[写真]=須田康暉

 バレーボールキングでは「チェアマン通信『SVリーグのリアルをお届け』」と題し、2025-26シーズンから大河正明・SVリーグチェアマンのインタビュー記事を連載している。ファンや選手に「どんな改革が進められているか」「そこにどんな意味があるのか」を伝えることが、本連載の目的だ。

 チェアマン通信の第4回では大河チェアマンに2月の簡単な振り返りと、「ホームアリーナ要件の緩和」「来季の参戦クラブ確定」「クラブライセンス制度」に関する説明をお願いしている。

 先に事実関係を説明すると2月18日のSVリーグ理事会ではクラブライセンスにおける「ホームアリーナ要件」の緩和と、SVリーグに参加するクラブ数の早期確定が決定された。

 ホームアリーナ要件の緩和については「一定条件のもと、理事会承認を前提に、入場可能数 5,000 席未満でも クラブSV ライセンスのアリーナ要件の基準を充足するものとみなす」という決定だ。具体的な条件は下記のとおりになっている。

1.原則、ホームタウン(それに準ずる扱いを含む)が下記のいずれにも該当しない自治体であること
:県庁所在地、政令指定都市、中核市、中核市候補市、施行時特例市、計量特定市、保健所政令市、総務省が設定している「大都市圏」に属する中心市・周辺市町村

2. 入場可能数以外の全ての施設基準を充足していること
:スイート、ラウンジ、トイレ数を含む

3. 入場可能数の緩和分を補う入場料収入確保のための施策を実施していること

 また2026-27シーズンのSVリーグに参加するクラブの数が、3月中に予定されているクラブライセンスの交付に先んじて女子は14 クラブ(前季と同数)、男子は12 クラブ(2 クラブ増)と決定された。仮にSV ライセンス保有クラブ数が参戦クラブ数を下回る場合は、クラブSVGライセンス基準を満たすクラブの中から理事会が総合的に判断し、特例で SV ライセンスを交付してクラブ数を充足させることになる。

――昨年12月に続いて2月もイタリアへ行かれたそうですが、今回はどのような目的だったのですか?

大河 セリエAは女子と男子の組織が分かれているのですが、まず前回はそれぞれと有意義な意見交換ができました。「日本もなかなかやるな」という感覚は持ってもらったと思います。「コッパ・イタリア」という大会の準決勝と決勝が2月7日と8日(現地時間)ありました。そこに来ませんか?とご招待いただいてお邪魔しました。

週明けに実行委員会が入っていて、日曜日の試合は見られずに帰ってきましたけど、国際バレーボール連盟(FIVB)、バレーボールワールドの方も交え、今回はトップチーム、ユース、指導者・審判の“3つの交流”をお互いが進めていこうという話を、前回から一つ踏み込んだ議論ができました。招待されたのが男子の試合で、日程の都合もあって男子側だけとお話をしてきましたけど、女子でもそういう提携ができたらいいなと考えて会話を継続しています。

――試合はどうでしたか?

大河 イタリアのお客さんは相手がサーブを打とうが、こちらがサーブを打とうが、ずっと声を出して応援をしていますよね。サポーターを中心にずっと歌って応援している感じでした。

あとラインジャッジがいなくて、五輪や世界大会のような自動判定でもないんです。主審がすべてインアウトを見て、問題があったらチャレンジして、その確認も早かったですね。様々なチャレンジが、日本より早く出ていました。そこはSVリーグでも、取り入れられるところかもしれません。

――国内の話に戻ります。まずホームアリーナ要件変更の内容と狙いについてご説明をお願いします。

大河 今回の要件変更に関して、具体的にはかほく市(PFUブルーキャッツ石川かほく/SV女子)、黒部市(KUROBEアクアフェアリーズ/SV女子)、Vリーグ男子の日置市(フラーゴラッド鹿児島)といった自治体を想定しています。人口が約3~4万人台の都市ですが、バレーボールのクラブがあって、賑わいもある地域です。

近年はアリーナの建設費が高騰して、かつ地方の人口も減っています。民設でアリーナを建てて収支を取ることが難しい場合も多く、どうしても行政にお願いしないと建設が難しい状況もあります。

そもそも私たちのリーグは「強く」「広く」「社会とつなぐ」をテーマにして、地域とつながっていくことを目指しています。全国一律で「5000人ありき」にすると、地域の盛り上がりの芽が潰されてしまいかねません。さらにいうと、そういったクラブが2030年以降はSVに行けなくなることも起こり得ます。それが果たしてバレーボール界全体にとってプラスなのかは、今回の決定に際してかなり議論した部分です。

――フラーゴラッド鹿児島の「日置市」はどのような場所ですか?

