今年、スタートを切った大同生命SVリーグにて、開幕から快進撃を続けているのが東京グレートベアーズだ。12月10日現在、10勝8敗の5位。昨シーズン、東京GBより上位だったチームからも勝ち星を挙げ、競り合う激闘を繰り広げている。
その中でも大きな輝きを放っているのは、主力アタッカーとして活躍するアウトサイドヒッターの後藤陸翔だ。昨シーズンは内定選手としてチームに合流すると勢いをもたらし、東京GBは前身のFC東京時代も含めて過去最多の17勝を挙げた。
入団2シーズン目を迎えた今季も出色のパフォーマンスを見せる後藤にチームのことや自身のことを聞いた。
※取材は11月14日に実施
東京GBに入団してから見えてきた日本代表。今はプロとして1日を大切に過ごす
――バレーボールを始めたころのことを教えてください。以前は、身長はさほど高くなかったと聞きました。
後藤 そうですね。中学1年生で151cmとか152cmとか、それくらい。背が低かったのでリベロをやっていました。2年生のときに175cmくらいまで伸びて、そこでミドルブロッカーとアウトサイドヒッターをやることになって、3年生で184cmまで伸びました。3年間でめっちゃ伸びました!
――身長が伸びているときは、やはり見る景色が変わっていくのですか?
後藤 それが、意外と実感がないんです。自分が変わっていくのもわからない。気づいたら「あれ、184になってる! 3年前の自分は150くらいだったのに」という感じで(笑)。伸びてよかったですけど。
――後藤選手にとって日本代表が明確な目標になったのはいつごろでしょうか?
後藤 最初は憧れですね。行けるかなぁ、行けないかぁと思うくらいで……。昨シーズン、Vリーグに内定で入ってから、少し近づけたなって。自分のプレーに手応えを感じていたので、具体的に意識するようになったのはその時期くらいですかね。大学は大学で精一杯やっていたから。大学だと大学日本一を目指していたら日本代表まで意識が行かなかったという感じです。
――ちなみにビーチバレーボールでU-21日本代表に入りましたよね?そのときは日の丸を背負った感覚はありましたか?
後藤 当時、高校2年生の終わり頃で、それほど実感はわかなかったですね。めちゃくちゃビーチバレー歴が長かったわけではないし、普通に会場に行って、普通にプレーしてという感じでした。そもそもビーチバレーを始めて1年も経ってないぐらいの時期だったから、正直言うと代表戦と言われても、当時は実感がわかなかったです。
――現在所属している東京グレートベアーズはプロチームですが、後藤選手にとって『プロ』とはどんなことだと思いますか?
後藤 1日1日に価値を見出して、トライすることが大事だと僕は思っています。ただ漠然と今を過ごすんじゃなくて、何年後かの自分のために、今日1日をしっかり費やすこと。それがプロとしての自覚を持つということでもあります。それとバレーボールをするだけじゃないのが、プロとそのほかとの違いだと思います。トレーニングももちろんその中に含まれるし、生活も含めて自分の行動に責任を持つことですかね。
――大学から入団する際に、プロ以外の道と迷わなかったですか?
後藤 他のチームからもお誘いがあったんですけど、意外とあっさり決意できました。入団する前に古賀(太一郎)さんとお話をする機会があって「グレートベアーズと企業チームとで迷っています」と言ったら、いろいろと古賀さんの考えを聞かせてくださって。それで即決ですね。グレートベアーズにお世話になりますってすぐに言いました。
――バレーボールに集中できる環境というのが大きいですかね。
後藤 それもありましたし、もし企業に入ったら、ある程度は安泰の生活が待っている。でも、おそらくそういう環境だと自分は怠けちゃうというか「結果を残さなくてもいいや」というマインドになっちゃうと思ったから……。他の企業の選手はそんなことはないと思いますよ。でも自分の場合はそういう風に感じたから、あえて厳しい場所に身を置きたいと思いました。もっともっと上を目指したかったし、自分の価値を高めたかったから、プロという道を選びました。
憧れの選手、そして休日の息抜き法 「離れるのがつらい」存在とは?
