[写真]=田中夕子

 1月に開催される春高バレーの予選が全国各地で始まった。すでに出場校が決定する都道府県もある中、11月8日に代表校が決定するのが東京だ。男子では圧倒的な強さを誇る駿台学園は、昨年本大会準決勝で激闘の末に清風(大阪)に敗れた。

 そのリベンジを果たすべく、再び春高の舞台を目指すが、その前哨戦ともいうべき試合が10月13日に行われた。青森で開催された国民スポーツ大会(以下、国スポ)準決勝だった。

 春高やインターハイと異なり、都道府県単位で争う国スポは1校単独ではなく複数校の選手が集まる選抜チームで出場するケースもある。大阪は清風の単独だが、東京は駿台学園の選手が11名の中に明大中野の原田新が加わった12名。選抜チームではあったが、多数を占める駿台学園の選手たちにとって、春高で敗れ、インターハイでは対戦がかなわなかった清風との再戦は、待ち望んだ舞台でもあった。

 特にこの機を求めていたのが、2年生のアウトサイドヒッター竹内祐一郎だ。安田学園中ではエースとして全国大会を制した。竹内だけでなく、小中学生の頃から華々しい戦績を誇る選手が揃う駿台学園でも1年時からレギュラーとして試合に出場し、昨年の春高準決勝でも敗れはしたが“スーパー1年生”として、中学時代も日本一をかけて競ってきた清風の西村海司と共に躍動、要所で得点をたたき出す勝負強さも存分に発揮して見せた。

 そんな竹内にとって、初めての経験とも言うべき悔しさを味わったのが今夏のインターハイだ。真夏の京都、過密日程の大会を順当に勝ち上がり、準決勝に進出。連覇を狙う鎮西(熊本)に対しても第1セットを先取し、第2セットも先行したがエースの一ノ瀬漣を中心にハイセットもさまざまなコースに打ち切る鎮西の前に、突如歯車が狂い出す。これまでの試合ではなかなか見られなかったミスも相次ぎ、竹内も途中交代。2、3セットを奪取されての逆転負けを喫したが、ゲームセットの瞬間をコートに立たず迎えたのは初めてだった。

 試合終了直後から涙が止まらず、両手で顔を覆い、コートを去ってサブコートに戻ってからも両膝を抱えて涙する。コートで見せる強気な姿とは全く違う竹内の姿から、言葉にできないほどの悔しさが伝わってきた。

 あれから2か月、駿台学園ではなく「東京」のユニフォームを着て臨んだ国スポ。高校生にとっては、インターハイと春高を含めた主要三大大会であり、インターハイを制した清風は二冠を狙って臨んだ大会でもある。

 春高の悔しさと、インターハイで味わったまた別の悔しさ。どちらも晴らし、より強くなるために練習を重ねて来た成果を存分に発揮した。特に印象的だったのが、ラリーが続いた状況でハイセットを打ち切る姿だ。

「インターハイで(メンバーから)外されて、めちゃくちゃ悔しかったです。ああいう経験自体が自分には初めてだったので、何が足りないのか、もっと伸ばしていかなきゃいけないことは何かを自分でもう一回考え直した時、攻撃面でもっとチーム引っ張れたらな、って。スパイクにパワーを乗せるためにウェイト(トレーニング)やハイセットを打つ練習は意識的に取り組んできました。ただ打つだけじゃなく、シャットされない打ち方を練習してきていて、意識したのは落とさずに奥に飛ばすこと。その打ち方ができればブロックに当たっても、そのまま失点にはならないし、また(トスを)もらえる。ブロックが揃った状態で打つのは難しいし、苦しいですけど、(準決勝では)我慢ができた。そこは収穫かなと思います」

 3セットマッチの準々決勝を行った後に5セットマッチの準決勝を行う、ありえないダブルヘッダーではあったが、接戦を制し3対0で勝利し決勝進出を果たした。要所でのブロック、スパイクで勝利に貢献した竹内は笑顔だったが、翌日の決勝に向け表情を引き締めた。

「(試合後)みんな結構泣いているから、正直俺びっくりして。『お前らまだ早いだろ』ってめっちゃ言ってたんです(笑)。チームとしては『春高優勝』という目標でやっていますけど、やっぱり国スポも優勝したいので。絶対に負けたくないです」

 竹内は「まだ早い」と一喝したが、涙が溢れたのも無理はない。現在大学2年生の選手たちが春高三連覇、三冠という偉業を達成した姿を1年時に見てきたのが、今の3年生たちだ。

 今年の春高でもベスト4まで勝ち進み、センターコートに立ち続けているのは素晴らしい成果だが、勝つ姿ばかりを見てきた選手たちにとっては「負けた」という記憶が色濃く残る。「苦しかった」と涙を拭いながら明かしたのが、3年生オポジットの畠昊太郎だった。

「春高もインターハイも決勝へ行けなくて、めちゃくちゃ悔しかったんです。僕らの代はずっとベスト4からの壁が破れなくて、いろんなことにチャレンジしたけれどそれもなかなかうまくいかない。だけどそのまま折れたら終わりなので、ベスト4を超えたい、その上に行きたいという気持ちだけ持ち続けて。ハイセットを打つのもあまり得意じゃないんですけど、とにかく必死にやってきた。その結果が少しでもつながったとしたらよかったと思うし、いろんな人に助けられて、悔しさも力になった。チーム全員で戦うことができました」

 決勝は川内商工の選手が大半を占める鹿児島と対戦。2年生の田中洸(川内商工)と畠のサウスポーエース対決を繰り広げた。川内商工もインターハイで敗れた東山に勝利し、準決勝では鎮西に勝利し、波に乗っている。試合を重ねるごとに総合力を増した相手にフルセットの末に敗れたが、その悔しさも次へつながる収穫になった、と竹内は言った。

「目標は春高優勝ですけど、やっぱり負けるのは悔しい。そこで取り切れなかったっていうのが自分たちの現状だと思うけど、課題は明確に見えたと思うので、春高までにやらなきゃいけないこともハッキリしました。個人的には苦しい場面でも『絶対打ち切ってやる』という気持ちで臨んでいましたけど、大事なところでミスを出してしまった場面もあった。そこで決め切れる力もつけたいし、高さがなくても技術では負けたくない。自分の色を出していきたいです」

 春高からインターハイまで、インターハイから国スポまでがあっという間だったように、きっと春高までの日々も一瞬だ。悔しさを力に変えた選手たちが、また次の舞台でどんな姿を見せるのか。楽しみは尽きない。

この記事を書いたのは

田中夕子

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