大河 鹿児島市のすぐ西にある自治体で、フラゴラアリーナ日置(日置市伊集院総合体育館)という会場があります。「フラーゴラッド鹿児島」は、昨シーズンのVリーグ男子王者です。集客は1試合平均1000人弱ぐらいですが、優勝パレードにはかなり人が集まっていました。私も昨年11月に日置まで視察に行きましたけど、年配の人から若い女性まで多彩なファンが応援していました。

他に想定しているのは、SVではかほくと黒部で、Vリーグのクラブでは日置と、あと足利市のレーヴィス栃木(男子)です。

黒部に関しては(黒部市総合体育センターが)5000人 入るから、そこについて特に問題はありません。ただラウンジやスイートといった「おもてなしをできるスペース」を用意して収入を確保する用意をしてもらうことが、今回のホームアリーナ要件を満たす前提になりますし、改修は必要になるかもしれません。地域とつながりつつ「世界最高峰」を目指すリーグですから、単なる体育館でいいという意味ではありません。

昨シーズンのVリーグ男子王者・フラーゴラッド鹿児島 [写真]=古川剛伊

――各チームが人を集める、チケットを売っていくために、アリーナの質は重要です。

大河 そうです。「今までのままでいい」という反応もあると思いますが、時間の経過とともに求められる観戦環境も変わるはずです。

――黒部、かほく以外のSV所属クラブについては、ライセンスを満たすアリーナを用意できるということですか?

大河 しかるべきタイミングでお伝えするべく準備中です。まだはっきり決まっていないクラブはいくつか残っていますし、移転も出る可能性があります。

――アランマーレ山形は既に秋田への移転を発表していますが、「移らなくて済んだのでは?」というファンの反応がありました。

大河 確かにホームアリーナ要件緩和が決まったのは、A山形の移転が決まった後です。ただ秋田のアリーナ(2028年秋に開業する予定の新県立体育館)はかなりいい施設ですし、秋田はA山形のオーナー企業であるプレステージ・インターナショナルの本拠地で、秋田県内だけで2~3000人の方々が働いているそうです。山形のファンの方には残念がる方もいると思いますが、クラブの将来にとって前向きな話だとも感じます。

――2026-27シーズンのSVリーグに参加するクラブ数を、SVリーグのライセンス交付を決めるより先に確定させた件もお聞きします。女子は14クラブのまま、男子は10クラブから12クラブに増やすという決定です。

大河 女子は1年くらい前にかなり深い議論をして、男子に比べると体力的にも厳しいので、44試合から少し減らしたい。なおかつ、平等性を担保した組み合わせにしてほしいという要望がチーム側から多く出されました。14クラブならば7・7に東西で分けて、同じ地区7クラブと4試合、逆の地区7クラブとは2試合の、合計38試合しか解決策が無いよね?となり、当面はそのやり方で続けましょうとなっています。

つまり仮にSVリーグのクラブライセンスを13クラブしか取れなかったとしても、14クラブでやりますという決定です。逆に言うと、15クラブが取れたとしても14でやるという意味です。その分、昇格の機会を担保するために入れ替え戦を実施することも決めています。

――男子についてはいかがですか?

大河 男子はまず「偶数でやる」ことを決めていました。ただ結果として、2025-26シーズンは11クラブにSVリーグのライセンスが出ました。何度かご説明をしていますが、ライセンスの出たクラブ数=実際にリーグを戦うクラブ数ではありません。10を超えた場合は、その時点でSVリーグにいるクラブを優先するというのが昨年の決定事項でした。

最初から「12クラブでやる」と決めておけば、(SVライセンスを取得した)北海道イエロースターズが入った上で、あと1クラブどこか参入にふさわしいクラブを討議することもできたと思います。しかし、ライセンス交付後に別のクラブを募る、リーグ戦を組み直すことは時間的にほぼ不可能です。

また2026-27シーズンについては、男子もなるべく試合数を均等に、平等にやった方がいいというクラブ側の意向がありました。44試合だと12クラブの対戦数が「11試合×4回」でぴったりハマるので、基本12で行きましょうと決めました。

2025-26シーズンで言うと北海道YSを含めた11クラブがライセンスを取っていて、他にも上がれそうな可能性のあるクラブもあります。それも含めて「12クラブ体制でやりましょう」と考えています。男子は集客も好調ですし、勢いがあるときにエキスパンション(拡大)をしていいだろうという判断も背景にあります。

――選手、チーム側は「平等な試合数」がいいという意向を持っていたんですね。

大河 できるなら平等の方がいいということでした。もう一つ、外国籍選手のオン・ザ・コート(同時起用)が2人から3人に増えるので、日本人選手の活躍の場はどうしても減ります。クラブ数が増えることで登録選手の総数も増え、結果として日本人選手のSVでの活躍の場を増やしてあげられるという部分もあります。

リーグに参戦するクラブが急に奇数になります、10か11か分かりません……となると、ホームゲーム数が減ってカーディングも大きく変わることになります。そこで早めに参加クラブを「14」と「12」に決めました。

世界各国からトッププレイヤーが集まってきているSVリーグ [写真]=Photoraid

――女子を東西に分けた場合、西地区のクラブは(人気クラブの)NECレッドロケッツ川崎との対戦数が減ります。そういう指摘はなかったですか?

