「キャプテン」は、どちらかといえばベテランの仕事だろう。コーチと選手をつなぎ、チームの先頭に立って仲間たちを引っ張るーー。そんな仕事をするなら、やはり経験と「年功」がアドバンテージになる。
ただ、SVリーグの前年度王者サントリーサンバーズ大阪はチーム最年少、24歳になったばかりの髙橋藍をキャプテンに抜擢した。藤中謙也がジェイテクトSTINGS愛知に移籍してその座が「空席」になっていたし、大阪ブルテオンも25歳の西田有志がキャプテンに就任している。とはいえ、彼のキャプテン就任はチームの変化を強く感じる話だ。
髙橋藍は就任の感想をこう述べる。
「自分は元々コミュニケーション取るのが好きですけど、より一層色んな選手とコミュニケーションを取ることが必要だなと思いました。最年少でキャプテンをやる大きなメリットがあって、それは色んな選手が自分に意見を言いやすいところです。チームを良くしていくため、ストレスのない環境を作っていくことが、自分のやっていけることです」
髙橋藍は攻守とも傑出したウイングスパイカーで、日本代表での活躍は皆さんもご存知だろう。人間的にも「落ち着き」「コミュ力」のあるタイプで、確かにキャプテンの適性はある。一方で「怖さ」「威圧感」で人を動かすタイプではないタイプではない。
まず彼らしい細やかさ、気配り、そして若さを活かしてチームの潤滑油になろうとしているようだ。
「自分自身がチームを離れているときも、何を変えて欲しいか、これをチームとして大事にしたいか、素直に言ってもらいたい。だからチームのグループ(チャット)に常にメッセージを送るようにしていました。(代表からサントリーへ)合流したときに結構みんな疲れている感じでしたが、何かあれば(キャプテンに)言ってもらわないといけない。選手がストレス抱えながらやっていても、強いチームにはなっていきません。そのストレスをなくすことは、自分やスタッフが用意できるものだと思っています。自分は監督に伝えられますし、キャプテンになって伝えるのでは(一選手だった昨季とは)また立場が違います」
彼自身がサントリーに加入して2025-26シーズンは2季目。今季はセッター関田誠大やリベロ小川智大、OHイゴール・クリュカとさらに強力な新戦力が加わった。関田とクリュカは31歳、エースのドミトリー・ムセルスキーは36歳で、言うまでもなく年上だ。24歳だからできる「仲間の意見を引き出し、耳を傾ける」「それを監督、コーチにつなぐ」役割が、チームが持つ髙橋藍への期待でもあるのだろう。
髙橋藍がリーダーとして支えるチームは、SVリーグを制した昨季以上に強烈な人材を揃えている。ただ彼の言葉を聞くと、重圧はまったく無さそうで、前向きな「ワクワク感」しか伝わってこなかった。
例えばクリュカについて問われると、髙橋藍は食い気味に「いやすごいです。びっくりしました」と語り始めた。
「高さは(218センチの)ムセルスキー選手で慣れてしまっているのが正直あるのですが、それでもやはり高いなと思いました。彼は身長が2メートル10くらい(209センチ)あって、めちゃめちゃ器用にプレーします。パスもすごくうまくてきれいに出しますし、パワーもありますし、機動力がある選手です。あと息子がかわいくて、まだ1歳なんですけど、めっちゃでかいんです(笑)」
2025-26シーズンのサントリーがどういうチームになるのか?この質問に対しては、ストレートに「強み」を語ってくれた。
「関田選手が軸となって、小川選手もリベロで入って、さらにムセルスキー選手、クリュカ選手、小野寺(太志)選手と高さがあるけど、でも上手さを兼ね備えているチームです。ディフェンス力も上がるし、ブロックディフェンスは本当にSV リーグでトップだと思っています」
ここに名前が挙がっていない24歳の新キャプテンも含めて、2025-26シーズンのサントリーが今から楽しみだ。