インクルーシブバレーボール体験会に参加した仲本選手と子どもたち[写真]=OSAKA BLUTEON
インクルーシブバレーボール体験会に参加した仲本選手と子どもたち[写真]=OSAKA BLUTEON

 3シーズン目を迎えた大同生命SV.LEAGUEは10月中旬に開幕し、全国各地で熱戦が繰り広げられている。

 昨シーズンはWOMEN・MENを合わせて143万4515名を動員し、初年度の2024-25シーズンから約128%アップを達成した。今シーズンは髙橋藍がサントリーサンバーズ大阪からポーランドのルブリンへ、佐藤淑乃がNECレッドロケッツ川崎からイタリアのヴェロ・バレー・ミラノへ移籍するなど、リーグの顔とも言える人気選手が海を渡ったなかで、「動員150万人」を目標に掲げている。

 SVリーグが掲げる最大の目標は2030年までに「世界最高峰のリーグ」になること。そのためのミッションとして、「強く、広く、社会とつなぐ」をスローガンに掲げる。それぞれのワードに込められた思いは以下のとおり。

強く=競技力を高め、世界最高峰レベルのプレーやチームを目指す。

広く=ファン層や認知度を拡大し、バレーボールの価値や魅力を日本全国に広く届ける。

社会とつなぐ=ホームタウン活動や地域貢献、ウェルビーイング(健康・幸福)の推進を通じて、バレーボールで社会や地域を元気づける。

 今回は「社会とつなぐ」に焦点を当て、SVリーグ男子の昨シーズン王者・大阪ブルテオンのホームゲーム施策をリポート。「バレーボールで社会や地域を元気づける」ために、現場ではどのような取り組みが行われているのか、掘り下げて紹介する。

 快晴に恵まれた11月1日、大阪Bのホームアリーナの一つ、大阪市のAsueアリーナ大阪には大勢のお客さんが詰めかけていた。チケットは前売りでソールドアウト。満員御礼の7476人でスタンドは埋め尽くされた。

 この日は大阪Bのユニフォームサプライヤーである、スポーツメーカー「hummel」のプレゼンツマッチで、両者の協業によりさまざまな施策が実施された。昨シーズンの「手話シャツ」に続いて、今シーズンは「パラアートシャツ」を共同で展開。これは知的障がい者支援を目的とし、実際にパラアーティストが描いた作品がシャツのデザインに採用されている。選手たちは11月の1カ月間、ウォーミングアップ時にこのパラアートシャツを着用する。

選手たちが着用したパラアートシャツ。右袖にはオレンジリボンのロゴが入り、クラブエンブレムもオレンジカラーに[写真]=SVリーグ

 コンコースには「手話体験ブース」や、大阪府との連携事業「オレンジリボンPRブース」(児童虐待防止の啓発ブース)が出展。試合前にはパラスポーツの座位バレーボール女子日本代表選手によるサーブセレモニーがあり、2セット目を終えたあとのインターバルには、手話バレーボール日本代表選手による「手話応援」のレクチャーも行われた。

コンコースに設けられた手話ブース。来場者が気軽に手話を学べるとあって賑わっていた[写真]=SVリーグ

 試合は大阪Bが第1セットを接戦の末に落としたものの、ホームでの大声援を受けて第2セットから3セットを連取して逆転勝ち。選手とファンが一体となって盛り上がり、アリーナには熱気が充満していた。

 そして試合後には熱気冷めやらぬコート上で、インクルーシブバレーボール体験会を開催。事前にパラアートシャツをインターネットで購入した方が参加でき、デフバレーボール日本代表選手、座位バレーボール女子日本代表選手に加えて、大阪Bからは中村駿介選手、仲本賢優選手、伊賀亮平選手、西山大翔選手の4選手が参加した。

 インクルーシブバレーボールとは、障がいのある・なしにかかわらず、年齢や性別、国籍も関係なく、すべての人々が一緒に同じ空間で楽しむことを目的としたもの。

 4~5人のグループに分かれて、風船をボールに見立ててバレーを行う。徐々に風船の数を増やしていき、落とさずにラリーを続けていく。聴覚障がい者が行うデフバレーでは、ハンドサインやアイコンタクトが重要になり、風船を落とさないためには周りの選手とうまく息を合わせることが大事。参加したファンの皆さんはデフバレー選手からアドバイスを受けつつ、楽しそうにプレーしていた。

インクルーシブバレーボール体験会の様子。大阪Bの選手とファンが一緒にバレーを楽しんだ[写真]=OSAKA BLUTEON

 一方の座位バレーボールは、臀部(お尻)を床につけたまま行うパラスポーツ。移動する際にも腕を使うため、腕はレシーブしたり、アタックしたり、移動したりと大忙しになる。コートは片面が5メートル×6メートルと通常のコートよりもかなり狭い。そのため、ボールスピードを速く感じることになり、素早い判断力も要求されることになる。体験した西山選手は、「手の力で移動しないといけないぶん、手をどう使うかの技術が求められるバレーだと感じました。それだけに、みんなで助け合うことが必要になってくる競技だと思います」と感想を語った。

座位バレーを体験する仲本選手と子どもたち[写真]=OSAKA BLUTEON

 座位バレーボール女子日本代表の菊池智子選手は、「日本はバレーボール人口が多いはずなのに、座位バレーは全然知られていません。この間のアジアパラ競技大会もお客さんが少なくて……。そういった意味で今回は皆さんに知ってもらう機会になったと思うのでよかったです」と笑顔を見せていた。

 ちなみに、菊池選手によると座位バレーをプレーする選手は障がい者よりも健常者が圧倒的に多いそうだ。その主な理由は、「難しくて、楽しいから」。気になった人はぜひ一度、体験してみてほしい。

 インクルーシブバレーボール体験会に参加した一般の方は、「大好きなブルテオンが主催するイベントなので『楽しいだろうな』と期待して参加しました」と参加の動機を語り、「座位バレーが、通常のバレーとほぼ同じルールでやっていると聞いてビックリしました。ブルテオンを通して知らなかったことを知れるのはうれしいです」と話してくれた。

 大阪Bはホームゲームでの施策以外にも、SVリーグ化する10年以上前、実業団チームの頃から地元の小学校や幼稚園を巡回訪問するなど、ホームタウン活動や地域貢献活動を推進してきた。

 2024年にSVリーグがスタートし、注目度や人気が飛躍的に向上したことで、大阪Bの望月大亮事業本部長は、「社会における責任も増している」と言葉に力を込める。

 「世界最高峰のリーグを目指す上で競技性はもちろん、事業性も社会性も世界最高レベルで理解をしていなければいけません。理解した上で体現する。体現したことをいろいろな人に共有する。共有することが、我々がミッションに掲げる『ALWAYS TO THE TOP, ALL WAYS TOGETHER(常に頂点へ。全途を共に)』につながります。ただし、イベントをしたからといって何かを解決できるとは思っていません。皆さんに気づきを得てもらうことが重要で、やはり継続していくことがすごく大事だと思っています」

 プロスポーツクラブとして社会や地域に対して、どのような価値をもたらすことができるのか。急速に発展するSVリーグにおいて、各クラブは試行錯誤しながらも懸命に取り組んでいる。社会貢献活動などのコート外の挑戦もまた、「世界最高峰リーグ」になるための重要なファクターであることは間違いないだろう。今後もさまざまな施策やイベントが行われていくはずだが、どれだけ多くの人を巻き込めるか。コート上の戦いとともに、各クラブのコート外での挑戦にも注目していきたい。

取材・文=山本剛央