[写真]=東京グレートベアーズ

 今年、スタートを切った大同生命SVリーグにて、開幕から快進撃を続けているのが東京グレートベアーズだ。12月9日現在、10勝8敗の5位。昨シーズン、東京GBより上位だったチームからも勝ち星を挙げ、競り合う激闘を繰り広げている。

 その中でも大きな輝きを放っているのは、主力アタッカーとして活躍するアウトサイドヒッターの後藤陸翔だ。昨シーズンは内定選手としてチームに合流すると勢いをもたらし、東京GBは前身のFC東京時代も含めて過去最多の17勝を挙げた。

 入団2シーズン目を迎えた今季も出色のパフォーマンスを見せる後藤にチームのことや自身のことを聞いた。 

※取材は11月14日に実施

昨季ファイナル進出を逃した悔しさが原動力に

――昨シーズン終了後から今シーズンの開幕に向けて、後藤選手が一番強化してきたことは何ですか?

後藤 まずは体力作りですね。昨シーズンは内定選手として12月から合流して、約3ヵ月戦いました。シーズンの半分ぐらいの試合に出場して、その中でも体に痛いところがあったり、疲労が溜まってきてパフォーマンスが落ちた経験があったので、まずはシーズン通して戦える体を作ろうと思って練習してきました。あとは、技術的なところではサーブレシーブですね。オフェンスは自分で自信を持ってやっているところはあるので、ディフェンスの部分にこだわって、重きを置いて強化してきました。

――トレーニングの手応えは感じますか?

後藤 数字を見ても昨シーズンよりジャンプ力が上がっていますし、土曜日の試合が終わった後、次の日曜日の試合に関しては、昨シーズンは体がうまく動かなかったり、疲労を感じたりしたのですが……。まだリーグ序盤ですけど、今シーズンは疲労を感じないので、しっかり戦えているのはトレーニングの効果なのではないかなと感じます。

――前節(11月9~10日・ジェイテクトSTINGS愛知戦)も2試合ともフルセットでしたね。

後藤 そうですね。10セットですね。それでも次の日も全然大丈夫でした。リカバリーの面でも気を付けているのでその成果だと思います。

――以前、記者会見で古賀太一郎選手が後藤選手について「この夏、一番練習した選手」と言っていました。人一倍練習したという自負は?

後藤 はい、練習したという自信はあります。あまり自分で言うことじゃないけど(笑)。やってきたことに対しての自信はあります。コーチだったり、いろいろな人が自分のためにエネルギーと時間を使ってくれたので、周囲への感謝を常に忘れずコートで戦っています。自分が今、こうして調子がいいことや、いいパフォーマンスを見せることが一番の恩返しだと思ってプレーしています。

――オフ期間中、そこまで自分を追い込もうと思ったきっかけは何ですか?

後藤 昨シーズン、1勝差でファイナルを逃したじゃないですか。それが悔しかったし、あと、日本代表に入れなかったことも悔しかった。その2つですかね。そして、もっと上に行きたいというシンプルな気持ちが強かったので、一日一日の価値を再確認して、毎日練習に臨んだ結果が練習量に繋がっていったと思っています。

――日本代表メンバーから外れたのはショックでしたか?

後藤 ショックというより『何かが足りなかったんだな』と再認識させられる機会でした。オリンピックイヤーでしたから、新しく代表に呼ばれる選手が少ないせいで選ばれなかったという見方もありますが、そこは毎年毎年、結果を求めていかないといけないですから。

選手全員がAチームというグレートベアーズの考え方が浸透

――そんな中、今シーズンを迎えて、ここまでの勝利数や自身のプレーはどう感じていますか?

後藤 チームとしては昨シーズンよりいいスタートを切れているのは間違いないです。そこで自分が主力として出場している責任感は昨シーズンより強く芽生えています。自分のパフォーマンスでいえば、間違いなく土日にムラがなくなりました。それは自分でも一番評価したいところです。やってきたことが試合で出せているのは良かったと思います。

――グレートベアーズは「全選手がAチーム」とよくカスパー・ヴオリネン監督が言っています。その中でも、アウトサイドヒッターがオポジットに入ったり、その逆があったりと出場するポジションが多彩ですよね。

後藤 はい、僕も練習試合ではオポジットで出場しましたし2枚替えでオポジットに入ったこともあります。最初は本来のポジションではないので戸惑ったときもありますが、プロとして今、一番何が必要かと言ったら、与えられたチャンスを生かして監督の要求に100%応えることだと思いました。監督からの要求に応えることができれば、それによってチーム内での自分の価値が上がりますし、そうやって考えると戸惑いはなくなりましたね。

――今シーズン、開幕戦のウルフドックス名古屋やサントリーサンバーズ大阪、ジェイテクトSTINGS愛知戦など昨シーズン、グレートベアーズより上位だったチームとも競り合っています。強豪チームに対する苦手意識のない若い選手の活躍が大きい気がします。

後藤 でも、僕らが1番忘れてはいけないのは古賀さんだったり深津(旭弘)さん、ヒデ(星野秀和)さん、柳田(将洋)さんというベテランの方々が、僕たちがやりやすいような環境を作ってくださっていることです。僕たち若手が伸び伸びプレーできている、力を発揮できている雰囲気を作ってくださっていることを常に忘れないようにしています。

あとは僕の代わりの選手はいくらでもいる。その選手たちが後ろに控えてくれているからこそ、全力を出し切ってプレーできるというのが大きいですね。気持ち的にラクだし、1人で背負わない、背負い過ぎなくてもいいという感覚でプレーできる。若手が伸び伸びプレーして生まれた勢いが、チーム状態に表れているんじゃないかと思っています。

4年ぶりに再会した髙橋藍選手「ブロックアウトはねらって取りました」

――有明アリーナでのサントリー戦の記者会見で髙橋藍選手とは4年ぶりに会ったと話していました。高校時代には対戦はあったのですか?

後藤 いえ、あの試合が公式戦初対戦でした。もともと高校2年生のときに行われたオールスター戦で一緒になって、そこで仲良くなったんですよ。でも藍は気づいたらイタリアに行ってて(笑)。大学でも対戦したかったんですけど叶わなくて。4年ぶりで初めてネットを挟んで試合をしました。

――バチバチと火花が散って見えました。

後藤 もちろん! 藍が相手じゃなくて、誰が相手でも〝負けるわけにはいかない〟という気持ちでいるし、自分が自信を持ってプレーすればするほどいいパフォーマンスが発揮できると思うので、試合をするときの気持ちはいつも通りでした。でも1対1で藍がブロックに跳んだときにブロックアウトを取ったスパイクは、実は試合が始まったときからねらっていました(笑)。

――高め合えるライバルのような感覚ですか?

後藤 そうですね。彼が今、日本代表の要としてやっているのはすごいことだと思います。同じ世代の選手があれだけ世界で闘っているのを見て、僕たちも感じるものはあります。そこに対して「負けていられない」という思いもあります。今シーズン、彼が日本に帰ってきて、僕のモチベーションにも繋がっていますね。

――普段はどんな話を?

後藤 雑談しかしないですね(笑)。この間、久しぶりに会えたときには海外と日本のバレーの違いについても話をしましたけど。それ以外は、ほとんど雑談です。藍は変わってなかったです。相変わらずいいやつでした。ずっといいやつなんです。