大阪マーヴェラスが皇后杯を制したのは、実に5大会ぶり。昨季、SVリーグ初代女王に輝いた強さをここでも証明して見せた。
奇しくも決勝はSVリーグ決勝と同じNECレッドロケッツとの対戦だった。第1セットは終盤までNECが先行したが18対22からの6連続得点で逆転した大阪MVが26対24で先取するも、第2セットは16対25でNECが奪取。第3セットは再び大阪Mが33対31で激闘を制したが、第4セットは24対23と大阪Mのマッチポイントから逆転したNECが24対26で取り返し、最終セットへ。14対11と先にチャンピオンシップポイントに到達したのはNECだったが、ここから大阪MVは林琴奈のサービスエースを含む4連続得点。大逆転の末、17対15で勝利した。
今季の対戦はNECが2連勝。リーグの首位を走る相手に「挑戦者の気持ちで試合に臨んだ」という酒井大祐監督は、攻撃力の高い相手に対して「ブロック&ディフェンスで諦めずにつなぎ、最後に託す展開が機能した」と勝因を上げたが、まさにその最後の1本を託され、勝利に導いた立役者がチームの主将、田中瑞稀だった。
決勝だけで30得点。まさに圧巻と呼ぶにふさわしい活躍で、MVPも受賞。マッチアップしたのが相手セッターで、高さで勝っていたこともあり「狙い通り打つことができた」と田中は言うが、当然相手もウィークポイントを補うべく、得意なコースや狙われると予測する場所にはレシーバーを配置する。それでも田中は冷静だった。
「ゾーン1(ネットに正対してコート後方右側)にディガーがいて取られるケースがあったので、それは頭に入れながら攻撃することを考えていました。セッターの塩出(仁美)も東(美奈)も『こう打ってほしい』と意図のあるトスを上げてくれたので、上がってきたボールを打つだけ。最後も絶対に上がってくると思っていたんですけど、最後はプッシュ。あの場面ではあまり考えずに、NECに勝ちたい、皇后杯を取りたい、みんなが託してくれたボールをしっかり決めたい、ということだけ思いながらプレーしていました」

全員でつないだ最後の1本を、何が何でも、どんな形でも絶対に決めきる。SVリーグやVリーグ、これまでも数え切れぬほどに何度もそんな田中の姿を見て来たが、やはりどれだけ月日が経っても思い出す試合がある。
2014年1月12日、九州文化学園の大エースとして臨んだ高校3年の春高だ。
SVリーグと異なり、春高は1回戦から準々決勝までは3セットマッチで行われる。試合は連戦で、3回戦と準々決勝に関しては同日ダブルヘッダーで行われる、選手ファーストには程遠いスケジュールであるだけでなく、センターコートでの準決勝、決勝は5セットマッチ。共栄学園との準決勝を2セットダウンから逆転で制した翌日、九州文化学園は同じ九州、大分代表の東九州龍谷との決勝戦に臨んだ。
しかしこの日も2セットを連取したのは東九州龍谷。優勝に王手をかけられた状況から、大逆転劇の立役者になったのが田中だった。
エース勝負を打ち出す高校は男女共に少なくないが、決勝戦での田中の活躍は神がかっていたと言っても過言ではないほど、前衛でも後衛でもひたすら打ち、しかも打てば決まる。当然相手も「田中に上がる」と警戒し、ブロック、レシーブで対応しようとするが、追い込まれた状況でもブロックに当ててはるか後方へ飛ばしたかと思えば、今度はブロックの間や横を抜いて叩きつける。九州文化学園のコートにボールが渡れば、対戦相手だけでなく会場中が「また田中が打って決める!」と興奮しながら見守る中、最終セットはデュースの末に25対23、思わず得点を見間違えるようなスコアで九州文化学園が頂点に立った。
もちろん最後に決めたのも、決勝だけで115本のスパイクを打ち49得点を叩き出した田中のバックアタックだった。
試合終了の笛が鳴ると同時に、コートの選手たちは歓喜を味わう前に、その場に崩れ落ちるように倒れ込みながら喜びを称え合う。その姿だけでも、どれほどの集中力と精神力、そして体力を出し切ったか。十分に伝わってきた。
あれから間もなく12年。幾度となく当時の話に触れるたび「打ちすぎですよね」と田中は笑う。だがあの頃と変わらず、チームを勝利に導く大黒柱であるのは今も変わらない。当時のセッターが「田中を信じて上げた」と語っていたように、今も、共にプレーする大阪MVのセッター、東は言う。
「試合の中で1本決まっただけでも『今日は全部行ける』と思わせてくれる。もちろんマッチアップもありますけど、試合中にコートでミキさん(田中の愛称)とコミュニケーションを取るだけで、すごく落ち着くんです。変なたとえかもしれないですけど、苦しい時の薬みたいな感じ(笑)。かけがえのない選手で、キャプテンで、柱。そういう存在です」

皇后杯を制してもリーグは続き、年末年始も休む間なく、1月3日にはヴィクトリーナ姫路との試合に臨む。
かつて春高を制し、そして主将として皇后杯を制したエース、田中瑞稀はこの先もどんな姿を見せ続けるのか。2026年も、託せば決める、大黒柱は健在だ。




