニアがミラノに移籍した際に、すでに石川はイタリアで実績を重ねていた。対照的に、大塚は昨季が初めての海外でのプレーだった。カタニアの目に映る姿が異なるのも当然だろう。
その2人といずれは、代表どうしでネットを挟んで対戦する可能性だってある。昨年の激闘を振り返りながら、カタニアはこう語った。
「パリ五輪の準々決勝は凄まじかったですね…。特にイタリアにとって最終セットはまさに奇跡とか言いようがありませんでした。ですが日本がとても高いポテンシャルを備えていることを実感しました。いつだって対戦すれば、接戦になります。
代表戦でユウキとタツのサーブを受けるなら? 難しいなぁ(笑)。2人とも変化を織り交ぜた、いいサーブを打ってきますから。とにかくボールを返すことを。まずは、ね」
そんな未来に思いを馳せながら。この次世代守護神はセリエAにおいてミラノで大塚と共闘し、石川のペルージャと対峙する。25/26シーズンの見どころだ。