昨季のV.LEAGUE DIVISION2 優勝に続き、今季の新V.LEAGUEにおいても開幕から9連勝を果たすなど、2シーズン連続のリーグタイトルへ突き進む男子の北海道イエロースターズ。チームのポイントゲッターとして活躍するのが、オポジットの柳町逸太だ。
目指すチームのスタイルは「誰が出ても勝てる」。そう話す浜崎勇矢監督のもと、北海道YSは今季に臨むにあたって各ポジションで新戦力を迎え入れた。DIVISON1でのプレー経験を持つ移籍加入組や、新人ミドルブロッカーの中谷薫もさっそくコートに立つと、いかんなく力を発揮して勝利を呼び込んでいる。
そのなかでも「昨季まではなかなか選手起用が定まらず、陳健禎（現・ヴォレアス北海道）に任せきりだった」（浜崎監督）というオポジットに定着したのが、東京グレートベアーズから移籍したサウスポーの柳町。今季リーグ序盤戦ではチームのトップスコアラーを務め、指揮官も「決定力が高く、オポジットの選手起用の不安定さが改善された」と目を細める。
柳町といえば東京GBの前身「FC東京」時代の2019-20シーズンからVリーグの世界を戦ってきた。とはいえ、そのポジションは、チームとしても強力な外国籍選手を招き入れることで得点力の増強を図るオポジット。実のところ、その現実が柳町に一つの決断をもたらした。
「どうしても外国籍選手が就くポジションですし、それが（2024-25シーズンからの）SVリーグになればなおさらで。となると出場機会はほとんど得られないと思うと、モチベーションの面でも難しかったのが正直なところです。仮に、入団した外国籍選手に替わって僕がコートに立って、その役をまっとうできるかと考えたら『できない』。そうした思いがあったので、引退を最初に考えました」
東海大学札幌校舎を卒業後、FC東京を含めて5シーズンを過ごした東京GBを退団。もとより「競技人生を終えたあとは地元に帰るつもりだった」と生まれの北海道へ舞い戻る。そんななか、北海道YSの小高政利ゼネラルマネージャーから誘いを受ける。一度は断ったというが、果たして競技続行を選んだ。
チームに合流したのは今年の7月頃から。東京GB時代のプロ契約とは異なり、競技とは別で企業に勤めながら、同時にバレーボール選手として活動する。「慣れない環境ということもあって、最初は体が痛かったです」と柳町は振り返るも、浜崎監督が「なんとなくやってくれるんじゃないか、という予感はしていました。徐々に状態を上げてくれるだろう」と踏んでいたように、2024-25シーズン開幕そして試合を重ねるたびに調子は上向いていった。そこで活かされたのは、本人いわく東京GB時代の経験だ。
「競技に対する考え方自体はそのままです。結局は、パフォーマンスやコンディションの“いい選手”が試合に出る。そこに仕上げていくのも自分次第なわけで、やれること、やれないことを判断しながら取り組んでいます」
日々の仕事がある以上、競技にかける時間は必然的に限られる。それでも柳町はトレーニングやコンディショニングを自ら考え、自らの手で自身に施す。そんな姿を浜崎監督は「プロの外国籍選手っぽいところがあるんです」と表現した。
柳町本人は外国籍選手の壁を前にして、自らの力量と向き合ったことで一度は退いた。この先に控える天皇杯や、いずれチームが立たんと願うSVリーグのステージで、圧倒的な外国籍オポジット擁するチームを相手に渡り合えるかはわからない。それでも「日本人選手だけで戦うのは、自分たちの魅力でもあると思うので」と浜崎監督は言い、その一翼を今、柳町は担っている。そのうえで指揮官は「まだまだ頑張ってもらわないと困るので、100点とは言いません!!なんてね」と笑顔。それは「伸びしろがありますし、進化できると思っています」という期待の表れだ。そこには柳町本人も「スパイクだけではなくて、ブロックやサーブでも貢献したいんですけどね。なかなかうまくいってないので、これからもっともっと練習して、すべての面で頑張りたいです」と意気込みを口にした。
11月上旬に実施された今季最初のホームゲームでは「両親が見にきてくれたんです。東京でプレーしていた5年間は一度も来られなくて。それが今や、全部の試合に足を運んでくれています。そういう面では、バレーボールをやっている姿を久しぶりに見せることができてよかったですね」と柳町。地元に戻ってきたらこそ巡ってきた、そんなうれしいエピソードだってある。
この先は、本人だって想像しえない。競技人生のアディショナルタイム、その真っ只中――。
