3月23日(日)、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで大同生命SV.LEAGUE MENの第20節GAME2、東京グレートベアーズ対東レアローズ静岡の試合が行われ、東京GBがセットカウント3ー0でストレート勝ちを収めた。
その試合後、今シーズン限りでの引退を発表していた東京GB・星野秀知の引退セレモニーが行われた。
スタンドマイクの前に進んだ星野は「ここまで自分に関わってくださった皆さん、ファンの皆さんに感謝します」と晴れやかな表情で感謝の言葉を述べた。この日の対戦相手、東レ静岡は星野が2022年まで在籍した古巣。同期入団の李博がサプライズで花束を持って現れると、星野のセレモニーのために残った東レファンからも大きな拍手が起こった。
試合後、引退会見に出席した星野は報道陣に頭を下げて着席したあと、自身のバレーボール競技人生を改めて振り返ってくれた。
――まずは今日の試合を振り返ると?
星野 今日の試合は絶対に勝たなければいけない試合だったので、チームが勝ってくれてよかったです。試合後に行われるセレモニーも、負けて行うより、勝って行えるほうが気持ちもすっきりするので、チームのみんなのおかげで気持ちよく引退セレモニーをやらせてもらいました。

――選手生活で印象に残ることは?
星野 東レアローズでは2013年からプレーして、グレートベアーズは今年が3年目なのですが、まずは東レで社会の厳しさを学び、人間的に成長させていただきました。いろいろな苦い経験、良い経験もたくさんしましたが、そのおかげで社会人として成長できた場所だったと思います。
僕、地元が東京なのですが、2022年にネイチャーラボがグレートベアーズを作ることになり、そこでお声をかけてもらい、地元である東京に戻るチャンスをいただきました。「自分が選手生命を終える場所は東京にしたい」と思い、グレートベアーズを選びましたが、望み通りこうしてバレーボール人生のラストを地元で迎えることができ、感謝しています。グレートベアーズは年々強くなっていますし、集客の面でもリーグのトップを走っているチーム。その一員として活動できたことを誇りに思いながら引退できます。
――引退の決断はいつ頃、どのような思いで?
星野 正直言いますと東レアローズのキャプテンを終えたときから第一線といいますか、スターティングメンバーで出場し続けるのはキツいのかなと感じていて。ただ、それでも何かしらチームの力にはなれるという思いがありつつ、その辺りから〝引退の時期〟というものは頭にちらついていました。
こうしてグレートベアーズでプレーしてきた中で、今年は若手がどんどん育ってきていますし、今後は新しい選手も入ってくる。なおかつ外国籍選手枠も増えるであろう状況を考えると「あまりだらだらと続けていても……」という思いが生まれてきました。いろいろと考えた結果、それならば今、やめて少しでも早く新しい道に進む方がいいだろうと判断し、決断しました。
――古巣、東レ戦での引退セレモニーでした。昨日や今日の試合の前後、東レの選手、スタッフの皆さんとは言葉は交わしましたか?
星野 東レの選手は僕が在籍していたときに一緒にプレーした選手は今はもう数少なくて……。李さんと米山(裕太)選手、その2人とは話しました。李とはプライベートでも仲が良くて、普段からよく食事にも行きますし、米山さんとは昨日、試合が終わったあとに長い時間、話をしました。

――米山選手も今シーズン限りでの引退を表明していますが、どのような話を?
星野 「お疲れ様」と言い合って、あとは「今が辞め時だよなぁ」みたいな話と……。お互い、子供がいるんですが、子供から「もっとできるんじゃない?」と言われたりして、そのときは胸が熱くなったねという話をしましたね。
――バレーボール人生で思い出に残っている試合、プレーはありますか?
星野 社会人に入るまではほとんどの試合に勝っていて、何度も優勝していた記憶があります。負けた試合のほうが圧倒的に少なかったのですが、実業団に入ってからは五分五分……優勝するチームは一つだけなので、当たり前なのかもしれませんが、ほとんどの時間を負けて悔しい思いをしながら過ごしていた感覚です。その中で「なぜ負けたのか」「勝つためには何が必要なのか」とめちゃめちゃ考える機会がありました。プラス、徐々に自分が試合に出る、出られないという問題もあり、葛藤する時間が長かったように思います。キャプテンを任された時も、負けて悩んだり……。入れ替え戦も経験しました。東レでは一度、リーグ優勝を経験していますが、勝てたときのうれしい思い出よりも、負けて悩んでいたイメージの方が強くて、とにかくもがいていたバレーボール人生だったなと思います。
――引退後の予定は?
星野 これまでのバレーボール人生、様々な指導者の方に多くのことを教えていただき、各カテゴリーで選手としてもたくさんの貴重な経験ができました。それを伝えるためにも、指導の道に進んでバレーボールにプラスになるような活動をしたいと思っています。今、バレーボールは盛り上がってきていますし、今後もバレーボールに携わって、バレーボール界に貢献したいという思いが強いです。
また、試合後の会見には東海大学の先輩であるセッターの深津旭弘も出席。星野に労いのメッセージを送った。
「僕が東海大学4年生の時、星野選手が1年生として入部してきまして、そこからの付き合いです。Vリーグ入りしてからは、星野選手は東レアローズ、僕はJTサンダーズでプレーし、対戦機会も多く、すごく苦しめられた記憶があります。昔から今のように体力がありましたし、メンタルもタフで、自分からは絶対に崩れない。すごくいい選手だなと思いながら対戦していた記憶があります。大学の時も入部直後のリーグ戦から試合に出場し、当時から体もメンタルも強かったので、コートから一度も出ることなく活躍していました。勝負強さや、そういった場面でも臆することなく戦える精神力を10代の頃から備えている選手でした。現役生活、お疲れ様でした」