――ところで、これまでバレーボールやってきた中で、1番心に残っている試合はどの試合になりますか?
後藤 僕は大学4年生の時の天皇杯準々決勝のウルフドッグス名古屋戦ですね。4年生だったので、その試合で引退だったのですが、とにかく全力で、自分の持っている100パーセントを出せた試合でした。出して、出した上で負けたので「ああ、上には上がいるんだな」と感じられた試合だったから、全く後悔がない試合でしたね。
――SV(当時はV)リーグのチーム相手に競り合っていましたね。
後藤 けっこういい試合をしたと思います。懐かしいなぁ。
――後藤選手の理想の選手像は?
後藤 その世代、時代で「ナンバーワン」と言われる選手になりたいです。今ならポーランドのウィルフレド・レオン選手とか、石川祐希さんもそうですけど、そうやって真っ先に名前が挙げられる選手になりたいです。その時代の一番になりたいという思いを常に持っています。
――では後藤選手が見た今の一番は誰ですか?
後藤 石川祐希選手か、ガペ(フランス代表のイアルガン・ヌガペト)か。石川選手は日本人が目指すべき選手ですし、ガペの遊び心のあるプレーもいいなぁと思いますね。両選手の良いところを真似していきたいですね。
――石川選手とはお話したことは?
後藤 僕、ないんですよね。お会いしたことがないので……。でも、よくテレビで石川選手を追ったドキュメンタリーを放映しているのを見てます。冷蔵庫にスケジュールのメモを貼っているのを見て、自分もちょっとずつ実行しています(笑)。ご飯も石川さんを真似てほぼ一緒のものを毎日食べてますね。リーグ中は遠征先や練習後に食事が用意されているので全く同じではないですけど、オフシーズンはすべて一緒のものを作って食べていました。ポトフとフルーツ、ヨーグルト、鶏むね肉か魚のどちらかでご飯と味噌汁。すごくシンプルです。ポトフは野菜が摂りやすいし、胃腸が温まるのでお勧めです。
――石川選手はいろいろな面でお手本なのですね。
後藤 そうですね。今はインターネットがあるので試合もそうですが、そういった生活の中の一面も知ることができる時代。自分に取り入れられることがあれば取り入れていきたいですね。いろいろ試して、合わないことは外していけばいいという考え方で取り組んでいます。今、シーズン中ですがトレーニングや食事の内容など、いろいろ試しながら生活しています。これは何年か継続してやらないと、すぐに結果が出るものではないので継続が大事だと思っています。
――ちなみにシーズン中の息抜き方法は?
後藤 ドッグカフェに行きます。実家の愛犬(トイプードル)がかわいくて、大好きで……。実家に一度帰ると次に東京に戻るのがつらいんです。離れるのがつらい。寂しいので休日にドッグカフェやペットショップに行って犬を見て癒されています。ドッグカフェでは、お気に入りの子ができても、苦しいですけど情を捨てて、またほかのカフェに行くんです。あんまり情が移っちゃうとすぐに会いたくなって胸が苦しいので(笑)。犬には本当に癒やされます。
――では最後に今シーズンの目標を聞かせてください。
後藤 まずは昨シーズン、成し遂げられなかったチャンピオンシップ進出を1番に考えています。チャンピオンシップに行けば、何が起きるかわからないところもあると思うし、優勝のチャンスはあると思っています。まずはチャンピオンシップに進出して、リーグ優勝を目指していきたいです。
――ファンの皆さんに一言お願いします。
後藤 ファンの皆さんは、ホームでもアウェーでも関係なくたくさんの方が試合を見に来てくださっています。「応援の熱量がすごいなぁ」といつも感謝しています。その応援がすごく自分にとっては力になっていますし、まだまだ長いリーグ戦は続くので、たくさんの声援で後押ししていただけたら、自分たちもさらにモチベーションが上がります。これからもよろしくお願いします!