バレーボールキングでは「チェアマン通信『SVリーグのリアルをお届け』」と題し、今シーズンから大河正明・SVリーグチェアマンのインタビュー記事を連載している。ファンや選手に「どんな改革が進められているか」「そこにどんな意味があるのか」を伝えることが、本連載の目的だ。
大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)は現在開催中の2025-26シーズンが現体制になって2季目で、来季からは男女とも“プロ”のカテゴリーになる。2026-27シーズンに起こるもう一つの大きな変化はSV.LEAGUE GROWTH(SVリーググロース/SVG)の創設だ。また昨年12月のSVリーグ理事会では「U18カテゴリーの整備」が決議された。中学、高校、大学の部活と共存した形で、SVリーグが育成の「複線化」を進めることになる。
チェアマン通信の第3回はセリエA視察、SVG創設の背景と狙い、SVリーグの育成といったテーマについて語ってもらった。
――大河チェアマンは昨年12月、イタリアに出張していました。これはどのような目的、内容だったのですか?
大河 セリエA男女それぞれを訪問し、リーグ経営幹部層の方々と意見交換することがメインの目的でした。行った日はノヴァーラの石川真佑選手が出場した欧州チャンピオンズリーグの試合があって会場に行きました。その後はミラノとペルージャ、大塚(達宣)選手と石川祐希選手の直接対決の試合を見ました。
試合とは別の日に石川祐希選手とは1時間ぐらいお話ができました。「日本に帰ってきてくれ」と説得するために行ったわけではなくて、彼がどう考えながらイタリアで10年間バレーボールをやってきたのか、日本のバレーボールをどう見ているのか、そういうことをお聞きしたかったです。

――セリエAの「中の人」とは、どんなやり取りをしたのですか?
大河 「ともに世界のバレーボールリーグを引っ張っていく相手」として我々を認めてもらって、情報を共有しながら切磋琢磨する関係になることが最大の狙いでした。「SVリーグはなかなかすごいぞ」と思わせる作戦も練っていて、それは私たちの事業規模と集客数を見せることでした。それはいいインパクトになったと思います。
トップチーム同士で何かをやれれば話題性もありますから、各リーグのチャンピオン同士がプレシーズンで戦うような企画ができると面白いですね。もう一つ実はやりたかったのが育成と指導者の交流です。日本バレーボール協会(JVA)も絡んでくることなので、私たちだけで決められないところはありますが、若い競技者の育成と指導者の話をベースとした交流を考えています。
――「指導者の交流」はどのような内容を想定していますか?
大河 コーチライセンスについてはバレーボール独自のものがなく、実はスポ協(日本スポーツ協会)のライセンスに組み込まれていています。これもJVAが絡む話ですが、イタリアの指導者に来てもらって、日本で講演や指導の実践をしてもらえればと考えています。SVは既に外国人監督やコーチが多いですから、ユースが中心になると思います。こちらからイタリアに派遣するやり方もありますね。
――今の話だと日本がギブされる側ですけど、彼らがテイクできるものはありますか?
大河 何をテイクできるか分からないですけど「日本の経営規模が非常に大きいのはなぜだろう?」と彼らが興味を持っているのは確かです。ペルージャとサントリーサンバーズ大阪が2025年10月に有明で2試合やりましたけど、ペルージャの会長は「2試合とも(平日に1万人以上入る規模のアリーナが)満員だった。イタリアでは考えられない」と驚いていて、「交流戦をやるつもりでいたけど、毎年日本に行きたい」と仰っていました。
選手個人でいうと、私が観た試合に石川選手は怪我明けで出場していなかったのに、会場では一番人気でしたね。試合が終わってからもずっと、ファンに声を掛けられていました。大塚選手もミラノの一つのピースに完全になっていて、ミラノの会長も「大塚は本当に賢くていい奴だ」とベタ褒めでした。
――世界クラブ選手権は明るい話題でした。12月21日の決勝戦に大阪ブルテオンが進出しました。ペルージャに敗れて準優勝でしたが、快挙だったと思います。
大河 サントリーも2023年に3位になっていますが、それを上回る過去最高の成績です。最初にブラジルのチームに勝った、準決勝でポーランドのチームに勝ったのは、SVリーグが競技的にも大きく成長している証だと思います。ガバナンスや事業は世界最高峰にほぼ並んでいるので、あとは強化のところですよね。
セリエAの方とのやり取りでもイタリア、ポーランド、日本、トルコ、ブラジルが「5大リーグ」で、日本は3番手くらいだろうという話になりました。その中でリーグが協会から独立して組織化しているのはイタリアと日本とブラジルで、しっかり組織化してやっているのはイタリアと日本ではないかと。
ただペルージャは私も試合を見たけど本当に強くて、特にセッターの(シモーネ・)ジャネッリはすごかった。世界一のセッターでしょう。個人的な希望ですが、いつの日かSVリーグでジャネッリと(アントワーヌ・)ブリザール、関田(誠大)の対戦を見たいなと思いました。

――2026-27シーズンからSVリーグの「2部」としてSVグロース(SVG)が発足します。これに伴い、Vリーグ(JVL)は組織がSVリーグと分けられることになります。この背景を改めてご説明いただけますか?
