©SV.LEAGUE

 2024―25シーズンの大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)が11日からいよいよ開幕する。新たなスタートを切る国内バレーボールリーグ。新シーズンの幕開けに先駆け、SVリーグ男女全24チームをピックアップし、ここではNECレッドロケッツ川崎を紹介していく。

クラブヒストリー:幾度もリーグ優勝してきた名門チーム

 発足翌年の1979-80シーズンに日本リーグに参入して以降、一度も日本のトップリーグから降格をしたことがない名門だ。選手のみならず、監督も日本代表へと送り出していることからも、日本のバレーボール界を支えてきたチームであると言える。Vリーグがスタートしてからはさらに力を増し、8度の優勝を成し遂げた。

 母体である日本電気株式会社(NEC)の本社がある東京もホームタウンとされているが、あくまでメインは神奈川県川崎市。市内にある体育館でトレーニングを行い、川崎市とどろきアリーナをホームアリーナとする。

 ここ10年ほど、久光製薬スプリングス(現SAGA久光スプリングス)、JTマーヴェラス(現大阪マーヴェラス)と女王の座を争い続けてきたが、昨季にはチーム初となる連覇を達成した。2022-23シーズンは4位、2023-24シーズンは2位と、レギュラーラウンドでは頂点に立てなかったが、ファイナルステージに入ると勝負強さを発揮。トーナメント形式だった昨季はセミファイナル、ファイナルを通じて1セットしか落とすことなく、2年連続で戴冠した。

このオフの動き:攻守の要が退団も戦力は充実

 ただし、大同生命SV.LEAGUEの初シーズンを迎えるにあたり、懸念もある。レッドロケッツだけではなく、日本代表でも大エースとしてチームを引っ張ってきた古賀紗理那の引退だ。その影響は卓越したスパイクなどプレーにとどまらず、精神的にもチームを引っ張ってきた選手が去った影響の大きさは想像に難くない。

 米国代表ダニエル・ドルーズも、1シーズンで母国へ戻ることとなり、新シーズンからはコーチとしてチームのために働く柳田光綺、そして上野香織という、10シーズン以上にわたりチームを支えてきた選手もシューズを脱いだ。多くの功労者は今後、コートを外から見守ることになる。

 それでもチームが目指すのは、改変を挟んでのリーグ3連覇、SV.LEAGUE初代女王の座に名を刻むこと以外にあり得ない。古賀が抜けたポジションには、日本代表の和田由紀子を迎えた。アウトサイドヒッターには、機動力を活かしたコンビバレーの習得のためにタイへ期限付き移籍していた山内美咲が戻り、世代別日本代表としても活躍している21歳の廣田あい、2022-23シーズンの2冠達成時のキャプテン古谷ちなみらがいる。

2024―25シーズンの戦い方予想

 筑波大学在学中から日本代表入りした新人の佐藤淑乃に古賀がつけていた背番号2が託されたのは、期待の表れだろう。昨年にバレー大国ブラジルで代表デビューを果たしたロレイナ・メアリーズ・ダ・ シルバも加入。むしろ、チーム内競争は高まっていきそうだ。

 極めつけが、新キャプテンの存在だ。2023年に引退を発表していたセッターの澤田由佳が2024年4月には現役復帰を宣言。開幕までに万全の準備を整えて、主将という大役も引き受けた。心身両面において、チーム力を補完する準備は整った。

ベテランの島村春世、入団2年目の中川つかさと、2人の日本代表が副キャプテンとして支えるバランスの良い構図もつくられた。あとは就任7シーズン目と、チームを知り抜く金子隆行監督がマネジメント手腕を見せるだけだ。

注目選手:山田二千華

 そのチームの新たな顔となるべきは、ミドルブロッカーの山田二千華だ。高校卒業後の2018年に加入してから着々と出場機会を増やしていき、2021年の自国開催大会に続いて、2024年のパリでは24歳にして2度目のオリンピック出場を果たしている。

 そのポテンシャルには同じポジションで五輪に4度出場したレジェンド、荒木絵里香も山田が10代の頃から注目していたという。やはり日本代表の先達である古賀も、成長のためにあえて山田には他の選手より高い要求をしていたというから、その実力は“お墨付き”だ。

 身長184センチ、最高到達点310センチというサイズを活かしたブロックの迫力は、目にしたならば説明は不要だろう。チームを引っ張る存在へと成長することで、その存在感はさらに大きくなっていくはずだ。

 バトンをつなぎながら、レッドロケッツは新しい時代へと入っていく。大きな節目を迎えていることは確かだが、新リーグ開幕にタイミングがぶつかるのは、むしろ僥倖と言えるかもしれない。