[写真]=山田高央

 2シーズン目を迎えたSVリーグ。大きく変化を遂げたチームの中で、新境地を開拓している選手がいる。サントリーサンバーズ大阪のリベロ、藤中颯志である。

 サントリーは昨シーズン、SVリーグ初代王者に輝き、Vリーグ時代を含めると国内リーグ2連覇中だ。昨シーズンは天皇杯も制し二冠を達成した。藤中は、そのサントリーの揺るぎない正リベロだった。

 しかし“世界一”を目標に掲げるサントリーは今シーズン、大型補強を敢行した。ロシア出身のアウトサイドヒッター、イゴール・クリュカと、日本代表の2人、セッター関田誠大とリベロ小川智大を獲得した。

サントリーが獲得した日本代表リベロの小川智大 [写真]=山田高央

「なんでだよ」という思いもあったと、以前、藤中は明かしていた。

 複雑な思いを抱えながらも、小川から吸収できるものは吸収し、競争にもひるまない覚悟を語っていた。

「僕は、日本の中では小川さんが一番のリベロだと思っていて、尊敬するべきところがたくさんあります。小川さんはサーブレシーブがいいとよく言われますけど、僕はトータルで見ても一番じゃないかなと思っています。技術の精度や安定性も高いですし、視野の広さや見る観点がすごい。ブロッカーや他の選手に指示を出したりするのが上手だなと思うので、リベロとしての声掛けや動きというのは学んでいけたら。吸収できるところは吸収しながら、自分の強みは出していきたい。スピードや反応速度というところを活かしていきたいと思っています」

 そして開幕した今季のSVリーグ。10月24日の開幕戦からここまでの4試合は、すべて小川が先発出場している。藤中は、主にクリュカに代わってセット終盤に入るレシーバーとして出場している。2022-23シーズンにVC長野トライデンツからサントリーに移籍してすぐに正リベロをつかんだ藤中にとっては初めての役割だ。

「ここまで来ると、現時点では悔しさはそれほど感じていない状態です」と吹っ切れた表情で語る。

「今は、とにかく自分ができること、やるべきことをやろうという気持ちでいっぱいです。試合に出るからには、アピールも含めて、結果を出すことを一番に考えています」

 セット終盤の緊迫した場面でコートに入り、勝負をかけて打ってくる相手の強烈なサーブやスパイクにすぐに対応しなければならない難しい役割だが、藤中はきっちりと仕事を果たし、得点につながればこれまで以上にコートを走り回って盛り上げている。

「サーブレシーブの感覚などがない状態で急にパッと出て、相手の温まったストロングサーブを受けなきゃいけないので、難しさはもちろんありますけど、自信を持って。自分が出る時は、接戦だったり、劣勢の場面が多いと思うので、サーブレシーブやディフェンスはもちろん、チームの雰囲気や流れを変えるゲームチェンジャーの役割も担っていると思っているので、そこもちょっと意識しながらコートに入るようにしています。

 相手が『ここ1本決めるぞ!』という気持ちで打ってきたボールを、自分たちがしのいで1本で切ったり、ブレイクすれば、絶対に流れがこっちに来る、というふうにプラスの考えを持つように心がけています。同じ場面でも、ずっと出ている小川さんが取って返すよりも、途中で入った自分が取って返すほうが、やっぱり盛り上がると思うので、そういうことも意識しながら。別に守備範囲を広げたり、無理はしないですけど、いつも以上に集中して、気合いを入れて取るようにはしています」

 実際、藤中の名前がコールされてコートに入る際や、サーブレシーブやディグを上げると、昨季までの活躍を知るサンバーズファンはおおいに沸く。先発出場のチャンスにはもちろん備えているが、新たな役割で、藤中が存在感を増している。

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この記事を書いたのは

米虫紀子

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