[写真]=Photoraid

 バレーボールのプレーで盛り上がるシーンといえば、強烈なスパイクやジャンプサーブ、相手の強打を止めるブロックもあるが、日本人のバレーファンが一番好きなシーンはレシーブだろう。相手選手の体重が乗った豪打を上げたり、コートに落ちそうなボール、コート外に飛んでいったボール、とても触るのは無理だろうと思えるボールを、一瞬で加速してギリギリで指や腕に触って繋げた時、試合会場は大歓声で溢れる。大阪ブルテオンに所属する日本代表の山本智大は、リベロとして多くのレシーブで魅せ、コート上の守護神として輝き続けている。

 その山本の両腕をサポートしているのが、日本シグマックス株式会社が展開するZAMST(ザムスト)のアームスリーブだ。これまで山本が見せてきた数々のプレーはアームスリーブと共にあった。今回、寒さ対策への要望に応えた「アームスリーブ WARM EDITION」の発売に合わせて、山本選手にアームスリーブとの出会い、レシーブに対する取り組み、SVリーグの感想など話を聞いた。

着けているのが当たり前、もはや体の一部に

ーーアームスリーブはいつから使い始めましたか?

山本 FC東京(現・東京グレートベアーズ)に入って1年目ぐらいから。その時は購入して使っていました。きっかけは、レセプションの時にアームスリーブを着けていなかったらボールが滑りやすいという感覚があって、あとは着けた方が格好良いなと(笑)。プロ1年目だったので、そういう格好から入ろうかなというのはきっかけの1つでした。

ーーアームスリーブを着けると手首くらいまで隠れますが、レセプションやディグなど、アンダーハンドパスする時に違和感はありませんでしたか?

山本 僕はなかったですね。着けたほうが上手くなった気がしたり、格好良く見えたことが一番だったので。(着けていないと)寂しいというか着けているのが当たり前になっています。

[写真]=Photoraid

ーーザムストのアームスリーブをつけ始めたのは?

山本 堺ブレイザーズ(現・日本製鉄堺ブレイザーズ)に入ってからスポンサーになっていただいて、ザムストのものを着けるようになりました。試合中に汗をかいても下がってこないし、あまりずれもない。汗を吸収してくれるから、ボールが滑りにくく感じる。そして、試合に入る時に着けるのでスイッチも入ります。

ーーアームスリーブの機能としては、段階着圧で疲労感を軽減する効果があるのですが、試合の後半に疲れにくいというのを感じますか?着けることでどんなメリットを感じますか?

山本 滑らない、ずり落ちないというメリットがあります。(アタッカーのようには)腕を振らないので、あまり腕の疲労はないですが、ずっと構えているので肩が張って緊張することはあります。あとは腕にスパイクが当たって痛いぐらいですね。リベロなのでアンダーハンドで取ることが多いから、タッチをよりよく感じられるというか、(ボールを受けたときに)滑らないという印象は持ちました。

ーースイッチはどう入るんですか?

山本 「今日もやってやるぞ」と着ける時に入ります。ユニフォームを着る時、サポーターを着ける時、靴下を履く時も、これから試合だ!という風に思いますし、よりやってやろうというスイッチが入る。僕は試合前のアップの時はアームスリーブを着けていなくて、ロッカールームで声出しをする時に着けるようにして今やルーティン化しています。

[写真]=Photoraid

アームスリーブWARM EDITIONは保温力があり暖かみがある

ーー小学生、中学生、高校生、そして大学生とバレーをやっている子どもたちやバレー部員がアームスリーブを着けることの良さは何でしょうか?

山本 憧れの選手と同じものを着けることで気持ちが高ぶったり、人が着けないような物を着けることでの特別感がモチベーションアップに繋がったりしますよね。そういったきっかけにもなると思うので、まずは格好から入ってみるのも非常に大事だと思います。実際に僕も付け始めた理由は小学生の時にテレビでバレーボールを見ていて格好いいと憧れたのがきっかけでしたので。今度は僕たちがアームスリーブをしているのを見て、小中高生が憧れて着けてくれたら嬉しいですね。

ーー今回発売したアームスリーブをさっそく着けていただいていますけど、どんな感じですか?

山本 いつも着けている物に比べて裏生地の作りに違いがあり、暖かさを感じます。

ーーアームスリーブを着用している時に汗をかいた時はどんな感じですか?

山本 結構肌にピタッとひっつきます。ただ、汗をかいたといっても、ボールもあまり滑らないですしボールの感覚は全く変わりません。常に着けていることが普通になっているので、わからなくなっているかもしれません(笑)。

[写真]=Photoraid

「僕の得意なプレーはディグじゃなくて、パンケーキです(笑)」

ーー床に落ちるギリギリのボールをパンケーキしますよね?

