バレーボールキングでは「チェアマン通信『SVリーグのリアルをお届け』」と題し、2025-26シーズンから大河正明・SVリーグチェアマンのインタビュー記事を連載している。ファンや選手に「どんな改革が進められているのか」「そこにどんな意味があるのか」を伝えることが、本連載の目的だ。
年々熱気が増している大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)は、まもなく3季目が開幕する。WOMENは10月10日、MENは10月17日の開幕だ。もう一つ、この秋から始まる未来に向けた重要なチャレンジが「SV.LEAGUE GROWTH(SVグロース)」の発足だ。
SVグロースは平たく言えばSVリーグの2部だが、将来的なSVリーグ参入を目指す「プロ志向」のクラブが参加するカテゴリーだ。初年度のSVグロースWOMEN(女子)は6チームで、2026-27シーズンは10月17日に開幕する。MEN(男子)は8チームで、10月24日に開幕する。
【SV.LEAGUE GROWTH WOMEN】
・リガーレ仙台
・信州ブリリアントアリーズ
・岐阜リオレーナ
・ブレス浜松
・カノアラウレアーズ福岡
・フォレストリーヴズ熊本
【SV.LEAGUE GROWTH MEN】
・つくばユナイテッドSun GAIA
・レーヴィス栃木
・千葉ドット
・富士通カワサキレッドスピリッツ
・アイシンティルマーレ碧南
・ヴィアティン四日市
・クボタスピアーズ大阪
・きんでんトリニティーブリッツ
SVグロースは競技、エンタメ、ホーム文化、アジア戦略といった部分で、SVリーグとは異なるルールも取り入れられる。連載7回目となる今回はSVグロースの位置づけや新ルールの内容、その狙いについて、大河チェアマンが語っている。
――今回はSV.LEAGUE GROWTH(SVグロース)をテーマに話をお聞きします。まず「SVグロース」という名称に込めた思いを教えてください。
大河 どういう呼び方にするのがいいのか、実はずっと考えていました。「SV2」にはせず成長、発展からの連想で「SVグロース」にしたのですが、競技的にも単純な「2部」ではありません。競技ルール、エンタメ性、外国籍選手のオンザコート(同時起用)ルールについて、独自ルールを採用できるものは積極的にそれを取り入れているのがSVグロースの特徴です。
――どのような内容のルールですか?
大河 独自競技ルールと、「エンタメ&ホーム文化」につながる取り組みは2026-27シーズンから導入します。
競技ルールで取り入れるのがまず「選手交代回数の上限撤廃」です。リベロを除くと、1セットごとの交代人数は元々6回で、今は8回になっていますが、この上限を撤廃します。狙いは「色々な選手が試合に出られるようにする」ことです。また試合のエントリー、ベンチ入り選手数を増やして今は14人のところを16人にします。これも、より多くの選手に出場機会を与え、実戦経験を積んでもらうことが目的です。
――どういう運用になるのかすぐにはイメージできませんが、審判員は大変ですし、混乱が起こりませんか?
大河 コート上の6選手がそれぞれ1回交代し、その後再出場する場合の実質的な最大交代回数は、1セットあたり12回です。SVは昨シーズンまで6回だったのを、国際ルールの変更に伴い今シーズンから8回に変えています。最大12回になれば変化はありますが、悪い意味で極端に変わることはないと思います。
――「エンタメ&ホーム文化」に関してもご紹介をお願いします。
大河 まず「第5セットのコートチェンジ運用の変更」です。第4セットまでは現行通りです。第5セットは今まで8ポイント入るまで第4セットと同じコートだったものを、ホームコート側に固定します。フルセットになった、接戦になって盛り上がった最後のセットを、最初から試合開始時点と同じ側で戦うようにします。ホームゲームとしての一体感を高めて、ファンの納得感も上げて、ホーム文化を作っていくことが狙いです。
「5セットすべて固定」という少し過激な意見もありましたが、いったんは「第5セットだけ変える」という結論になりました。
もう一つはセット間のインターバルにおけるウォームアップの規程の変更です。1分半はコートエンド・ベンチ向かい側のゾーンでの実施を不可としています。現行ルールだとインターバルが3分あるうち、2分半はフリーゾーンでボールを使ったウォームアップが可能です。でも30秒では演出をできないので、1分半を演出やイベントに使えるようにする意味合いがあります。
第2、第3セットの間はすでに15分のインターバルがあるので、この変更は1~2セット間、3~4セット間、4~5セット間です。お客さんを盛り上げるための演出を入れてもいいし、お客さんが参加するイベントをしてもいい。ボードの掲出などでスポンサー・パートナーの露出に使ってもいいと思います。
――どういうプロセスで決めたのですか?
