[写真]=須田康暉

バレーボールの試合を見ていると、得点数やアタック決定率など、数字でわかるプレーに目が行きがちだ。派手なスパイクやサービスエースは、誰が見てもすごいとわかる。

しかし、バレーボール経験者が注目しているのは、数字に表れないプレーだ。今回は、経験者ほど「今のプレーが大きい」と感じる、数字に表れない5つのプレーを紹介する。

  • ブロックのシステム
  • フェイクセット
  • 苦しい場面でのリバウンド
  • セッターの組み立て
  • 攻撃につなげる2本目のカバー

本記事を読むと「この選手は他の選手と何が違うのか」「なぜあのチームは守備がいいのか」など、バレーボールをより深く理解できて、観戦がさらに楽しくなるだろう。

ブロックのシステム|リードorコミット

[写真]=兼子愼一郎

ブロックというと、相手のスパイクを跳ね返すプレーを思い浮かべる人が多いだろう。もちろん、相手のスパイクをシャットアウトするのは、最もわかりやすいブロックの成功だ。

しかし毎回ブロックで得点を取れるわけではない。むしろ重要になるのは、相手のセッターにプレッシャーを与えることと、打たせるコースを限定することだ。ブロックには大きくわけると、リードブロックとコミットブロックの2つがある。

  • リードブロック:相手セッターがトスを上げた後に反応して跳ぶ
  • コミットブロック:特定のアタッカーに狙いを絞って跳ぶ

リードブロックは、相手のトスを見てからブロックに入るため、レフトとライトに幅広く対応できる。ただし反応してから動くため、速い攻撃には間に合わないことがある。コミットブロックは、ミドルブロッカーの戦術だ。トスが上がる前に的を絞って跳ぶため、100%の高さで対峙できる。しかし読みが外れてサイドへトスを上げられたら、ブロッカーが1人いない状態になる。ハイリスク・ハイリターンの戦術だ。

コミットブロックは、相手のセッターに対して「ミドルはマークしているよ」とプレッシャーを与えられる。徹底マークされている状況でミドルを使うのか、サイドへ配球してブロックを散らすのか、セッターは考えざるを得ないからだ。大切なのは、ブロックとレシーブが同じ意図を持っていることだ。

わかりやすいのは男子の日本代表だ。相手のライト攻撃のとき、アウトサイドヒッターのブロッカーは、クロス側のコースに寄って跳んでいる。ストレート側には、リベロの山本か小川がいるからだ。ブロックとレシーブの関係が、日本のディフェンス力を支える要因である。

そして重要になるのが、コースの限定だ。ブロッカーがクロスを塞げば、レシーバーはストレートに構えればいい。逆も同じ。つまりブロックが「ここは塞ぐ」と決めれば、レシーバーは迷わず守れる。

経験者がブロックを見る際に注目するのは、止めたかどうかだけではない。リードとコミットどちらで対応するのか、どのコースを塞いで守備をどう助けたか。ブロック1本にも、チームとしての狙いが詰まっている。

フェイクセット

[写真]=須田康暉

フェイクセットは、アウトサイドヒッターがバックアタックを打つモーションから、そのまま打つか、トスを上げるかを選択するプレーだ。日本代表の石川祐希や髙橋藍が得意としている。

フェイクセットは、1本目をセッターがコートの中央に上げるところから始まる。後ろからアウトサイドヒッターが、バックアタックのモーションに入り、そこから打つかトスを上げるかの選択をするのだ。

相手ブロッカーからすると、跳ぶか跳ばないかの判断が難しい。打たれるならブロックする必要があるが、トスを上げられたら別のサイドへ対応しなければならないからだ。さらにサイドでも、レフトかライトかわからない。まさにブロッカー泣かせのプレーと言えるだろう。

ただしフェイクセットは、難易度が高いプレーだ。最後の瞬間まで、スパイクを打つフォームを崩せない。トスを上げる気配が早く出れば、相手ブロックは落ち着いて対応できる。逆に、打つ意識が強すぎると、味方へ正確なトスを上げられない。バックアタックに入るスピード、空中での姿勢、ボールを触る位置がそろって成立する。

