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 2024―25シーズンの大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)が11日からいよいよ開幕する。新たなスタートを切る国内バレーボールリーグ。新シーズンの幕開けに先駆け、SVリーグ男女全24チームをピックアップし、ここでは埼玉上尾メディックスを紹介していく。

クラブヒストリー:困難を乗り越え近年勢いを増すチーム

 英語で医療従事者などを意味するチームの愛称からもうかがえるように、もともとは病院内のバレーボール部として誕生した。その上尾中央総合病院の所在地である上尾市で発足以来活動を続けており、大同生命SV.LEAGUE参入後も、ホームタウンとしてともに歩み続ける。

 実業団として正式にスタートしたのは、2001年のことだった。何度も入れ替え戦で涙をのんだものの、ついに2014ー15シーズンからのV・プレミアリーグ参入を果たした。一度は降格を味わったが、1年後には国内トップリーグへと返り咲き、2021年にはV Cupを制して初のビッグタイトルを獲得した。

 日本代表選手も擁するようになり、2023年開催の黒鷲旗では優勝こそならなかったものの、初の決勝進出を果たした。勢いを失うことなく、リーグ戦でも昨季は2シーズン連続となるV・ファイナル4進出を果たす。またもファイナル進出はならなかったが、3位決定戦でトヨタ車体を破ってV.LEAGUEのラストシーズンを締めくくった。

 上昇気流に乗りつつあるチームを率いるのは、大久保茂和監督だ。筑波大学卒業後、堺ブレイザーズに入団するとともに大学院に進学し、学んだ理論とその実践を繰り返して自らを磨き、指導者へ転身してからはその知見を選手に還元してきた。日本代表のコーチも務め、ロンドン五輪での銅メダル獲得にも貢献。2022-23シーズンに埼玉上尾で自身初となる監督業をスタートさせると、初年度に4位、翌シーズンは3位と結果を出してきた。

このオフの動き:充実の新戦力を加えさらなる飛躍へ

 このオフには、新卒選手として入団してから一貫して埼玉上尾でプレーし、昨年には31歳にして初めて日本代表にも選ばれた青柳京古、現在はプロ格闘家への転身を目指す亀井美子らが退団した。一方で、3人の新戦力が加入。濵松明日香は高校卒業後に入団した久光スプリングスではブレイクまでに時間がかかったが、23歳で日本代表に選出されるまでに成長したミドルブロッカー。スロベニア出身のニカ・マルコビッチは、アメリカ、フランスなどでのプレー経験があるアウトサイドヒッターだ。

 開幕直前の電撃発表となったのが、井上奈々朱だ。デンソーや東レなどで16シーズンにわたってプレーしたミドルブロッカーで、日本代表にも選出された。2023年1月にアキレス腱断裂の重傷を負い、2024年1月には引退を発表していたが、9月24日に埼玉上尾入団を発表。驚きの現役復帰となった。経験豊富で、コート内外での貢献が期待される。

2024―25シーズンの戦い方予想

 チームとしては2シーズン連続でファイナル4に進出しているだけに、大久保体制3年目でさらに一歩前進したいところだ。加入2年目だった昨季も攻撃力を発揮した世界選手権金メダリストのセルビア代表のサラ・ロゾは健在。今シーズンが加入2年目となる日本代表アタッカー黒後愛がさらにフィットしていけば、昨シーズンからのさらなる前進も決して不可能ではないだろう。

また、リベロの山岸あかねが2年ぶりに日本代表に選出され、リザーブメンバーという形ながらパリ・オリンピックに臨むメンバーに入ったことは、チームと個人が同時に成長していけることを証明した。20歳代半ばの選手が多く、個の成長が一気にチーム力を上げる可能性も秘めている。

注目選手:岩崎こよみ

 こうしたチームで主柱となるのが、日本代表セッターの岩崎こよみだ。確かな状況判断と得意のパスワークで、ロゾ、黒後といった脂が乗る時期に入ったアタッカーをさらに輝かせることが期待されている。

 高校時代から国際大会に出場し、20歳の誕生日を翌月に控えた社会人2年目に日本代表に選出された。身長175センチとセッターとしては高さもあり、意表を突くツーアタックでの得点も期待できる。

 2014年に前所属チームの廃部に伴い加入した。この10年余りの間に、イタリアへの期限付き移籍、出産などでチームを離れる期間もあったが、今でもチームの中心であり続ける。2023年には日本代表にも復帰し、パリ大会では35歳にして自身初となるオリンピック出場の夢もかなえた。

 チーム最年長として精神的にもチームを引っ張る存在だが、下北沢成徳高校でのチームメイトだった井上が電撃入団したことは、岩崎の負担を減らすはず。自身のプレーに集中し、さらなる輝きを見せてくれることだろう。

 チームは「先導」を今季のスローガンに掲げ、新リーグ初代女王を目指すと宣言している。頼もしい選手たちを導き役に、伸び盛りのチームが前進を続ける。