[写真]=須田康暉

 11月15日(土)から26日(水)にかけて、 東京2025デフリンピックが行われる。

 デフリンピックとは、聴覚障がい者のための大会。「ろう者(デフ)」と「オリンピック」を組み合わせた名称で、100周年となる2025年は日本で初めて開催。デフビーチバレーボールでは日本勢初のメダル獲得を目指す。

 女子のデフビーチバレーボールには日本から2組が出場する中、大成温調株式会社に所属する伊藤碧紀・堀花梨ペアにインタビューを行った。

 インタビュー前には同社が壮行会を実施。多くの社員を含め91名が参加し、二人には寄せ書き入りの国旗も贈呈されていた。

デフビーチバレーボール日本代表の伊藤碧紀(左)と堀花梨(右)

――寄せ書きをもらっていかがでしたか

 たくさんの方が応援してくれて、すごくうれしい気持ちになりました。

伊藤 もらえると思っていなくて、壮行会後に寄せ書きを読んでいろんな人が応援してくれているなと改めて実感が湧きました。

――学生時代からペアを組むお二人ですが、ずっと仲良しですか

伊藤 自分的には仲良しだと思ってます。

 私も思ってます(笑)。

伊藤 ずっと一緒に大会とかも行ったし、高校時代も高校3年生の時はクラスも同じでずっと一緒にいたから、どこが仲良くてどこが仲悪いのか分からないです。お互いに黙っていても全く問題ないです。

――まずはビーチバレーボールそのものの魅力や大変なところを教えてください

伊藤 魅力はやっぱり2人しかいないところ。2人しかいない中で、8×8メートルのコートを守るのは、選手の身体能力の高さがすごく求められてくると思いますし、経験を積むと予測力もすごく上がります。後は何も考えなくても相手の一番嫌なところに決められる。感覚もとにかく鋭くなるし、そういう面がビーチバレーならではかなと思います。(インドアの)バレーボールではレシーブ、トス、スパイク、サーブがメインですけど、ビーチバレーはそれ以外の技術も必要になってくるので、その習得は大変です。

 下が砂なのでバランスも取らなきゃいけないところが大変なところです。毎日天気も違うので、強い風の中ではこうプレーをしなきゃいけないだったりいろいろと考える必要があるので、そこは難しいです。

――その中でもデフビーチバレーボールならではの魅力や大変なところはありますか

伊藤 デフリンピックでは補聴器を外す必要があって、ラリー中の声でのコミュニケーションは難しいです。相手にお願いしたいことも声だけでは伝わらず、体で表現したりもするので、そこはやっぱり聞こえる人と試合をする中で大変だなと感じることはあります。でも逆に言ったら私たちは手話でコミュニケーションを取るので、堂々とやっても聞こえる人には読まれないので、ちょっとずるく使うことはできます(笑)。

――タイムアウト中などに積極的に手話でコミュニケーションを取られている印象です。試合中によく使う手話があれば教えてください

伊藤 私たちのコミュニケーション方法は手話ではあるんですけど、真面目な手話で喋ってないんです(笑)。二人にしか通じない手話で雰囲気で喋っていることが多くて、絶対に人は読めないはず。

 読めないかも(笑)

伊藤 でも1つあるとしたら、「こっからこっから」っていう手話があるんですよ。「ここから点を取りに行こう」と気合を入れる意味で言うんですけど、それをやっていたら見ていて「今二人は気合を入れたんだな」と分かると思います。

右手の人差し指で下を指し、そのまま右の手のひらを左胸の方へ返したら「こっからこっから」。反撃開始の合図だ。

――お二人にとってデフリンピックはどんな大会でしょうか

 デフリンピックはやっぱりデフの人にとっては大きい大会です。しかも今年は100周年で東京で初めての開催となるので、多くの方々が見に来てくれるかもしれない。私たちにとっては大きなチャンスだし、そういう経験をさせてもらえることに感謝の気持ちが自分の中でもあります。

伊藤 デフリンピックはデフの人たちが聞こえる人と同じようにスポーツができることを伝えられる大きな機会になると思うんです。私たちは耳が聞こえないだけで、走れるし、投げられるし、動ける。だけど聞こえないだけでやらせてもらえないこともあるので、聞こえなくても少しだけ情報保障をすれば普通にスポーツもできるし、コーチや先生だけでなく周りの友達のサポートだけでも十分できるんだよということを社会に伝えることができるいい機会だなと思います。

――そのデフリンピックでの目標を教えてください

 もちろん大きな目標はメダル獲得ですが、それだけが目標じゃなくて、試合で自分たちにとってもいいパフォーマンスをして、笑顔で楽しくいいプレーをしたいと思っています。見てくれる方々にも楽しく見てもらえるようなプレーをしていきたいです。

――最後にファンの方へメッセージをお願いします

伊藤 デフリンピックというとても貴重な大会が日本で開催されます。日本なので皆さん来て応援していただけたらうれしいです。自分の強みのプレーも生かしつつ、120パーセント、150パーセント、全力を出し切って、楽しいデフリンピックを過ごしたいなと思います。

 デフリンピックを知らない方もいると思いますが、聞こえなくてもスポーツができるということを見てもらって、より知って、より興味を持ってくれればいいなと私は思っています。

伊藤  応援お願いします!

 東京2025デフリンピックのデフビーチバレーボールは、大森ふるさとの浜辺公園で開催。試合はTOKYO 2025 DEAFLYMPICSのYouTubeチャンネルでも配信される。