フェイクセットは、相手ブロックを迷わせるプレーだ。次のラリー以降も「2本目で打ってくるかもしれない」という警戒が残り、相手の反応を遅らせる。数字には残りにくいが、試合の流れを変える駆け引きだ。

リバウンド|攻撃回数を増やし、相手に得点を与えない判断

[写真]=兼子愼一郎

リバウンドは、スパイカーがブロックにわざとボールを当てて、自分のチーム側にボールを返すプレーだ。

トスがネットに近いときや、アタッカーが十分な助走を取れないときは、打てるコースが限られる。高いトスに対して相手ブロックが完成していれば、強打だけで決めるのは難しい。そこで必要になるのがリバウンドだ。

相手ブロッカーにボールを当て、自コートへ戻してもう一度攻撃を組み立てる。ブロックアウトで即得点を狙うのではなく、ラリーを続けるための選択である。

実はリバウンドは、思っているよりも難易度が高いプレーだ。まずはリバウンドを取るかどうかの状況判断が難しい。トスが上がった一瞬で、判断しなければならないからだ。次にボールをブロックに当てる技術だ。ボールが弱すぎると、真下に落とされる。手のひら以外に当ててしまうと、ボールが予想外の方向へ飛んでいくことがある。ほどよい力で手のひらに当てるのが理想なため、思ったより技術が必要なのだ。

苦しい場面でのリバウンドは、得点を取りにいくプレーではないように見える。しかしリバウンドは、「決められなかった」1本を「次で決める」1本へ変えられる重要なプレーだ。

セッターの組み立て

[写真]=Volleyball World

セッターの役割は「いいトスを上げる」だけでない。重要なのは相手ブロックに読まれない配球だ。セッターがブロックを振りきれるかどうかで、スパイカーの決定率が変わると言っても過言ではない。

例えば、ミドルブロッカーを連続で使う場面がある。同じ攻撃を続けると、相手のミドルブロッカーは中央を意識しなければならない。そこでレフトやライトへ配球すると、ブロックは遅れやすい。ネットから離れた位置でのトスアップで、ミドルを使うのも同じ意味合いだ。「離れてもミドルもあるかもしれない」と迷わせる要因となる。

得点を決めたシーンで注目されるのはスパイカーだが、実はセッターが相手ブロックと駆け引きをして、マークさせなかったという場面も多い。トスの配分をチェックして、セッターの組み立てを考えられると、より深くバレーボールが楽しめるだろう。

2本目を攻撃につなげるカバーの質

[写真]=兼子愼一郎

バレーボールの試合では、強打を拾ったボールがコートの外側へ飛んだり、フェイントをギリギリで拾って、少しだけボールが上がる場面がある。そこで重要なのが、2本目のカバーの質だ。苦しい状況でも2本目を打てる位置まで持っていけるかは、その後の展開を大きく左右する。

例えば強打を拾ったボールがコート外へ飛んだ場合、ただコート内に戻すだけだと相手にチャンスボールを返すだけになってしまう。一方で打てる位置まで持っていければ、リバウンドやブロックアウトを狙って得点につなげられるのだ。

以下の動画では、小川がギリギリに上げたボールを、大塚がコート外から宮浦が打てるトスに変えた。チャンスボールを返してもおかしくない場面で、2本目の質が得点につながったシーンである。

2本目のカバーは注目されにくいが、チャンスボールを返して決められるのか、攻撃して1点を取れるのか、2点分の違いがあるとても重要なプレーだ。

数字に表れないが重要な5つのプレー

ブロックで打たせるコースを限定させる。フェイクセットでブロッカーを迷わせる。苦しい場面でリバウンドで攻撃をやり直す。相手との駆け引きでセッターがトス配分を考える。コート外からでも打てる位置までボールを持っていく。

どのプレーも数字には表れないが、バレーボールにおいて重要なプレーだ。バレーボール経験者が注目するのは、最後の1本だけではなく、1つ前のプレーにある。強打を上げたのはブロックがコースを限定したから、得点できたのはセッターが駆け引きをしてブロックを振り切ったから。数字に表れない1つ前のプレーに注目すると、バレーボール観戦がもっと面白くなるだろう。

この記事を書いたのは

重村暁希

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