日本のリベロとしてチームを支える小島満菜美 [写真]=金田慎平

 最後は勝利とはならなかったものの、女子日本代表にとっては過去最高成績となる銀メダルの余韻が残るなか、表彰台では大会のドリームチームの発表、つまり個人表彰が行われる。ネーションズリーグ2024ベストリベロ賞は小島満菜美。その名前が読み上げられると、当の本人は目を丸くした。

「まずびっくりしました。見ていて(決勝を戦った)イタリアのリベロは世界一と称されるだけのことはあるなと感じていましたし、まさか自分が選ばれるとは思っていなかったのが正直な感想です」

 身長158㎝の小島の両隣にはイタリア代表の面々が並び、頭一つ分もしくはそれ以上の開きが。それもまたこの勲章の価値を表していた。驚きも隠さず、同時に誇らしくも映った小島はその個人タイトルをこのように語った。

「自分が獲った賞というよりかは、日本のレシーブが評価された賞だと思っています。私一人ではなく、(福留)慧美やきらさん(山岸あかね)、今までの日本のリベロとしての評価だと」

ネーションズリーグのベストリベロに選ばれた小島満菜美 ©Volleyball World

 今年の代表シーズンに先駆けて、2023-24 Vリーグで小島はベストリベロ賞を初めて受賞した。その手応えとともに臨んだ代表活動で、つかんだ勲章だったが、「あくまでも日本のレシーブが認められた賞だな、という印象でした」と口にするあたりが、チームプレーヤーの小島らしかった。

 今の女子日本代表の試合映像を見ていると、タイムアウトやセット間でひときわマイクに拾われる音声がある。その声の主はたいがいキャプテンの古賀紗理那か小島だ。これは眞鍋政義監督も認めるところで、指揮官は「私がいちばん話していません。選手たちが話をしている、それはこの3年間で変わったと感じます。セット間なんて監督の話は入ってこないものですよ」と笑う。

 古賀と並んで積極的に声を発する小島は、そのアクションに込める思いをこのように明かす。

「勝つために今、このチームに何が必要かを考えています。(古賀)紗理那は視野が広いので全体から、特にオフェンス面をよく見てくれていると感じますし、私は自分の視点から見られるものを話すことを意識しています」

 勝利するために。それはチームの一員として、そして一人のバレーボール選手として、小島が常々抱いている信念だ。

 例えば今年のネーションズリーグ予選ラウンド第3週福岡大会のカナダ戦では第2セット終盤、ややミスが目立ち始めた石川真佑がベンチに下がると、すぐさま声をかける小島の姿があった。

「(石川)真佑がオフェンスで苦しんでいる印象を持っていました。私が見ていて、(岩崎)こよみさんのトスが高くて、真佑が少し早くアタックに入っている感じがしたので、『そこはもう少し待ってから入ったほうがいいよ』と伝えました。

 もちろんセッターとスパイカーが話すことがいちばんだと思いますが、ときにはわからない状況もあると思うので。第三者の視点はリアルタイムで。スタッフの方々も話してくれますが、タイムアウトは2回しかありませんし、選手間で話せるときは話していこうという意識でいます」

キャプテンの古賀紗理那と共にチームに声を掛ける場面が目立った小島満菜美 [写真]=金田慎平

 そこにポジションは関係ないのである。と同時に、自身のレベルアップにも余念がない。サーブレシーブに関しては眞鍋監督からも要求されてきたことであり、所属先のクラブでもトレーニングに加え、海外の選手や日本代表の映像を見ては、「自分に真似できることはないか」「このときはどういう体の使い方をしているんだろう」と研究した。その成果がVリーグでのベストリベロ賞、そして日本代表におけるパフォーマンスを生んだのだ。小島に、その向上心に源を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「もちろん、自分がうまくなりたい気持ちでいます。自分でももっともっと成長できると思えているからこそ頑張れる、それはあるかもしれません。それに自分が上達することがチームにとってもプラスになるじゃないですか。それはすごく大きなと思います。自分がうまくなれば、もっもっとチームが強くなるわけですから」 

 選手一人のレベルアップが、チームを強くする。チームの強化が、勝利をぐっと近づける。小島のストイックな一面は、果たしてチームプレーの一つであるというわけだ。

 今回のパリ五輪では本登録12名のうち、リベロは小島と福留の2人が選出された。ネーションズリーグでの戦いを見ても、小島はサーブレシーブ、福留はディグ、でそれぞれ起用されると予想される。

「私の場合はサイドアウトを早く切ることが役割。リベロはチームを組織的に動かすために必要な存在だと思うので。その役割をまっとうすることが大事になってきます」

 ネーションズリーグを戦い終えてからパリ五輪までのおよそ1ヵ月。いや、おそらくは本番に入ってからも。小島はとことん自分自身に磨きをかけるに違いない。

「ベストリベロ賞にふさわしい実力をまだまだ持っていないので。その力を身につけていかなければと思いますし、この1ヵ月でどれだけ成長できるか。日本がメダルを獲得するためにレシーブは肝になってくるので、その中心を担うポジションとして自分の成長は必須。試合を通しながらも、どんどん成長していけたらなと考えています」

 チームを勝たせるために、できるかぎりのことをする。それだけだ。