大河 もちろん各クラブの意見も取り入れながら決めました。「独自競技ルール」「エンタメ&ホーム文化」「アジア戦略」と3つの分科会を作って、全14チームの人にどこかの分科会に属してもらって議論をしました。各クラブにも共有して、9月1日の実行委員会でこの方向性が確認され、賛成されました。9月の理事会で正式に承認されています。
リーグとしてもある程度は「たたき台」を用意しましたが、第5セットのホーム側固定、ベンチ入り人数の緩和はクラブ側の意向が強かったです。あと「1人の選手が5セット全部には出られないルール」のようなものも検討しました。「ブロックポイントを2点にする」「オポジットも含むアウトサイドに必ず日本人選手を2人以上起用する」など、議論の中ではいろんな発想がありました。

――「アジア戦略」に関連するルール変更についてもお話ください。
大河 以下は2027-28シーズンから導入する内容ですが、まずオンザコートルールを変更します。SVだと外国籍枠が「3」で、アジア枠が「1」になりますが、SVグロースではアジア枠を無制限化・撤廃しようと決めました。
2026-27シーズンの時点でアジア枠の対象になっている国・地域は「インドネシア」「タイ」「韓国」「チャイニーズタイペイ」「フィリピン」「ベトナム」の6つです。中国は入っていません。
現状を見るとタイの女子選手を除くと、その6カ国からなかなかSVでレギュラーを取って活躍できる選手は多くありません。でもSVグロースならば、男女とも活躍できる選手がいると思います。SVグロースがアジア選手の挑戦機会を増やして、人材の成長・輩出につながる舞台にすることが狙いです。
――女子のアジア選手権では日本がタイに敗れましたし、「敵に塩を送る」ようなことになりませんか?
大河 多少はあるかもしれません。ただ日本人選手が多くイタリアに行って成長しても、イタリアは別に何とも思っていないのではないでしょうか?競技は違いますが、サッカーも元々は韓国になかなか勝てなかったのが、韓国代表がJリーグに多く来るようになって、日本人選手が慣れて、今では日本は韓国と五分以上になりました。
――確かに代表選手が日本に来て、然るべき人がプレーを見れば「こういう選手」という解像度が上がりますね。
大河 そして新たにアジア枠の7カ国目としてインドを加えます。これには、いくつか背景があります。大阪ブルテオンはSNSのフォロワー数を大幅に伸ばしているのですが、際立って伸びているのがインドだそうです。インドの人がどれだけバレーボールをやっているのかは正直よく分からないですけど、ただ一般的に暑い国はインドアスポーツと相性がいいですよね。間違いなく大きな国、マーケットですから、インドを入れました。
他にもまだ決定はしていませんが、2028-29シーズン以降に向けて議論をしている変更点はあります。SVグロースも稼げるリーグ、注目されるリーグになるために、エンタメ性を高めつつ、独自競技ルールを入れることによって、違うテイストを出す狙いです。
――SVも外国籍枠は今季から3名に増えますが、アジア枠が無制限になると、日本人選手が試合に出られなくなるのでは?と疑問を持つ方がいると思います。
大河 実際やってみないと分からない部分はありますが、SVは男子が2チーム増えました。男子は最終的に16チームくらいまで拡大する方針です。SVグロースに準加盟の申請をしようと目指しているチームも4、5チームあります。チーム数が増えていくことで日本人の活躍する場の絶対数は確保されるはずです。それにアジアの選手が来たからといって、実力的に日本人選手が負け組になるとは思っていません。
――アジア戦略と関係のある部分ですが、今のSVリーグはオーナーに外国資本が入ることを認めているのですが?
