自身2シーズン目となるイタリア・セリエA女子でプレーしているセッターの関菜々巳。今季から所属するブスト・アルシーツィオはレギュラーシーズンを8位で通過し、スクデッド(リーグタイトル)をかけたプレーオフに進出したものの、関にとって古巣であるコネリアーノに準々決勝ラウンドで敗れた。とはいえシーズンが終わったわけではなく、現地3月15日から始まったプレーオフ・チャレンジ、いわゆる最終順位決定戦に進むことになった。
振り返ればレギュラーシーズン突破も薄氷の末につかんだものだった。今季のブスト・アルシーツィオは、昨季5冠のコネリアーノに2度の対戦でいずれも負けたもののフルセットに持ち込むなど力を発揮し、一時期は全14チームのうち中団グループより上位に位置していた。だがレギュラーシーズン後半戦に入ってから失速して5連敗。終盤戦を迎えた2月はプレーオフ進出を直接争うフィレンツェやペルージャに黒星をつけられたことで、窮地に立たされた。
そうしてレギュラーシーズンも残り2試合となった、現地2月14日の後半第12節。イタリア女子代表のエース、パオラ・エゴヌを擁するミラノをホームに迎えた「ロンバルディア・ダービー」は3,000人の観客が駆けつけるなか、ブスト・アルシーツィオは試合の序盤こそリードするも逆転されて第1セットを落とすと、第2セット以降はアタック時のミスも響き、結果的にストレート負け。今季はセッターとして一番手を務め、この日も先発出場を飾っていた関は試合後、唇をかんだ。
「相手のブロックが高いだけに、できるだけ1対1の状況を作り出したいと考えていましたが…。今季はチームの波が激しくて、今日も試合の入りはよかったのに失点が1つ出ると一気に相手に流れを渡してしまいました。リードしていたので『焦る必要はないよ』とチームを落ち着かせたかったのですが、なかなか難しかったですね」

チームが沈んだときこそ、関は自分が立て直す役目を担えればと考えていた。だが、まだまだ十分に外国語が話せるわけではなく、やりたくても「できない。自分がもっともっと勉強すればいいんですけどね…」と歯がゆさを覚える。それでも懸命にコート上で仲間と言葉を交わす姿が見られた。
「知っている単語だけでも並べたり、ではありますが、何かしらは言葉を発して伝えようとは考えています。勝ちたいので。それにプレーオフに行きたいので、できることはやろうと思っています」
その姿勢は会話だけでなく、試合中の端々で感じられた。ミラノ戦は最後の第3セット、関は2枚替えでベンチに下がると、そのまま試合終了のホイッスルを聞いている。その間もずっと、コート内をグッと見つめていた。
「私に何ができるかな、と。このチームで勝つために、何を変えたら勝てるのかな、を考えながら試合を見ていました」

コートに立とうが立たまいが、自分にできることを模索し続けていたのである。だがこの試合を落としたことでチームはいよいよプレーオフ進出圏外に。レギュラーシーズン最終戦となる後半第13節でブスト・アルシーツィオが勝つことは最低条件、かつ、その時点で上位にいたフィレンツェのノヴァーラ戦の結果次第ということになった。
「2月のペルージャとフィレンツェに勝っておけば、すでにプレーオフは決められていたのに、それができなかった。最終戦で勝利することはもちろんですが、ノヴァーラにどんなかたちでも勝ってもらわなければなりません。なので…真佑、お願い!!って」
最終戦を前に、ノヴァーラでプレーする石川真佑へ心からエールを送っていた関。他力本願の状況になってしまったとはいえ、プレーオフへの思いを募らせた理由とは。アスリートとして純粋に勝ちたい気持ちの表れか、と聞いてみる。
「そうですね。何に関しても、負けるのは嫌ですよね。ほんとうに勝ちたい。確かに勝ってプレーオフに進んだとしても、一発目に当たるのが(首位通過の)コネリアーノなので、それより先へ勝ち上がる可能性は限りなくゼロに等しいかもしれません。ですが、レベルの高いチームと戦うこと自体が経験値になりますから。最終戦を勝って、その権利をつかみたいです」
果たして、現地2月21日のサン-ジョバンニ・イン・マリニャーノ戦はフルセットに持ち込むと、最終第5セットを21-19という競り合いの末に制して勝利を収める。同日、フィレンツェがノヴァーラに敗れたため、ブスト・アルシーツィオは勝ち点で上回って8位に、プレーオフ進出を決めたのであった。
勝ってプレーオフへ-。その思いで過ごしたレギュラーシーズン最後の1週間。その半ば、2月19日にはチームから関が次の2026-27シーズンも在籍することが発表された。
サン-ジョバンニ・イン・マリニャーノ戦のMVPに輝いたのは、日本からイタリアに渡り背番号「5」をつけて戦う司令塔だった。勝ちたい気持ちをプレーに昇華し、そしてチームを勝たせる存在であることを証明したかのようなMVP。語るにはまだ早いが、来季はその思いをさらに強めて、関菜々巳はコートに立っているに違いない。