大河 いくつもの制約条件を最適にした「最大公約数」として出した解です。当然ながら全クラブが平等に当たれば理想ですが、そうすると試合数がかなり多くなります。それを減らそうとしたら、今度は参加するクラブを減らす必要が出ます。それらをトータルに考えた中での、一番の最適解が14クラブの東西制でした。

もう一つアウェー頼みで集客・経営をすること自体、基本あまり考えない方がいいと思います。中長期的に見れば、人気クラブも変わっていくかもしれません。

――SVリーグのライセンスを交付されるクラブが「14」「12」よりも多かった、逆にその数に届かなかった場合はどうされますか?

大河 多くなってしまったら、相対的な評価で選考します。いくつか基準を示していますけど、その中で判断を下します。万が一足りない場合は、SVグロースのライセンスを取ったクラブの中から希望したところを横並びで比較をして、どこかに上がってもらいます。本来はSVGライセンスだけど、そこで引き上げるクラブにはSVライセンスを特例で付与する形になります。

――選考の基準は「ホームアリーナ」「売上高・資金力」「来場者数」「競技実績」と発表されています。これはどの部分を特に重視するのですか?

大河 そこはすべてトータルです。もちろんアリーナの器の大きさの問題はありますが「入場率」も見ます。毎試合満員に近く入っていれば、それはいい評価になります。売上も過去の数値を基準にしつつ「カテゴリーが上がったらこれくらい伸びる」という期待値を見るでしょう。難しい議論にはなると思います。ライセンス交付発表時には、記者会見などで改めてその評価になった理由を説明することになりますね。

――ヴォレアス北海道の債務超過問題がどうなるかも気になります。

大河 そこは3・4月の理事会後にライセンス判定の結果と合わせて発表をする予定です。そこまでお待ちいただければと思います。審査が進行中で、理事会の承認も済んでいないので、このタイミングで個別のクラブについては言及しづらいことをご理解ください。

――そもそもバレーボール、SVリーグのファンにはクラブライセンス制度が「チームを振り落とす」「苦しめる」ものと受け止められている印象を受けます。サッカーのJリーグが2013年にクラブライセンス制度を導入したとき、大河さんはまさにその責任者でしたが、こちらもかなり強い批判があったことを記憶しています。

大河 自分の経験から言うと、決して「ふるいにかける」制度ではないです。毎年健康診断を受けて「今年も健康で働けるか」をチェックする。そのカテゴリーで試合ができるかを確かめる機能です。サッカーだとクラブライセンスのなかった時代は「選手に給料を払って、それから収入を考える」ような状態がありました。今のJリーグは経営的な健全性が確保され、それによって成長にも成功しています。その一つのきっかけがクラブライセンス制度の導入でした。

クラブライセンスの5つの基準は、競技が持続可能な発展を遂げるために必要なものです。競技の質、育成の仕組み、財務基盤、施設といったライセンスの項目は、そのリーグが発展していくベースになるものです。それがなかったらJリーグもBリーグもコロナ禍で行き詰まるクラブが多く出ていたと思います。

[写真]=須田康暉

――SVリーグはしっかりした企業がオーナーとしてついているクラブが多く、15年前のJリーグのような難しさはないと思います。クラブライセンスの運用に当たってクラブ側とはどういう向き合いをしているのですか?

大河 「親会社が付いているクラブなら大丈夫では?」と思う人もいるでしょうが、こちらは「人事・組織基準」のところが気になります。例えばライセンスには「マーケティング担当者を置く」「広報担当者を置く」と言う項目がありますよね。しかしB to C(一般顧客向け)とBtoB(企業向け)のマーケティングを同じ人が担当しているとか、広報とマーケティングを同じ人が担当している体制は、果たしてプロの組織と言えるのか。そういうことを分かってもらう意味でも、ライセンス制度は一つの切り口になっています。

SVリーグは、特に出だしの5年間が大切です。その間にライセンスに基づいて、必要な書類をしっかり期限までに出すことも含めた、組織として当たり前のやり取りをする習慣づけが必要です。

一番難しいのは財務かもしれません。資金繰り基準、売上基準、純資産基準、利益基準とありますが、これをちゃんとクリアしていかないと、いつかどこかでお金が足りなくなって活動停止に追い込まれる可能性が上がります。SVリーグ、SVグロースから「どんぶり勘定」の状態にあるチームを無くすことが大切です。

取材・構成:大島和人

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この記事を書いたのは

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