大河 外資の規制は作っていません。もちろん株主を変更するときの審査はありますし、地域密着や自治体との関係構築をしっかりすることは前提ですが、将来的に外資がオーナーに入ることはあり得ると思います。日本と比べても元気な国があるし、プロスポーツのオーナーになることの意義を分かっている方は日本以上にいます。日本はそもそも企業の福利厚生型で、攻めるタイプの方は少ないですよね。
インドネシアやタイの富豪がヨーロッパのサッカークラブを保有していた事例はありますけど、同じように日本のバレーボールチームへの投資が始まると、それは面白いかもしれません。
――SVグロースに導入する独自ルールが好評で、うまく運営・運用できたら、それをSVに持ち込むこともあり得ますか?
大河 あり得ると思います。バレーボールの場合、よほど変なことをしない限り、FIVB(国際バレーボール連盟)がそれを認めないことはありません。JVA(日本バレーボール協会)にもその旨をお伝えしてはいます。

――日本国内ではSVリーグに加えて、SVグロースもJ SPORTSで配信されることが決まっています。アジアへの展開はどうですか?
大河 おっしゃるように国内ではSVだけでなく、SVグロースもJ SPORTSで全試合の配信を行います。海外についてはSVがVBTVで全世界配信ですが、ここにSVグロースまではまだついていません。ASEANの選手がたくさん来て、海外における関心が高まって放映されることはもちろん期待しています。YouTubeで無料配信することもできなくはないですね。バレーボールは「輸出型」のエンターテインメントとして有望です。ASEANなら時差はあっても2時間ですから。
――SVグロースは面白いチャレンジをしていますが、とはいえSVに比べると視聴者も多くないはずです。中継が入らない可能性もあったと思いますが、J SPORTSとどういうやり取りをして、全試合中継に漕ぎつけたのですか?
大河 大同生命保険さんがSVグロースのタイトルパートナーに就任してくださり、他にもSVグロースにパートナーがついてくださっています。その資金を何に使うのがいい?となったら、それは配信だろうという判断でした。
――SVグロースのカルチャーについて、大河チェアマンはどうお感じになっていますか?
大河 今まではVリーグだった皆さんがSVグロースと、JVA所属の日本バレーボールリーグ(Vリーグ)に分かれました。SVグロースの14チームは、すぐSVには行けるかどうかは別にして、進化していこうという強い思いを持っています。野心、変わっていこうという意欲は感じますね。
――2026-27シーズンのおさらいですが、SV・SVG間の入れ替えはどうなりますか?
大河 クラブライセンスの交付が前提ですが、2026-27シーズンは女子だけ入れ替えがあります。SVの最下位とSVグロースの最上位が入替戦を行います。男子は16まで増やす予定なので、入れ替えはありません。
女子も本当に入れ替え戦をやった方がいいのかどうか、自動入れ替えの方がいいのではないか?というのは、もう一度議論します。
――最後にSVリーグも含めて2026-27シーズンに向けた抱負をお願いします。
大河 最大のチャレンジはやはり集客です。髙橋藍選手(2026-27シーズンはポーランドでプレー)がSVリーグの開幕とともに日本へ戻ってきた効果は絶大でした。とはいえ彼がいなかったらお客さんが増えなかったのかといえば違うし、私たちが2シーズンでさまざまな積み上げをした自負はあります。選手個人のファンではない「箱推し」のファンも増えてきた手応えも持っています。藍選手がいなくても集客が減らないリーグになれるか――。それは私たちがこの2年間目指してきたことが成功しているかどうかの一つの指標です。それは女子も同様ですね。
もう一つのポイントは、外国籍枠のオンザコートルールが3名に増えることです。私たちはこれにより日常が世界基準に近づくと思って取り入れていますし、その効果を期待しながら私も3シーズン目を迎えます。
取材・構成:大島和人




