[写真]=ヴィアティン三重

 異例の試みから約1カ月が経過した。

 6月、2024-25シーズンのV.LEAGUE WOMEN(Vリーグ女子)に参戦するヴィアティン三重は、大同生命SV.LEAGUE MEN(SVリーグ男子)に参戦するウルフドッグス名古屋と技術指導契約を結んだことを発表した。

 これにより、ヴィアティン三重には昨シーズンまでWD名古屋でプレーした勝岡将斗氏をはじめとするWD名古屋のチームスタッフが特別コーチとしてトレーニングに参加し、チーム強化に向けて選手たちに助言や指導を行うこととなった。

 バレー界ではあまり例がない取り組みだが、昨シーズンのV3女子リーグで最下位と苦しんだヴィアティン三重が新生Vリーグでの巻き返しを図る中、西田誠監督との専任監督契約締結やホームタウンへの新事務所の設立に続いて打ち出したのが、今回のWD名古屋との提携だった。

 新シーズン開幕に向け、勝岡氏らの指導は早速スタート。およそ1カ月が経過し、7月4日にはその前日に28歳の誕生日を迎えた勝岡氏を選手たちがサプライズでお祝いするなど早速信頼関係を築いているなか、西田監督や選手たちは指導の効果を早くも感じているようだ。

「まず一つ、日本トップレベルの技術を持つ選手から、選手たちがほめられることも少なくないため、自分たちがやってきたこと、やっていることに自信を持つことができたと思う」と、その効果について語ったのは西田監督だ。

 それは、WD名古屋側の協力が大きいという。「チーム全体として、まずは技術指導をしてもらう上で、良い関係性を築いていくことから始めているが、ウルフドッグス名古屋さんから、ヴィアティン三重側に寄り添い、必ず強くしていくんだという強い意志を感じます。そのため、選手たちは指摘や指導を真摯に受け止め、改善しようと努力する姿が見られることが非常に良い傾向です」

 さらに、今回の連携では選手だけでなく西田監督にも好影響を与えている。「また、ウルフドッグス名古屋さんがこれまで培ってきた経験や技術は、多方面からのアドバイスとなって私たちに様々な気づきを与えてくれています。監督である私も気づかされる部分もあるし、正直に言えば指導にも迷いがないということはなく、相談しながらコーチングを進められることで、気持ちの部分で非常に大きいです」

指導中には勝岡将斗氏自らプレーを実演する場面も [写真]=ヴィアティン三重

 では、選手たちはどう感じているのだろうか。キャプテンの浅川希がチームの雰囲気を明かした。

「このお話を聞いた当初から、それぞれ期待はあったかと思いますが、実際に来ていただくようになってから、以前よりみんなが前を向いている感じがします。もっと上手くなりたいだったり、新しい知識への興味、意欲が湧いていて、まだ結果には繋がっていませんが、チーム状況は決して悪くないと思います」

 また、浅川自身もトップレベルでプレーしていた勝岡氏から大きな刺激を受けている。「毎回の練習が新鮮で、新しい知識を教えて頂けることを素直に嬉しく思います。経験のある勝岡さんの言葉や伝え方など、とても説得力がありますし、まだ数回の練習ではありますがいろんな面でリスペクトしています」

 その上で、チーム全体にも変化が出てきていることを明かし、結果に繋げていきたいと決意を口にした。

「勝岡さんから指導いただいた、『チーム全体で共通認識を持ってやらなければいけないプレー』が確立されてきていると思います。以前までチーム内で共有をしても個々の意識の違いで難しいところがありました」

「今シーズンチームの課題でもある”主体性”の部分も含めて、個々の意識が上がりそれぞれの口から意識しなければいけない点を発言するようになり、いい影響を与えて頂いていると思います。あとはなんとか結果として残していけるチームになっていきたいです」

 なお、ヴィアティン三重とWD名古屋の契約は1年間。ここから開幕に向けて指導回数が増えるにつれて、さらにプレーやチーム戦術の精度も上がってくるはずだ。

 さらに、ヴィアティン三重は7月、アスリートと様々な形でコミュニケーションをとりながらサポートしていくプレイヤーデベロップメントマネージャー(PDM)に、元女子日本代表の大山加奈氏が就任したことも発表。選手たちのサポートに向けてさらなる一手も打ち出した。

 昨シーズンの悔しい結果を受け、このオフにクラブや指導体制の改革を行っているヴィアティン三重。新シーズンでは一味違う姿を見せてくれるかもしれない。