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 2024―25シーズンの大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)が11日からいよいよ開幕する。新たなスタートを切る国内バレーボールリーグ。新シーズンの幕開けに先駆け、SVリーグ男女全24チームをピックアップし、ここではAstemoリヴァーレ茨城を紹介していく。

クラブヒストリー:2部降格なども経て飛躍の年へ

 1980年に発足した日立佐和女子バレーボール部をルーツに持ち、かつて女子日本代表の名選手を数多く輩出した名門「日立」「日立ベルフィーユ」とは異なる。第5回Vリーグ(1998/99)から国内最上位カテゴリーを戦い、2部降格(2000/01〜2001/02、2009/10〜2012/13)を味わった時期も。

 それでも、他チームが強力な外国籍アタッカーをそろえる一方で、「日本代表にサイドアタッカーを輩出する」という方針から、アウトサイドヒッター陣には日本人選手をそろえるスタンスで戦ってきた。そうして2015/16 V・プレミアリーグではチーム史上初そして最高となる準優勝に輝いている。

 以降は下位カテゴリーとの入れ替え戦進出圏内こそ逃れているものの、反対にV・ファイナルステージ(現在のチャンピオンシップ。いわゆるプレーオフ)に到達できるかどうかの位置とあって、そろそろ突き抜けたいところ。

 なお、チーム名は運営母体の変遷に伴い、「日立佐和リヴァーレ」「日立リヴァーレ」「日立Astemoリヴァーレ」と変わってきたなか、今回のSVリーグ参戦に際して「Astemoリヴァーレ茨城」に。ともに歩んできた地名を刻み、新たな1ページをつづる。

このオフの動き:主力が抜けるも新戦力は充実

 昨季かぎりで主力だったミドルブロッカーの2人、入澤まいが退団し、渡邊彩がSAGA久光スプリングスへ移籍した。ともに女子日本代表としてプレーするほどの力を備えていただけに、まずはいかにその穴を埋めるかが今オフの補強の焦点に。そこでKUROBEアクアフェアリーズから佐藤黎香を、さらにアメリカ代表のブリオンヌ・バトラーを招き入れた。

 SVリーグの外国籍選手枠の拡大に伴う補強としては、アウトサイドヒッターとしてこちらもアメリカ籍のマッケンジー・メイを加えた。チームにとってはアウトサイドヒッター陣に外国籍選手が並ぶのは新鮮であり、それがチームやサイド陣にどのような影響をもたらすかに注目だ。

 またリーダーシップが光ったリベロの齋藤加奈子も昨季かぎりで現役を引退したが、日本女子体育大学でキャプテンを務めた高𣘺凜が今春から入団。ルーキーとはいえ、そのキャプテンシーに期待が寄せられる。

2024―25シーズンの戦い方予想

 セッターとアウトサイドヒッターは比較的選手層が厚く、戦況に応じた幅広い戦い方が繰り出せる。雑賀恵斗、境紗里奈、倉田朱里のセッター陣は3人とも強気なトスワークが特徴的だ。

 そしてアウトサイドヒッターは新加入のマッケンジー・メイやルーキーの岡部詩音を含めて総勢9名が並ぶ。日本代表選出歴を持つ副キャプテンの長内美和子やパワフルなアタックが魅力のオクム大庭冬美ハウィ、昨季は攻守の両面で存在感を高めた野中瑠衣は十分に計算できる存在。また身長162センチと小柄ながら驚くほどの跳躍力とテクニックで得点を重ねる室岡莉乃という飛び道具、いや“跳び道具”に、昨季の怪我からの復活を誓う上坂瑠子、さらに名門・筑波大学出身の高間来瞳に鹿嶋市出身の生井澤美海華ら茨城にゆかりある面々などが、己の力を発揮してチームに勝機を呼び込む。

 もっとも攻撃の起点となるレシーブに関しては昨季、入団1年目の德本歩未香が守護神を務めた。さらなる成長が、チームにとって追い風となる。

注目選手:上坂瑠子

 中学時代にその名が全国区となり、アンダーエイジカテゴリー日本代表として日の丸をつけるなど実力を評価されてきた上坂瑠子。福井の強豪・福井工業大学附属福井高校ではエースを務め、3年生時のインターハイではベスト4に導いた。

 高校を卒業後は日立リヴァーレ(当時)に入団し、切れ味鋭いスパイクと高いアタックセンスを武器に早くから出場機会を与えられる。2020ー21シーズンにはV・レギュラーラウンドでチーム最多得点をあげ、翌2021ー22シーズンには自身キャリアハイのシーズン342得点をマークした。だが、昨季はヒザの故障のためシーズンをほぼ全休することに。V Cupでリリーフサーバーとして復帰を果たしている。

 万全の状態で臨む今季はキャプテンに就任。また例年以上にチーム内競争も激しいなか、一人のアウトサイドヒッターとして「負けたくない」という気持ちでいる。チャンピオンシップ進出に立ちはだかる壁に対して、今季のスローガンである「突破」を遂げるべく、その右腕をうならせる。