山本 僕は普通の人がするやり方ではなく、自分のやり方を持っていて安定してコントロールできるんですよ。意外と皆できないですね。簡単そうに見えて意外とやっている人がいない。実は僕の得意なプレーはディグじゃなくて、パンケーキです(笑)。SVリーグの判定は結構厳しくて、指の半分ぐらいは入らないと床に落ちたと判定される。僕は絶対落とさない自信があって、前の堺の時に1回ビデオ判定をされたんですがしっかり入っていました。

ーー山本選手は海外選手のパワーのあるスパイクに負けないじゃないですか。倒れないというか。上半身が強いというか。

山本 ここら辺(胸)が強いのはあるかもしれません。結構ここに当たって上がることがあるので。(上半身は)筋トレでつけました。でも大学ではいくら筋トレをしても全然筋肉がつかなくて、堺にいってから10キロくらい増えました。(大学卒業後に入団した)FC東京での写真を見返すと、別人と思えるぐらい細いんですよ。堺に行ってから10キロ増えて、筋肉がつき、日本代表にも呼ばれるようになりました。(堺での筋トレは)また筋肉がつかないんだろうなと思ってやっていたんですけど、気づいたらなんかムチムチになっていましたね。その時はチームの食環境に恵まれていたことは影響があるかもしれません。

[写真]=Photoraid

ーー山本選手が体やコンディショニングで普段から気をつけていることは何でしょうか?

山本 基本的には食事や睡眠が非常に大事。プラスアルファで、マッサージしてもらったり、いろんなサプリメントで疲労回復させたりしています。体のケアですと、下半身の疲労を抜くことが、自分の中で一番パーフェクトに近い状態で試合に臨めると思っています。リベロとして、一歩目の動作スピードだったり、横に動くスピードやボールを追いかけるスピードが大事になってきます。上半身よりは下半身の疲れを残さないことが大事になるので、下半身に焦点を当ててケアをするようにしています。

ーー具体的に何をしていますか?

山本 土日が試合なので、金曜、土曜の夜に壁に20分くらい足を上げて乳酸を溜めない運動はずっとしています。日頃のリーグ戦、オリンピックでもやっていました。

――他のポジションの選手はスパイクやブロックで跳ぶ動作がありますが、リベロは基本的に平面で動きます。体の温め方とか、アップの仕方とか、他のポジションの選手たちとは意識して変えていることはありますか?

山本 試合前の最初のウォーミングアップの時に温まり過ぎると、スパイク練習ではものすごく冷えてしまいます。だから、最初から上げすぎないようにして、徐々に上げていく方法を取っています。それでもスパイク練習の時にはどうしても冷えてしまうので、ここをどう乗り切るか。1セット目の1点目にもつながりますし。

[写真]=Photoraid

さらにリベロの存在価値を上げていきたい

――SVリーグが始まって山本選手はどう楽しんでいますか?外国人枠が2人になったことによって世界レベルをより味わえる機会が増えたのは大きかったですか?

山本 シンプルに世界各国の凄い選手たちがたくさん集まっていて、彼らと試合できるのが楽しい。例えば、ウルフドッグス名古屋のニミル選手(オランダ代表)は異次元のサーブを打ってきます。昨シーズンまではビッグサーバーが1人だったのが、各チーム2人は出てきている。自分のスキルアップにもつながります。

今季はやってみないと分からない試合が続いていて、今までにあった「相手がここだから勝てるでしょう」みたいな試合が無くなってきています。リーグのレベルがより上がっている中で、結果を残すというのが非常に楽しみだし、わくわくしています。

――SVリーグの試合中の盛り上がり、このインタビュー直前に取材した大阪ブルテオンvsジェイテクトSTINGS愛知との試合では、山本選手がボールに食らいついた時の大歓声が凄まじかったです。コート上で自分のプレーに対しての大歓声って聞こえていましたか?

山本 意外とそんな聞こえないタイプなんですよ。オリンピックとかは、僕が1本拾うとすごい歓声だったんですよ。ですけど、SVリーグの試合で…反応してくれてますか?

――めちゃくちゃ観客の皆さんが反応してましたよ(笑)

山本 本当ですか?自分のプレーに必死になっていて、僕自身はあんまり分からないんですよね。今度からちょっと聞くようにします(笑)。でも、バレーボールというと、3本目のアタックを決めた選手に「ワー!」と歓声が上がる世界だったのが、1本目のレシーブから「ワー!」となる世界に変わってきて、リベロの価値が上がってきていると思います。小川智大選手(ジェイテクトSTINGS愛知)だったり他の日本のリベロは上手い選手が多いので、世界に日本のリベロが認められているというのが感じられる。リベロに対しての世間からの見方が変わってきていて、さらにリベロの存在価値を知ってもらえると嬉しいです。

ーー今後の目標だったり、個人の目標だったり、どういったことを考えていますか?

山本 リーグ優勝を目標にしています。日本代表もロサンゼルス(2028年のロス五輪)を目指す予定ではいるので、まだ4年後ですけど、1年ずつ積み重ねてやっていきたい。

ーー山本選手自身は、もっとこういうところでアピールしていきたいとか、あるいは見せていきたいというものがありますか?

山本 ある程度僕がプレーできるということは、皆さん知っていると思うので、そういった中でもっと存在感を出して、どのプレーという風に決めるのではなくて、全部のプレーで、相手に嫌がられるリベロになって、そして存在感を出してやっていきたいなと思っています。