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 2024―25シーズンの大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)が11日からいよいよ開幕する。新たなスタートを切る国内バレーボールリーグ。新シーズンの幕開けに先駆け、SVリーグ男女全24チームをピックアップし、ここではウルフドッグス名古屋を紹介していく。

クラブヒストリー:早くから地域に根ざしたクラブとして活動

 1961年に社内のバレーボール愛好家が集まったバレーボール部(当時は9人制)が起源。第5回Vリーグ(1998ー99)から国内トップカテゴリーに参戦し、しばらくはシーズン負け越しや下位カテゴリー降格を味わうも、2006ー07 V・プレミアリーグで初の勝ち越しを果たして最終4位に。その後は2010年代中盤から、クロアチア籍オポジットのイゴール・オムルチェンの活躍やスウェーデン籍監督のアンデッシュ・クリスティアンソン氏の指揮もあって、2015ー16シーズンに初優勝を手にした。

 2019年にはチーム名を「豊田合成トレフェルサ」から現在の「ウルフドッグス名古屋」に変更し、地域に根差したクラブチームとして運営・活動する。ポーランド籍オポジットのバルトシュ・クレクが加入した2020ー21 V.LEAGUEからは3位、翌年は2位と順位を押し上げ、2022ー23シーズンに通算2度目のリーグ制覇を果たした。昨季は終盤でクレクのコンディション不良もあり厳しい戦いを強いられ、最終5位の成績を収めている。2022ー23シーズンからはイタリア籍監督のバルドヴィン・ヴァレリオが指揮し、日本人選手も英会話の習得に励むなど“国際的”な一面を持つ。

このオフの動き:主力の顔ぶれがガラリと変わる

 昨季かぎりで直近4季の躍進を支えたクレクが退団。そのほか、2022ー23シーズン優勝の立役者だったセッターの永露元稀が大阪ブルテオンに、リベロの小川智大がジェイテクトSTINGS愛知に移籍するなど、リーグの中でも主力の顔ぶれがガラリと変わったチームの一つである。

 そこで補強したのが、まずはオポジットのニミル・アブデルアジズ。オランダ代表でキャプテンを務めるリーダーシップに加え、特筆すべきは豪快なサーブ。その打球は時速130キロ後半に達するという世界屈指のビッグサーバーだ。

 また国内移籍組として、セッターの深津英臣とリベロの渡辺俊介という日本代表選出歴を持つベテラン2人のほか、SVリーグの外国籍選手枠拡大に伴い、スロベニア代表キャプテンのアウトサイドヒッターであるティネ・ウルナウトがジェイテクトSTINGS(現・ジェイテクトSTINGS愛知)から新たに加わった。

 さらにルーキーとしては、ビーチバレーボールとインドアの“二刀流”で話題の水町泰杜が入団。すでに昨季終盤には内定選手として出場機会を与えられると、アタック、レシーブ、サーブとすべてにおいて非凡な能力を披露している。

2024―25シーズンの戦い方予想

 オポジット、セッター、リベロと“専門職”の面々が昨季から大きく変わったが、その穴を埋める補強はばっちり。また、リベロでいえばアンダーエイジカテゴリー日本代表から守備力に定評ある市川健太がいよいよ台頭し、守備の中心を担う。

 市川やアウトサイドヒッターの高梨健太、ティネ・ウルナウトがサーブレシーブで起点となり、セッターの深津英臣が攻撃を組み立てる。決定的な仕事を果たすのは大砲を務めるニミル・アブデルアジズだが、高梨とウルナウトはもちろん、ミドルブロッカーの傳田亮太や中国籍の王東宸(ワン・ドンチェン)らは確実に得点につなげる能力がある。

 とりわけ層が厚いのはアウトサイドヒッター陣で、2022ー23シーズンのチャンピオンシップポイントからアタックを決めた山崎彰都は攻守で高い水準にあり、また勝負強いサーブも光る。フレッシュなプレーで勢いをもたらす水町泰杜や、チームが崩れそうになったときに立て直せるベテランの山田脩造も控え、状況に応じた起用が施せる。

注目選手:高梨健太

 2018ー19シーズンに内定選手としてチームに加わり、入団2季目の2020ー21シーズンにはチーム内でバルトシュ・クレクに続く2番目の、日本人選手では最多得点の活躍を見せてエースに定着。リーグ準優勝の2021ー22シーズンにはベスト6に選出された。サーブレシーブから流れるようにアタックの助走に入り、力強いスパイクで得点を重ねる。

 また各年代で日本代表にも名前を連ね、2019年の第30回ユニバーシアード競技大会ではエースを務める。シニア代表でも2021年に東京2020オリンピック出場を果たすと、2023年は第19回アジア競技大会に日本代表として銅メダル獲得に貢献した。

 チームでは今季からキャプテンに就任。高校、大学といずれも経験してきたが、WD名古屋に入団後は役職に就かずともコート上ではリーダーシップを発揮しながらプレーしていた。今回の就任について、本人は「決して言葉を発して引っ張るタイプではない」とバルドヴィン・ヴァレリオ監督に伝え、指揮官も理解を示し、リーグタイトル奪還を目指すチームの船頭を託した。言葉は多くなくてもいい、プレーで、背中で、そして気迫で仲間を引っ張る。