大河 SVリーグ開幕前を振り返ると、当時のV1をいかにプロ化するかが最大の焦点でした。逆にV2以下にはプロ化の意思が無い、毛色の違うチームもありました。平たくいうと「仕事しながらバレーできる環境があればいい」というチームです。その意向を全く否定するものではありませんが、向かいたい方向が異なることは事実です。
また中間的な存在として「特定の親会社は持たないけれど、上昇志向を持っているチーム」があります。おおよそこの3層に分かれていて、それぞれに合わせた仕組みが必要なことは最初に気づきました。
現状を見るとVリーグにも上を目指して、集客や地域密着、演出をしっかりやっているチームがあります。逆にSVのような世界は目指さない、上を目指していてもまだ年間売上が1000万、2000万でSV挑戦はまだ現実的でないチームがあります。そこは分けないとなかなかうまく行きません。
世界最高峰のリーグを目指す、目指そうと検討している、それなりの体力があるところは、SVの2部を作って吸収するようにしました。それがSVGを作る経緯と意図です。
――SVGに入れない「実業団」「上を目指しているけどまだ事業規模が小さいクラブ」はどうなりますか?
大河 残りのチームはサッカーのJFL(※4部相当の全国リーグでJリーグとは別組織)、バスケならB3(※2026-27シーズンからB ONE/B NEXTに吸収される)のような形になります。JVAの傘下に移る、「アマチュアのトップリーグ」という位置付けとなるリーグに所属してもらう前提です。
そうなった一つの大きな理由は「規模」の違いです。これも他のスポーツの例ですが、J1とJ2の売上規模は「3対1」の格差です。B1とB2は「5対2」くらいです。経営体力がそれなりに接近しているから、昇格したばかりのチームがそこまで辛い思いをしません。バレーボールの男子は事業規模の平均値が1部と2部で約10倍違います。女子も7~8倍の差があります。
――プロ志向のクラブにも規模などに差があるのですね。そもそもプロと実業団は「目指すもの」が食い違います。
大河 大きいのは選手がプロかアマかより「組織がプロかアマか」です。プロの組織とアマの組織が混在すると、どうしても全体の基準が、より負担の少ない水準に合わせざるを得なくなります。なので、そこは分けるべきなのです。企業チームは「この予算で1年間バレーボール部の活動をしてください」というコストセンターの発想になります。だから空いている体育館で試合をして、1日2試合・3試合の合同開催でもいい。そして、そもそも試合数をあまり増やしたくないのが一般的です。そういうチームと、バレーを生活の糧にしているチームが一緒に集まるリーグはなかなか成り立ちません。

――現Vリーグ(JVL)内の議論はどう進んだのですか?
大河 JVLの実行委員会をやるときには、まず「実行委員幹事会」で各チームの代表者に当てています。男子は東西、女子はチーム数が少ないから全国で3回に分けて「幹事会」を行って、さらに実行委員会を開きました。
私は理事会の議長ですが、そこに至る会議体は國分裕之COOと宮下剛事務局長の担当でした。会議内でどういう発言があったかは、議事録も含めて私に入っていて、共有しています。
SVGは入場者数2000人以上のアリーナで試合の6割以上をやる、売上を2億円以上といったライセンスの要件を設定しています。JVAの方に所属する新Vリーグは「1シーズン、途中でやめない」ことを当然求めますけど、他の要件をほぼ無くしてチームへの負担が減ります。だから「肩の荷が下りた」と仰るチームの人もいました。
逆に「なぜ自分たちがSVGに入れないのか?」と反発するクラブもありました。一部の異なる意見はあったものの、一つ一つのクラブとも向き合って話をしました。実行委員会でも大きな異論は出ず、昨年12月16日の理事会でも我々の趣旨にご賛同いただいて承認となりました。
発表の際には、ファンの皆様に多くのご心配をおかけしました。しかしJVAの正式発表までこちらが何も発表しないと、断片的な情報漏出や建設的ではない憶測につながります。とはいえ、JVAが発表していない内容を我々が勝手に話すわけにもいかない。だから、発表するタイミングと内容は非常に難しかったです。
――3つのリーグを「同じ傘」の中でやっていく選択肢は無かったのですか?
大河 検討はしました。ただ前提として男女合わせて約30チームのところから、半分が抜けていきます。チームが半分になってもリーグの固定費はあまり変わらなくて、年会費が倍以上になってしまいます。何度か試算しましたが、今300万の年会費を700万か800万に上げないと組織を維持できません。そういう問題もありました。
――SVGは SVリーグの法人に入ってくるのですか?
