©SV.LEAGUE

 2024―25シーズンの大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)が11日からいよいよ開幕する。新たなスタートを切る国内バレーボールリーグ。新シーズンの幕開けに先駆け、SVリーグ男女全24チームをピックアップし、ここでは「大阪マーヴェラス」を紹介していく。

クラブヒストリー:苦労の時代を乗り越えて

 V.LEAGUE(Vリーグ)では、直近5シーズンで優勝と準優勝が2度ずつ。その2度の準優勝も、レギュラーラウンドは1位通過と、間違いなく近年の日本バレー界をけん引するチームの一つだった。

 だが歴史を振り返れば、苦労する時間の方が長いチームだ。

 日本専売公社の茨木工場が創業された1956年、9人制の社内同好会として誕生した。6人制への移行を経て、1969年にスタートした2部リーグ相当の実業団リーグに参戦。日本リーグ入りを目指したが、昇格どころかまさかの降格という憂き目に遭う。10年後に実業団リーグ復帰を果たすが、1年で降格。再び実業団リーグに戻るのに、11年を費やした。

 Vリーグにようやく到達したのは、1996年のことだった。その年に現在も使う体育館が兵庫県西宮市に竣工した。現在もホームタウンを兵庫県と大阪府とするのは、こうした歴史の名残である。

 Vリーグ昇格後も、3度の降格を経験した。準優勝が2度あるが良い時期は続かず、2010-11シーズンには初優勝するが、これは東日本大震災によりシーズンが中止された「暫定優勝」とでもいうべきものだった。

 潮目が変わったのは、現役時代に日本代表としても活躍し、「闘将」とも呼ばれた吉原知子監督が就任した2015年だった。新体制初年度でV・プレミアリーグ昇格を果たすと、翌2016-17シーズン年には復帰1年目ながら4位に食い込む大健闘。2019-20シーズンに文句なしの優勝を飾ると、続く2020-21シーズンには連覇を達成した。

 オフに東京五輪金メダリストの米国代表アンドレア・ドルーズの移籍、日本代表リベロ小幡真子の引退など多くの主力が去った2022ー23シーズンは5位と苦しんだが、昨季はレギュラーラウンドで全勝。完全優勝が期待されながら最後の最後、ファイナルで敗れはしたが、準優勝と反発力を示した。

このオフの動き:選手の入れ替わりを受け転換期へ

 リーグが新時代に入るように、今季のマーヴェラスは新しいサイクルに入ろうとしている。

 9シーズンにわたってチームを率いた吉原監督が、この夏に退任した。後任として、母国のアルゼンチン代表やポーランド代表を率いたダニエル・カステラーニ監督が就任する予定だったが、健康上の理由で辞退。急きょ、コーチとしての入団が決まっていた酒井大祐が、監督に昇格することが発表された。

 選手として10シーズン以上も男子チームのJTでプレーし、いち早くプロフェッショナル契約に切り替えるなど、もともとプロ意識が備わっている人物だ。これまで大学の監督や他チームでコーチを務めた経験もあり、新しい挑戦に腕を撫していることだろう。

 コート内でも入れ替わりがあった。日本代表の籾井あき、和田由紀子らが退団。一方で、それぞれが抜けたポジションにはセッター山下遥香、アウトサイドヒッター志摩美古都と実力者を獲得。ともにPFUからの移籍で、すでに築いたコンビネーションを活かせる強みもある。オポジットにはベルギー代表のリセ・ファンヘッケが入った。すでに日本で2シーズンプレーしており、適応に不安はない。

注目選手:宮部愛芽世

 楽しみな新人も入ってきた。大学バレー界の顔の一人だった大山遼と、宮部愛芽世だ。宮部は身長173センチながら最高到達点は303センチと、ジャンプ力を活かした攻撃力が光り、東海大学在学中に日本代表に選ばれている。

 宮部は自ら「目立ちたがり屋」と話すように、どんどんと前に出てチームを引っ張っていってくれそうなキャラクター。すでに内定選手として昨季のリーグ戦にも出場しており、同じく日本代表の「宮部藍梨の妹」という枕詞は、もう不要になりつつある。

 キャプテンの田中瑞稀はシーズン開幕を前にした会見の席で、チームが大きく変わったことを認めつつ、粘り強さなどの良さを継承しつつ、パワーアップした攻撃など新たな魅力を打ち出したいと話した。

 フレッシュな顔ぶれで、新しいリーグへ――。変化を恐れない強豪が、新時代への扉を開こうとしている。