「すごく新鮮でしたし、自分自身楽しめたことが一番よかったです」
2月1日に行われたSVリーグ男子のオールスターゲームズ。リーグ最年長45歳のミドルブロッカー・松本慶彦(VC長野トライデンツ)は、久しぶりの舞台を満喫したようだった。
「パフォーマンスを出せるかが心配だったんですけど、なんとかギリギリ行けたかなと思います(笑)。代表に入っている人や、世界トップクラスの選手と同じコートに入ってみると、やっぱりプレーの信頼感が違うし、ボールタッチが上手い。本当に落ち着いてボールを扱っているなと。めちゃくちゃ刺激になりましたね。この歳になってくるとなかなか経験できることでもないので。改めて、頑張んなきゃなと思いました」
27歳で北京五輪に出場し、その後も第一線で活躍し続けてきた。今季は日本製鉄堺ブレイザーズからVC長野に移籍し、自身の持つ最多出場記録を更新し続けている。レジェンドは、まだまだ成長したい、吸収したいと貪欲だ。

だからこそ45歳の今もトップリーグでスタメンを張れるのだが、その松本のモチベーションの一つが、高校3年生の息子・凛虎(りんと)の存在だ。
凛虎は今年の春高バレーで準優勝した清風高校のセッター。高校入学後は腰の分離症で練習できない苦しい時期もあったが、我慢強く努力を続けてきた。昨年までは藤本希槻、今年は2年生の森田陸という力のあるセッターがいたこともあり、正セッターは掴めなかったが、チームが苦しい時に流れを変えたり、ブロックの高さを出すために前衛で投入されるなど、求められた場所でしっかりと仕事を果たした。

今年の春高初戦、かつて岡谷工業高校のエースとして優勝を果たした父・慶彦も応援に駆けつけた。息子にとって最後の春高。本当は会場で最後まで見届けたかったが、SVリーガーの父には試合も練習もある。準決勝、決勝が行われる1月10、11日にはVC長野も試合があり、練習にも出なければならないため会場を離れたが、伝えたいメッセージはしっかり伝えた。
「会場では会えなかったんですけど、LINEで『自信を持って。コートに立ったら全力で、まずは楽しむこと。お互いに試合頑張ろう』と言ってくれました」と凛虎は笑顔で明かした。
親子が同じ日にSVリーグと春高で戦うだけでも快挙だ。しかも準決勝の駿台学園高校戦で、凛虎は先発出場。第1セット2-3で森田と交代したが、4連覇を狙う前年王者の意表をついた清風高が流れを掴み、第1セットを先取した。
「今朝のミーティングで(先発を)言われました。一つの戦略として、自分の高さを活かすことと、相手をびっくりさせて、単調にさせられればと。丁寧に、みんなを信じて、トスを上げました」
清風高の山口誠監督は試合後、凛虎のスタメン起用について、「当たりじゃないですか?」と不敵に笑った。
「仕掛けました。S3(セッターが前衛センター)スタートで行こうという話をアナリストとしていたんですけど、そうすると陸の(ブロックの)ところから絶対攻められるよねと。じゃあ凛虎で行って、相手を面食らわそうってことで。凛虎は行けるから。『お前はなんぼも我慢してやってきて、今大会も頑張ってる。お前は絶対大丈夫だから!』と話しました。S2(セッターが前衛ライト)のブレイクが終わるまでは凛虎で行って、そこから陸に代えていこうと。本当に駿台学園はデータで考えてくる頭のいいチームなので、逆手にとって。こっちが攻めないと、受けるとやられますから」
第2セット以降は森田がスタートで入ったが、凛虎は劣勢の場面で交代して森田を助けたり、前衛で入ってブロックを決めるなど、全力で流れを引き寄せた。ベンチにいる時も、タイム中は1年生エースの西村海司に寄り添い、「ブロック高いけど、みんなフォローしてくれてるから絶対大丈夫や」と声をかけ続けた。試合はフルセットの壮絶な試合となるが、第5セットは15-13で清風高が競り勝ち、7年ぶりの決勝進出を果たした。
アップゾーンで祈りながら迎えた勝利の瞬間を、凛虎はこう振り返った。
「もう鳥肌が立って……嬉しかったです! 海司が足をつって(出口)大誠が代わりに入りましたけど、全然大丈夫やと思って信じていました」
決勝では東山高校に敗れ、優勝には届かなかったが、堂々の準優勝だった。
親子二代で決勝の舞台に立ち、しかも凛虎が掴んだ銀メダルは、松本家にとって大きな意味があった。慶彦は言う。
「今は春高に3回出られるけど、僕らの時代は(春高が3月開催だったため)1、2年の2回しか出られなかった。僕は1年生の時に銅メダルで、次の年に金メダルを獲ったんですけど、銀メダルだけなくて。だから今年息子が銀メダルを獲って、金銀銅揃ったんです。ピースがハマった、みたいな(笑)」
顔をくしゃくしゃにして笑った。
大会後は息子を「お疲れ様。頑張ったね」と労いながらも、「もちろん3年生が最上級生で、ある程度中心になってやっていたと思うけど、やっぱり1、2年生の力もないとあそこまでは行けなかったと思うから、3年生だけが頑張ったみたいには思わないでほしい。3年生は引退するけど、ちゃんと最後まで1、2年生をサポートしてあげないと。準優勝ではあるけど、今度は追われる立場になると思うから」と説いて、まだ役割は終わりじゃないよと釘を刺した。
凛虎は高校卒業後、大学で高みを目指す。
いつか同じ舞台で……それが父の夢だ。
「僕も頑張んなきゃいけない。なんとかトップリーグでやり続けられるように、頑張りたいなと思っています」