大河 公益社団法人SVリーグの会員になります。先程も申し上げたように、現状は約10倍の体力差があるし、SVの基本理念は「世界最高峰のリーグを目指す」ことです。SVのチームは「正会員」「社員」ですが、SVGのチームは「一般会員」です。我々の仲間ですが、社員としての議決権は持たない立場です。
議決権はなくても、入会のメリットはあります。SVGに入ることでSVのロゴが使えるし、SVを目指している証明になって、そういうアピールは大きいと思います。SVのライセンスを持てば、女子は入替戦に出られます。男子は16チームまで拡大することを目指していますから「12」「14」と増えるタイミングで昇格可能です。

――SVGへの期待はいかがですか?
大河 まずSVリーグのようにお客さんがたくさん来て、事業規模も大きくなっていくのが狙いです。そして「分厚い中間層」ができることで、バスケットやサッカーのように「投資したい」というオーナーにたくさん出て来てほしい。チームを手放してほしいという意味ではないですけど「欲しい」「買いたい」と思う人が出てくるコンテンツになることを期待しています。
――試合数は今のVリーグから増えるのですか?
大河 男子は今28ですが「32」を想定していて、できたら「38」まで持っていきたいです。激変緩和ではないですけれども、いきなり「38」に増やすとアリーナ確保が難しくなります。「32」だとホームゲームは16試合で、2026-27シーズンからその60%以上にあたる最低10試合はホームアリーナの要件を満たす会場を抑えてくださいという話です。
――参加チームは揃いそうですか?
大河 今の応募状況から、SVGは男子8チーム、女子7チームを想定しています。さらにいうとSVリーグの男子は今のVリーグから2つ昇格させて、12チームをめざしたいと考えています。
昨年9月頃に事前ヒアリングを行って、私もSV、SVGに参加を希望するチームはほぼすべてと面談しました。十二分に合格点と言えるチームばかりではないですけど、目指そうとする意思、行政との関係構築といったところを見れば、問題ないだろうという現時点の感覚はあります。あとは今年3月の審査まで、ブレずにちゃんとやってくるかだけです。
――定量的な部分で言うと「アリーナ要件」と「財務要件」が壁になるのは他競技と一緒だと思います。SVGについてそこはどうですか?
大河 問題になるのはアリーナと財務が半々くらいですね。3年間くらいの猶予を設けて、その間に改善するように持っていきます。SVGをSVに近づけていくために寄り添う、育てることも私の仕事です。自分はJリーグやBリーグで同じ仕事をやっていましたが、SVGはそこを強めてやります。
あと実は飛び級でSVGに入りたいという意向のチームが3つくらいありました。今回はまず1回社会人リーグでやってもらおうと考えています。
――社会人リーグからSVGに入りたい、SVを目指したいとなった場合はどうなりますか?
大河 SVGの準加盟になってもらう、ライセンスを取っていただく手続きになります。社会人からSVGについては成績を絡めず、ライセンス要件で上げようと考えています。
――SVGはまだ増やすし、新規参入も歓迎ということですいね。
大河 現時点でSVGの1部、2部と上下に分けるつもりはありません。SVGは東西、東中西のように横に展開したほうがいいかなと思っています。天皇杯や皇后杯の結果を見るとレベル的に現時点でVリーグは高校、大学とあまり差がありません。なので、経営基盤さえ整えば、SVGのレベルに届くチームを作るのにそこまで時間はかからないはずです。
――今のSVの課題で、特に男子は大阪、愛知への偏在があります。新チームの参画で、全国への広がりは進みますか?
大河 地方への広がりも考えてSVGは対応したいと思っています。さらに言うと関東、男子は九州、東北にチームを呼び込むところは並行して考えなければいけない部分です。実は関東でチームを持つ動きも2、3あります。チームをM&Aで買う、ないしは新規で立ち上げる話がこれから出てくると思います。
――もう一つ、今回はSVリーグの育成についてお聞きします。各チームはU15のカテゴリーを設置していて、これからU18も整備が進むと聞いています。
大河 U18チーム保有が昨年12月のSVリーグ理事会における結論です。まだ普及の側面が強いチームもありますが、徐々にトップにつながっていく強化が始まると思います。春高に出たい子も多いはずですし、春高が素晴らしい舞台であることは間違いないですが、育成の「複線化」はバレーの未来を考えると重要です。特にU15年代は間違いなく中学の部活動の活動環境が変化しているし、SVやVのU15だけでなく、街クラブもどんどん増えてほしいですね。
大塚達宣選手はパンサーズジュニア(大阪ブルテオンU15の前身)から洛南高校、早稲田大学に進学して大阪Bに戻ってきましたが、そういうキャリアもありでしょう。大阪Bのアカデミーには駿台学園の梅川大介さん、サントリーにも東山の松永(理生)さんが入りました。
間違いなくSVリーグの育成に関する動きは進んでいます。中学年代から海外遠征に連れて行ったり、高校年代ならトップチームと練習をできたり、そのようなSVリーグのアカデミーらしい売りを出していきたいと考えています。
取材・構成:大島和人




